表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
1810/1883

EXTRA 仰天のコーミ。

「……ふう。やっと世界一魔術会だわ」


 仕事の合間やプライベートの時間を利用して、どうにかストーリーモードのエピソード1を終わらせた。


「あ、やってるね。どうよ、ドラゴンズ・サーチ」


 シャワーを浴びてきたナタリーンが背後からスマホを覗き込む。


「とりあえずエピソード1はようやく終わったわ」


「仲間はできた?」


「うん。クラ子っていう内気な女の子」


「え、クラ子仲間にしたの? なら召喚獣はまだ星一のまま?」


「え?」


 ナタリーンはゲームの解説をしながら、頭に巻いていたタオルを解いて洗面所に向かう。


「エピソード1が終わる前に召喚獣の交換をすると、学校の最上級生が仲間になるんだ。それが滅茶苦茶頼りになるのよ」


「それって、まさかアンチテーゼさん?」


「ブッ! ア、アンチテーゼさんって……ゲームのキャラクターにさん付けは止めなよ」


 だってさ、結構愛着がでてきたし。


「で、アンチテーゼじゃないの?」


「いやいや、それは無いよ。だってさ、アンチテーゼはエピソード1のラスボスだよ?」


 え?


「アンチテーゼが選考会決勝()に繰り出してくる星五のアンチドラゴンを倒すと、アンチテーゼの取り巻きの一人が仲間になって、エピソード1がクリアになるんだ」


「取り巻き? 付き添いAとかBとかって居たけど、そのどっちか?」


「その二人はスライムを使ってたでしょ? 単なる殺られ役だよ」


「え? なら、これってどういう事?」


「どうかしたの?」


「……そのラスボスも仲間になったんだけど……」


「はああ!?」


 髪の毛をタオルで拭いていたナタリーンが、急いで洗面所から戻ってくる。


「ちょ、見せてよ!」

「あ、駄目よ。スマホが濡れちゃうじゃない」

「大丈夫だから! 見せて見せて!」


 ひったくる勢いで、私のスマホを手にする。


「まだゲーム中だって! ちょっと!」

「そ、そんな、エピソード1でアンチテーゼを仲間にできるだなんて…………どうやったの!?」

「へ? 何が?」

「どうやったら仲間にできたの!?」


 ど、どうやったらって言われても……。


「普通にプレイしてただけよ?」

「だから、普通じゃないの!」


 は?


「ボクが知る限り、アンチテーゼをエピソード1で仲間にできた人は誰も居ないの!」


「ど、どういう事よ?」


「ボクが知りたいよ! どうやってプレイしたんだよ!?」


「ど、どうやってって、最初に……」


 私が今までプレイしてきた内容を話す。


「で、ここでハヤブサを倒して」

「ちょっと待って。ハヤブサを倒した?」

「うん。ハヤブサを倒したら、ここで」

「待って待って待って! 何で勝っちゃうんだよ!」


 え?


「そこはストーリー上、必ず負けるイベントなんだよ!?」


 はい?


「で、頼りない主人公を心配したハヤブサ使いが仲間になって、エピソード終了間際でハヤブサ使いの兄が仲間になるんだ。その兄が、アンチテーゼの取り巻きなんだよ」


 はあああ?


「そ、その兄にも勝っちゃったんだけど?」


「何だってえええええっ!?」


「あ、そう言えば……それよりナタリーン、そのアンチテーゼの召喚獣を見てよ!」


「り、理解できない……ストーリーをそこまで無視して進むストーリーがあるだなんて……」

「これを見てって。ちょっと、ナタリーン?」

「うーん、何が何だかチンプンカンプン……」

「ちょっとナタリーン!?」


 余程予想外な事が起きてるみたいで、ナタリーンは混乱しているみたいだ。


「はああ……仕方無い。母さん秘伝の、えい」

 きゅっ

「はあああああん! な、何すんだよ!」


 やれやれ、やっと戻ってきたわ。


「だから、アンチテーゼの召喚獣を見てって」


「な、何なんだよ…………………………へ?」


「わかった? これ、絶対に変だよね?」


「そ、そんな星六、見た事無い……いや、居る訳無い……」


 そう。アンチテーゼさんの召喚獣は、何故か「森の女王サーシャ・マーシャ」となっているのだ。間違い無くあのマーシャンさんだ。


「あり得ない! あり得ないったらあり得ない!」


「ナタリーン、落ち着いて、どうどう」


「ま、まさかとは思うけど、クラ子の召喚獣も普通と違ったりしないよね!?」


「ごめん、普通は何なの?」


「炎天のフレアドラゴンだよ!」


「え……………………ち、違う。深緑のリーフっていう、人型の魔術士系」


「ひ、人型!? しかも聞いた事が無い召喚獣!?」


 やっぱりこれも普通じゃないのね。


「って事は、私の召喚獣ってやっぱり母さん絡みみたいね」


「ああ、そう言えばそうだよ! 鉄クズのサーチ、ネットでも話題になってたよ!」


 へ? ネットで?


「他のプレイヤーと対戦してるんでしょ? 星一なのに滅茶苦茶強いって上がってた」


 はあ?


「対戦なんてできるの?」

「…………へ?」



 ナタリーンが私の対戦記録を調べてくれた。


「……十八勝全勝……」

「しかも対戦時間、私が仕事してる間だよね……」


 今の発掘現場は遠いから、家に戻る暇も無い。


「つまり、私以外の誰かが操作してる……?」


「コーミ、コンピュータに侵入された形跡は?」


「……無い。セキュリティソフトも普通に動いてるし」


「うーん……最新だよね、そのセキュリティソフト」


 当然。


「なら……まさかだけどさ……」

「うん、私も同じ事を考えたと思う」


 ひと息おいて、二人同時に。


「「このキャラクターが勝手に動いてる」」


 って、やっぱり同じ事考えてたんだ。


「やっぱりあり得ると思う?」

「だって、母さんだし」

「だよね、サーチならストーリーなんて一切無視するだろうし」

「だよね、母さんなら星の差関係無しでボコるだろうし」


 母さん、今度は何に巻き込まれたのよ。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ