第十四話 ていうか、私とリジーの対戦!?
バトルロイヤルを勝ち残った八人の中に、当然私達は入っている。ぶい。
私達以外は全員貴族だけど、流石にここまで勝ち残ってるだけあって実力者ばかりだ……あくまでそれなりだけど。
「サーチと一緒のグループだった、あの髪が白くなった人は?」
「……ああ、あの貴族の子息ね。勝ち進んだけど結局棄権したそうよ」
ちょっと脅かしすぎたかな。
「ま、よかったじゃねえか。これで楽勝じゃねえか? あとは貴族ばっかだろ?」
「……そうだと思う?」
「……冒険者はもういないんだろ? 貴族相手なら手強いのは……」
「………」
「?! ま、まさか、〝刃先〟が残ってるのか!」
「……もう敗退したとは思えないしね……私はいると思う」
「……〝刃先〟が貴族だって言うのか? でも闇ギルドにいたんだろ?」
そう。〝刃先〟は闇ギルドの酒場で調理を担当していた。だから闇ギルドと敵対しているはずの、貴族であるはずがない。
「……あれが本当の〝刃先〟なら……だけど」
「じゃあ闇ギルドの酒場にいたヤツは、偽者だと?」
「……わからない……」
あの身のこなし……間違いなくアサシンのモノだった。
「でも……偽者だと辻褄があうのよねえ……」
しばらく沈黙が辺りを包んだ。
「とりあえず……警戒を続けるしかないと思う」
それしかないか。
リジーのその一言に全員頷いて、そのまま解散となった。
私達は何も学んでいなかった。
というより、〝刃先〟に気をとられすぎていたのだろう。私達は、もっと貴族に注意を向けるべきだったんだ。
「……うあ」
こうきたか。
いや、トーナメントの最中にバトルロイヤルなんて意味不明なモノをぶっ込んでくる連中だ。こうなる可能性も十分にあるんだ……ということを考えなかった私達も悪い。
トーナメント表には……。
『第二試合 サーチVSリジー』
と、書かれていた。
「……どうする? 私としてはリジーにわざと負けたいんだけど」
「え? 何でですか?」
「私は元々優勝することにこだわりがあったわけじゃない。なら優勝したがってるリジーが勝ち上がってくれたほうが便利」
「便利って……サーチは何を企んでるんですか?」
「えーだってー試合に出るのもー超めんどくさいしーいでえ!」
「マジメにやれっ!」
わかったわよ……。
「私が負ければ、私はフリーで動ける。リジーは優勝したいっていう目的が達成できる。一番ベストじゃない」
「サーチ姉……私、別に優勝したいわけじゃない」
「ここで負けるより優勝したほうが魔王様の印象が良くなって、くれる呪われアイテムのレア度があがるかも」
「サーチ姉負けて負けてすぐ負けて」
よし決まり。
「じゃあ念のために負ける段取りをしとこ」
三人揃って「はあ?」って顔をしてる。
「「「負ける段取りって……何をするの?」」」
「な、何をするって……訓練よ訓練」
「「「負ける訓練って……必要?」」」
「あ、あのね! こういうことは、念入りに準備しないとダメなのよ!」
「……ふーん」
「まあ言われてみれば……」
「そういうものなのか」
そういうものなの!
で、一度試してみることになった。
「うりゃあ!」
「たあ!」
うん、いい感じに斬り合ってる。
「たあーっ!」
「いよっと!」
足元を斬りつけてきたリジーの一撃をジャンプで避けて!
「隙ありぃ!」
ごいんっ!
「あぎゃっ!」
私のかかと落としが見事にリジーの頭に落ち。
ばたっ
「よし、びくとりぃぃぃんきゃあ!」
「お前が勝ってどうする!!」
あ。目的忘れてた。
次のアクション。
「えいっ」
あ、かすった! 今だ!
「や、やられた〜……」
フラフラフラ……パタッ
「わざとらし過ぎる!!」
う、やっぱし?
更に次のアクション。
「えいっ」
よっと。
「てりゃ」
はっと。
「えいっやあっとおっ! だだだだだだだー!!!」
ほいほいひょいっ。
「はあはあはあ……もうダメ〜」
ばたっ
「全部避けてどうすんだよ!」
つ、つい……。
更に更に次のアクション。
「……」
「……」
じりじり……
「……」
(うまくやられたフリをするには……タイミングを合わせないと……)
「……」
じりじりっ
「……」
「……」
じりじりっ
すぱあん! すぱあん!
「いたっ!」「はみゃ!」
「戦えよっ!!」
うう……難しい。
もうそろそろ、ウンザリ気味のアクション。
「たあっ!」
「うらあっ!」
ギン! ギギン!
「えい!」
どむっ!
(くふっ! ダメージは少ないけど……いい感じのヒット!)
「うぐ……」
ばたっ
「…カアアアアアット!! おーけー! カンペキだ!」
やったあああ!
「サーチ姉ぇ! やったよ、やった!」
「うん、うん! よかったよかった!」
「あの〜……」
「ん? 何よエイミア。感動の場面に水指さないでよ」
「……そこまで感動するようなものじゃいひゃい!」
「なんですって!」
「いひゃい! いひゃい! いひゃい!」
「エイミア姉ひどいっ!」
「いひゃい! いひゃい! いひゃみょーーーーーんんん!!」
リジーがエイミアの頬っぺたを限界まで引っ張る。
「思い知ったか! エイミア!」
「正義は勝つ!」
「びええええっ! もうすぐ試合だって言いにきただけなのにいいいいっ!」
「「……え」」
「「はあはあはあ……」」
ま、間に合った。
『……始まる前からグロッキーのようですが、大丈夫でしょうか……』
「はあはあ……だ、大丈夫よ!」
「はあはあ……ち、超レア呪われアイテムぅ!!」
『……一応大丈夫そうですので始めてください』
いつもならノリノリの司会者も投げ遣りだ。
「いくわよリジー! はあああっ!」
「う、うりゃああ……」
ぶんっ
「……ねえ、リジー。届いてないわよ」
「はあはあ……だって……訓練のやり過ぎで……疲れちゃって」
……どないせえって言うのよ……。
どう考えてもグダグダになるのは当然で……私でも納得せざるを得ないブーイングの嵐の中……私は耐えきれなくなり。
「……リジー、ごめんなさいっ!」
どごめきごきっ!
「んげほっ! がくっ」
『あ〜……やっとグダグダなどうでもいい試合が終わりました……サーチ選手がそこまでしなくても……と思えるくらいの止めを刺して、リジー選手敗退です』
……あとで。
「サーチ姉! ひどい、ひどすぎるっ!」
……と散々絡まれて……≪逆撃の刃≫を強奪されました……。
今度はエイミアにがんばってもらって、私に勝ってもらおう……。
「嫌です」
ですよね〜。