play8 知恵のサーチ。
「それでは、決勝戦を始めます!」
わああああああっ!
予選だってのに大した活気だこと。
「あ、盗撮連中までいるし」
「ふぁ!?」
「と、盗撮なんかしてないっす!」
名指しされた連中はそそくさとカメラを隠す。
「ふーん……一昨日の撮影会には来てなかったよね」
撮影会、と聞いて目を丸くする。
「撮影会?」
「そう。誰かさんが私達のやーらしい画像をたくさんアップしてくれたみたいだから、それ以上にやーらしい撮影会を開催したのよ」
それを聞いた盗撮連中は驚いた顔をしながらも、舌打ちしながら去っていった。
「……マーシャン」
「わかっておる。後は妾が処理しておこう」
盗撮連中を追うマーシャン。あいつら、相当陰惨な目に遭うだろうけど、知ったことかっての。
「では両者、前へ!」
私とソース子が前に出ると、対戦相手も壇上に上がり、召喚を始める。
「出でよ、我が相棒よ!」
パアアア……
…………ドズズゥン!
「……………………へ?」
突然目の前に現れた巨大な壁……いや、山に呆気にとれるしかなかった。
「あ、あのー、めっさ大きい足しか見えないんですが」
思わず審判に聞いてしまった。
「はい、足です」
「まさか、足が対戦相手?」
今言った通り、目の前にあるのはデッカい足。ただそれだけ。
「はい。決勝戦の相手は『巨足のデータラッチ』です」
デ、データラッチって、明らかにデイタラボッチよね。
「つまり、巨人が相手!?」
「そうなります」
巨人が対戦相手って、どうやって戦えってのよ!?
「では、始めて下さい!」
は、始めてくださいって言われても……。
「デッカい足相手に、どうやって戦えっての?」
ていうか、デイタラボッチさん、ピクリとも動かないし。
「ま、まあ、とりあえず……『鉄クズの流星雨』」
ブォ!
バシバシビシビシバシバシビシビシッ
……うん。ぶっといスネ毛が何本か千切れたくらいで、皮膚には一切ダメージなさそう。
「……どうしろってのよ……」
必殺技がスネ毛数本剃るのが精一杯な相手に、勝てるはずがない。
「…………ソース子」
これはどうやってもムリ。降参した方がいい、とソース子に促そうとした。
そのとき。
「どうだ、参ったか! さっさと負けを認めるんだな!」
突然、対戦相手がそう叫び始めたのだ。
「……?」
何で急に降参を迫ってきたんだろう。確かに今の私にはなす術がないけど、デイタラボッチにはいくつか選択肢があるのだ。
「……一番確実なのは、私に攻撃することなんだけど……」
あれだけの巨体だ。指一本で私を潰せるだろう…………ん?
「あれだけの巨体……?」
そうだ。この戦いは、相手を戦闘不能にするか、降参させるか、場外に落とした方が勝ちなんだ。
「つまり、デイタラボッチは何もできないのか」
私達召喚獣がフェイバリットでしか攻撃できない縛りがある以上、デイタラボッチもフェイバリットでしか攻撃できない。つまり、踏むとか手で潰すとか、巨体を活かした攻撃ができないのだ。
「私が先にフェイバリットで攻撃した以上、次の攻撃はデイタラボッチがしなくちゃならない。だけど、フェイバリットを発動すると足を踏み外す可能性があるとしたら」
デイタラボッチはギリギリ舞台上に立っている。つまり、踏み外せばすぐに場外負け確定なのだ。
「なるほどねえ…………降参なんかするわけないでしょ、バーカ!」
「なっ!?」
この勝負、私が負ける要素がない。
「ほら、さっさと攻撃してきなさいよ。次はそっちのターンでしょ?」
「う、うぐぐ…………防御!」
ざわっ
そうよね、防御しか選択肢はないわよね。
「……とは言っても、私にも決定打といえるフェイバリットがないのよね……」
あれだけ厚い皮膚を貫通するには、一点集中に特化した技が必要になる。普段の私ならどうとでもなるけど、フェイバリット以外は使えない縛りがある以上、フェイバリットで何とかするしかない。
「……スネ毛剃るのが精一杯なフェイバリットで、一体何をしろと……」
それこそ、私自身の魔力が切れるのがオチだ。
「はああ……せめて心臓近くだとか、頭だとか、急所を攻撃できればねえ……」
それが叶わない以上、足で一番皮膚が薄い部分を狙うしか…………ん?
「一番薄い………………あは、あははは、あはははははは! そうだわ、その方法があったじゃないの!」
デイタラボッチの足指まで駆け寄ると、爪と皮膚の間に手を当てる。
「超近接『鉄クズの流星雨』!」
バガガガガガガガッ
ベリッ
大量の鉄クズが爪に食い込み、全生物が痛みトップ10に推すこと間違いなしの深爪を起こす。
「グギャアアアアアアアアアアアアアア!!」
あまりの痛みにデイタラボッチさん、片足を持ち上げ。
バキバキ……バリイイン!!
舞台が崩れ、デイタラボッチさんは場外に投げ出された。
…………ドズゥゥゥゥゥゥン!!
……あーあ……。
「しょ、勝者、鉄クズのサーチ! よって世界一魔術会本戦進出は、鉄クズのサーチに決まりました!」
…………。
……それより……デイタラボッチさんの下敷きになったいろんなモノ、大丈夫?