表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
1812/1883

play2 憑き物のサーチ。

「おらあ、ヒモを引けえ!」

「は、はいい!」

「おらあ、グズグズすんなあ!」

「ひ、ひええ!」


「大変ねえ~、召喚主様~」

『本当にねぇ♪』


 ソース子の悲鳴が響く中、私と元船長は優雅にマグロ漁船生活を満喫していた。


「な、何で私ばっか! 直接原因の召喚獣が何もしないなんておかしい!」


「だって~、私は幽霊船長に取り憑かれちゃったし~」

『取り憑いちゃったし~♪』


「幽霊に取り憑かれようが取り憑かれてなかろうが、労働するしないとは関係無い!」


 ま、そりゃそうだわな。


「こうなったら、絶対命令権発動!」


 あ、こら、ダメだって。


「私の代わりに、この船で働い」

「幽霊憑きなんて御免だな。ほら、さっさと腕を動かせ!」

「てって、ひええええぇぇぇぇ!?」


 マグロ漁船の船長が介入してくれたおかげで、私は強制労働は免れた。


「何で! 何でええ!?」

「馬鹿野郎! 自分の召喚獣の不始末は、召喚主が拭うのが当たり前なんだよ!」


 そう力説するマグロ漁船長。さっき聞いたんだけど、色んな理由で召喚術士がマグロ漁船に乗るそうだが、主なのが召喚獣の壊したモノの弁償なんだとか。


「サーチさん! 私に対して申し訳無いとは思わないの!?」


「それは~……ほんのちょびっとくらいは」


「ほんのちょびっとなの!?」


「まあ、幽霊船長に関しては、申し訳ない気持ちでいっぱいだけど」

『船を返して下さいな♪ 服も返して下さいな♪』


「だったら何で!」

「いや、幽霊船退治しろって絶対命令したの、あんただし」

「うぐっ……で、でも、船を沈めろとは言ってない!」


 う。そ、それはそうなんだけれども。


「馬鹿野郎!」

 ガツン!

「いったああああああい!」


 マグロ漁船長に殴られ、涙目のソース子。


「きゅ、急に乙女を殴るなんて反対! パワハラ反対!」

「うっせえわ! お前、幽霊船長に取り憑かれてるヤツを、船員として使える訳がねえだろ!」


 へ?


「幽霊船沈めちまったってだけで、どんな災いが降りかかるかってのに、幽霊船長のお気に入りをコキ使うなんざ…………ああああああ! 恐ろしくってできる訳がねえええぇぇぇぇ!」


 そんなに怖いの、この幽霊船長。


「あんたさ、マグロ漁船に対して何かしたの?」

『何もしてませんよ♪ 私達もマグロ穫ってるだけで♪』


 ていうか、あの幽霊船もマグロ漁船だったのかよ!


『だけど、そこの召喚主さんからの熱い熱いリクエストでぇ♪ 今回は客船として運航してたんです♪』


「ていうか、真っ当に働いてたんじゃん!」


『その通りですよ♪』


「そんな幽霊船の乗組員に、私は襲いかかるよう命令されたってわけ!?」


『その通りですよ♪』


 私はビシッとソース子を指差し。


「二十四時間働け」

「そんなあああああああ!?」


 ソース子の微かな希望は、ここで打ち砕かれた。



「よおおおし、休憩! 飯だ飯!」

「「「おう!」」」

「お、おぅぅ……」

 ドサァ


 それからホントに二十四時間働き続けたソース子は、食堂に戻ってくるなり倒れ込んだ。


「お疲れ様」

『お疲れサマー♪』


「あ、あんた達、覚えてろよ……」


 恨みつらみムンムンなソース子の前に、ご飯をドンッと置く。


「え?」

「私だってサボってたわけじゃないわ。船に乗ってる間、厨房を任されたのよ」


 今日は穫れたてのマグロだけを使った海鮮丼と、マグロの大トロの刺身よ。


「お、おぅお、マグロ、マグロォ!?」


「船長がね、商品になる箇所以外は好きに使っていいって言ってたから、切れっぱしを貰って作ったのよ」


 そう言って、同じモノを船員さん達の前に並べていく。


「「「うほほーい!」」」


 他の船員さんのテンションも爆上がり。流石はマグロだ。


「さあさあ、お代わりもたっぷりあるから、ガンガン食べちゃって」


「うおっしゃああああ! 食い尽くすぞおおおおおお!」

「ガツガツガツガツ、お代わり!」

「モグモグモグモグ、お代わり!」

「ハムハムハムハム、お代わり!」


「はいはいはい、順番だからね、順番…………ていうか召喚主、あんたがキャラ設定無視して大食いしてんのかよ」

「ハムハムハムハム……だったら、あんたも二十四時間働いてみなさいっての!」


 いえ、お断り致します。


「ガツガツガツガツ、お代わり! むっふー!」

「バクバクバクバク、お代わり! ふんがー!」


 ていうか、お代わりにくるヤツ全員、くの字になってるような?


『ははああんん……成程成程、それは皆さん、くの字になる訳だ♪』


 へ?


「幽霊船長、何かわかったの?」

『と言うより、サーチは自覚が無さすぎですねぇ♪』


 自覚? 何が?


『サーチ、まずは今の姿を姿見で見てみよう♪』


 姿見で? ていうか、ちょうど近くにガラスがあるから、全身を映して………………あ。


「なるほど、そういうことか」


 私の今の姿は、ビキニアーマーの上にエプロン。つまり、見る角度によっては、男性の永遠の憧れになっちゃうわけで。


「あ~……マジですんませんした」

「「「いや、グッジョブっす!」」」


 その姿を見ながら、幽霊船長はケタケタと笑っているのだった。



 夜。幽霊船長に見張り役として駆り出された私は、夜風に吹かれながら星空を見上げていた。


『サーチ、サボるでないぞ♪』


「サボってないわよ。ほら、そこ」


 指差した先にはモンスターが山のように積んである。


『おっほー♪ 強いねえ♪』


「ていうかさ、いつから私を呼び捨てにしてんのよ」

『気にしない気にしない♪』


 まあ、いいけどね。


『それより何より気に入ったわ♪』


 は?


『これからよろしくね、憑き主のサーチさん♪』


 はああ?



 こうして。

 召喚獣が幽霊に取り憑かれる、という珍事が発生した。


『あ、私はルック船長って言うんだ♪ 重ねてよろしく♪』


 ルック船長って……どこかで聞いたような。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ