play4 煮焼のサーチ。
「煮るなり焼くなり、マグロ数あり」
「もう要らない~」
ソース子がモノスゴく失礼と言うかもったいないことを言ってるけど、正直私も気持ちはわからなくはない。
「まあ……朝から晩までおかずがマグロじゃ、そりゃ飽きるわよね」
マグロの刺身は当たり前、あっつあつのご飯にマグロの叩きを乗せての鉄火丼も定番、そうなってくると、ホントに煮るなり焼くなりになってくるのだが。
「あのなあ、そんなのやり尽くしてるに決まってるじゃねえか」
「一週間ちょっとで飽きるなよ。俺達は年単位で毎日マグロだぞ」
横から漁師さんのつっこみいただきました。はい、すみませんした。
「ていうか、みなさんはどうしてるんですか?」
「マグロの食べ方か? まあ…………刺身か鉄火丼か」
「煮ても焼いても食べてるな」
結局そうなっちゃうのよね。
「ていうか、揚げたりはしてないの?」
それを聞いたみなさん、首をコテンと倒す。つまり、やったことないのね。
「なら、次からは揚げ物も追加しますか」
その日の夕ご飯。
「うお、うめえ! うめえ!」
「サックサクのホクホクだあ!」
大好評。あっという間に売り切れ御礼となりました。
「サーチさん、これいいよ。定番に加えてもいいよ」
そう? ま、これでレパートリーも増えたわ。
「ていうか、他にも考えないと、メニューに苦労するわね」
もうすぐ魔術会会場に
は着くんだけど、それでもまだ一週間はかかる。それまで刺身・鉄火丼・煮るなり焼くなり揚げるなりで乗り切れるか、よね。
「ま、漁師さんは食べ慣れてるってんだから、文句言わずに食べてくれそうだけど……」
「マグロもう嫌マグロ要らないマグロ食べたくない」
「……問題は我が召喚主よね……」
飽きる気持ちはわかる。わかるけど、作る方のことも考えてほしい。
「う~ん…………あ、そうだ」
確か、昆布は大量にあったはず。
「うん、あったあった」
よっし、これだけ立派な昆布なら、美味いのが作れるな。
「ていうか、昆布と昆布でマグロをブロックごとサンドイッチして、一晩寝かせるだけなんだけどね」
マグロの昆布〆、一度お試しあれ。
「う、うめえええええええええ!」
「何だよこれ、箸が止まらねえ!」
意外にも漁師さん達も初めてだったらしく、かなり好評だった。
「で、巻いてあった昆布を細く切って、軽く炒めて……」
軽く味つけすれば、お手軽にもう一品。これはこれでイケるのだ♪
「美味い美味い」
「スゲえなあ」
「サーチさんが考えたの、これ?」
いえ。某山ご飯マンガのレシピを参考にしました。
「ていうか、まだ日にちはあるぞ……」
次は何にしよう。
「あ、マグロの漬けはまだだったか」
早速タレを調合して、マグロを漬けて一時間ほど放置。
「ま、一晩寝かせてもいいんだけど、今日は簡単に」
一晩の場合は漬け込みすぎちゃうことがあるので、結構難しい。だけど一時間と一晩だと、味の染み込み具合が違ってくるので、それはそれでありだ。
ていうか、一時間経過したので調理開始。
え? 一時間漬けてあったのがすでに準備してあったのかって? 料理番組じゃないんだから。
「調理って言っても、切ってご飯に乗っけて、タレかけるだけ」
生卵を乗っけて、海苔をパラパラっと、ワサビはお好みでっと。
「はい、マグロの漬け丼完成!」
「「「うおおお、美味そおおおおっ!」」」
案の定、大好評。いやはや、お手軽に喜んでもらえて楽でいいわ。
「いやあ、次のご飯も楽しみですなあ」
「散々マグロを食べてる俺らでも、驚くばっかだからな」
あかん。だんだんとハードルがあがってる。
「次は……鍋にしてみました」
「「「あ~……」」」
あれ。これは定番だったか?
「まあ、たまにやるわな」
「まあ、無難に美味いわな」
「まあ、そうそうレパートリーは増えないわな」
いかにも期待してました~……という空気を出しながら、それでも完食してくれる。
「ごちそうさまでした~……うん、腹膨れた」
「うん、また定番の循環かな」
「うん、また定番の循環だな」
うーん、他に何かあっただろうか。
「ネギはたくさんあったよね」
薬味として使うことが多いネギは、かなりの量が常備されてる。
「なら、次は……」
次の日の夕ご飯。
「え、また鍋?」
「いくら定番でも、連チャンで鍋は……」
「鍋は鍋でも、今回はネギマ鍋です」
「「「……ネギマ?」」」
串のを思い浮かべたヤツ、あれはマグロは絡まないから。
「普通にマグロとネギの鍋なんだけど、まあ食べてみてよ」
「あ、ああ……パク」
「あっつ、ウマ、あっつ!」
「ああ、それとネギを食べるときは、食べ方を気をつけないと」
「がぶっ、ぶふあああああ!?」
「熱い芯が飛び出てきて、喉を火傷するって……遅かったか」
「ぐふぁぁぁぁ!?」
「あちあちあちぃぃぃ!」
ていうか、あちこちでやってんな!
「熱い熱い熱いぃぃぃぃ!!」
ソース子もかよ!
『アチアチアチ♪ 熱い熱い熱いいい♪』
ルック船長もかよ! ていうか、幽霊が食べれるのかよ!
「あ、熱……口ん中に鉄砲ぶち込まれたかと思ったぜ」
死ぬよ、それ。
「いや、でもよ、こんなシンプルな料理がこんなに美味いとは思わなかったよ」
喜んでもらえたなら幸いです。
「つーかよ、この船の専属料理人にならねえか?」
ずっとマグロ料理で頭を捻るなんて嫌だよっ。
「サーチさん、これだけのレシピをどこで?」
料理で親子ゲンカする某グルメマンガからですが、何か?