play7 撮影のサーチ。
「問題外ね。『鉄クズの流星雨』」
バガガガガッ
「グギャアアアアッ!」
「ああ!? オレの相棒があ!」
ボロボロになって倒れた召喚獣を確認し、審判が私に手を上げる。
「勝者、鉄クズのサーチ!」
わああああっ!
私のいるブロックも、すでに準決勝。数少ない人型である私の試合は、だんだんと観に来る人が増えてきていた。
「っ~…………ち、今日もか」
「もう少しなんだけどな~」
「惜しいよな~」
で、舌打ちをして帰っていく。一体何なの?
「あんだけ揺れてるんだからさぁ、少しくらいはあってもいいよな?」
「オレ、この為に魔術式カメラ新調したんだぜ」
「やっぱ大きさが足りないんじゃねえかなー」
…………。
「ちょっと、あんたら。何をしてんのよ」
「あ、鉄クズの!?」
「や、やべえ! 逃げろ!」
え、ちょっと?
「何で逃げるのかなあ?」
「……あの、サーチさん? あの会話で気付かなかった?」
え、何を?
「仕方無いわね……ちょっと待ってて」
そう言ってノートパソコン……いや、魔術式だからマギコンか……を取り出す。
「? あのー?」
「ほら、こんなワードで検索すると」
ワードは……「召喚獣 ポロリ」?
「ほら、これは第二試合、これは前の試合」
た、戦ってる私の画像がアップされてる!? しかも胸の画像ばっか!
「ポ、ポロリって、要はビキニアーマーがズレることを期待して!?」
「まあ、そういう事ね。サーチさんは猫系美少女で、しかもスタイル抜群だから」
「ゆ、許せない……!」
「そうだよね、こんなの最低だよね!」
「胸ばっかじゃなく、何で自慢の括れ画像を貼らないのよ、こいつら!」
「突っ込むとこそこなの!?」
被害者は私だけではなく。
「ああ、そいつらならリーフの試合にも居ましたよ」
「妾の試合にも居ったのう」
リーフとマーシャンも狙われていた。
「とは言っても、私のローブじゃ胸のポロリはあり得ませんけどね」
「妾もじゃな。破れない限りは見えぬの」
「いや、お二人は胸では無く」
貼られていた画像は、ポロリというよりチラリ。
「スカートですね」
「嫌ああああ!」
「けしからん! 大いにけしからん!」
ていうか、ミニスカートで戦うなよ。
「ていうか、リーフは下着も緑?」
「べ、別にいいじゃないですか!」
「わ、靴下も?」
「ファ、ファッションですよ、ファッション!」
このやり取り、某喜劇で見たような。
「ていうか、マーシャンは黒なんだ」
「大人な女性は黒じゃよ、黒」
「あれ、後ろにハートマークが」
「べべべ別にいいじゃろが!」
大人な女性は、下着にハートマークのパッチ貼らねえよ。
「ゆゆゆ許せない! こんな事する奴全員、葉っぱでザクザクにしてやる!」
葉っぱでザクザクって、迫力ないな。
「わ、妾の魔術大火傷を負わせて、回復させて、凍傷を負わせて、回復させて、電撃で痺れさせて、回復させて」
怖っ!
「ていうか、落ち着きなさいよ。相手が誰なのか、まずはそれを確認しなくちゃなんないでしょ」
「「でも、どうやって!!」」
だから、落ち着きなさいっての。
「ここにいるのよ、パソコン……じゃなくてマギコンのプロフェッショナルが」
私が指差した先には。
「ふぇ?」
自分のマギコンを見ながら首を傾げるクラ子がいた。
「おらおら、キリキリ働けぇ!」
「ふぇぇぇぇぇぇ!」
半泣きで高速ブラインドタッチをするクラ子は、正確に犯人を割り出していく。
「ま、まさか召喚主様にこんな特技が……」
何で召喚獣のリーフが気づいてないのよ!?
「あの子の指のタコ、不自然だと思わなかったの!?」
「い、いつもふぇふぇ言ってるイメージしか無くて」
それを聞いたクラ子の手が止まる。
「ふ、ふぇぇぇぇぇぇぇぇ!?」
「あ、聞こえてたみたいね」
「しょ、召喚主様、誤解ですからね! 常日頃からふぇふぇ言ってるだけの、手間かかる駄目駄目召喚主だなんて思ってませんからね!」
「ふぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇっ!!」
はっきり常日ごろから考えてること言ってるじゃん!
「クラ子、ふぇふぇはいいから、早く犯人を突き止めて!」
「ふぇぇぇぇぇぇぇぇぇん!」
「召喚主様、もう陰でふぇ子なんて渾名つけたりしませんから!」
「ふぇ!? ふぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇん!」
ええい、リーフは黙ってなさい!
「早くやりなさいっての!」
「ふぇぇぇぇぇん!」
『ええ? 殺りなさい? 殺っちゃう殺っちゃう♪』
「ふぇぇぇぇぇぇ!? ふえっ」
ばたんっ
『あらあ♪ 勝手に逝っちゃっぶふぉげぇ♪』
「何やってくれとるんじゃ、このクソゆうれえええええええええい!!」
キーボードに突っ伏したまま失神したクラ子は、結局一晩目覚めることはなかった。
「こうなったら、もっと過激なことをして……!」
「わ、妾眠いのじゃが」
朝早くにマーシャンを連れて運営委員会に乗り込んだ私は、ある提案をして、ほぼゴリ押しで了承させたのだった。
それは。
『はい、皆様! 人型召喚獣の撮影会を始めまーす!』
カメラの前でポーズ。無論、私だけじゃなくリーフとマーシャンも。
「な、何でリーフがこんな恥ずかしいポーズを!?」
「何でって、あいつらがアップしてる以上の写真を普通に撮らせちゃえば、目立たなくなっておkでしょ♪」
というわけで、リーフのアレをピラーン♪
「きゃああ!」
マーシャンのアレもピラーン♪
「いや~んなのじゃ」
ついでに私のも……ピラーン♪
私達の画像が過激すぎて、あいつらのが目立たなくなった……ということはなく。
「このチラリズムがいいんだよ!」
需要があったらしく、しつこくしつこく残り続けたのは言う間でもない。
「な、何の為にあんな恥ずかしいポーズを……」