play33 願望のサーチ。
「ていうか、マーシャンが星六になった理由は?」
「理由? それは妾が強いからじゃ」
「あーはいはい。で、ホントの理由は?」
「いや、だからの」
「ホントの理由は?」
「わ、妾が強いと認めぬのか!?」
「あのね、マーシャンが強いってんなら、私が星一のはずがないじゃない」
「何? サーチが星一じゃと?」
私は自分のステータスを開き、マーシャンに見せる。
「な、何と。確かに星一じゃの」
「でしょう? だから聞いてるのよ」
「ふむぅ……」
腕を組んで考え込むマーシャン。
「…………な、何と!? 三桁かえ!?」
は? 何が?
「しかし、好みは普通じゃの」
「一体何を言ってんのよ?」
「其方はイメージ的に自らリードしそうじゃがの」
「はああ?」
「意外と下で普通にヤられおぐぅふぉ!?」
人のプライバシーを勝手に閲覧するな! ていうかこのステータス、何でR指定な欄があるのよ!?
「な、ならば妾のも見てみるか?」
「マーシャンの? 別にどうでもいいし」
「そう言わずに見てみるが良いわ」
「いや、いいって」
「見るのじゃ」
「何で見なきゃなんないのよ」
「見るのじゃっ」
「だから、見る必要ないっての」
「見るのじゃああっ! ほれほれほれ、妾は四桁じゃぞ、四桁!」
……確かに四桁だけど、それがどうかしたの?
「どうじゃ、凄いじゃろっ」
「……そこは張り合うとこじゃないと思うけど……はいはい、スゴいスゴい」
「むふーぅ」
満面の笑みでドヤ顔。ま、別にいいんだけどね。
「それより、質問の続き」
「む? ああ、サーチが星一の理由じゃな? ハッキリ言って皆目見当がつかん」
そっか、マーシャンでもわかんないのか。
「大体星一を見るのも久しい」
「え?」
「どんなに弱い召喚獣であろうと、星二までがせいぜいじゃ。星一なぞ、妾が知っているだけでも三例だけじゃな」
星一が、たったの三例?
「なら私で」
「四例目じゃ」
……どういうことなの?
「って、それはまあいいわ。至急の用事は他にあるし」
「至急の用事とな?」
「ええ。マーシャンさ、元の世界への帰り方って知ってる?」
「元の世界へ、とな? 負けて死ねば必然的に戻るじゃろ」
「あーいや、それがね……」
リーフから説明されたことを、掻い摘まんで繰り返す。
「……ふむ……それは確かにあり得るのぅ」
「ていうか、マーシャンは精霊力があるの?」
「うむ。何かと精霊とは繋がりがあるのでな」
ま、ハイエルフ自体が精霊に近い種族だったらしいし。
「で、死ぬ以外に帰る方法は?」
「ふぅむ…………星七に到達する……くらいじゃな」
やっぱりそれしかないのか。
「でさ、世界一魔術会の優勝賞品を使えば、帰れる可能性があるって聞いたんだけど」
「世界一魔術会の優勝賞品? あんなの唯の鋳物の置物じゃぞ?」
い、鋳物の置物!?
「マジなの!?」
「うむ。妾が作ったんじゃから間違い無い」
校長せんせええええええええ! 話が違うじゃないのよおおおおおお!
「じゃが、強ち間違ってはおらぬの」
え?
「その置物を妾に示せば、一つだけ相談に乗ってやる事になっておっての。事と次第によっては、協力してやらなくもない」
「……つまり、願いが叶う可能性も」
「まあ、大概は妾が叶えてやったかの」
それが校長先生の誤解の理由か。
「はあああ…………やっぱり星七にならなくちゃならないのかぁ……先が長いなぁ……」
「ふむ。ならばサーチよ、其方も魔術会に出るがよい。もしも優勝したならば、妾が直々に星七へ推薦してやっても良いぞ?」
へ?
「マ、マジで?」
「うむ。星一が並み居る強豪を打ち破り、世界一魔術会で優勝する。これ以上に星七へ推薦する上での理由は無いじゃろ」
「ていうか、マーシャンの推薦で確実に星七になれるの?」
「それは断言できぬ。じゃが運営委員会も妾の意見を無視する事はできぬじゃろな」
…………よし。それにかけてみるか。
「ならマーシャン、私は優勝するためにあらゆる手を尽くすわ。だから」
「うむ、その後の事は任せるが良い」
よっしゃああああ! これで帰るメドが立ったわ!
「ていうか、それに先立って頼みがあるんだけどさ」
「うむ?」
「明日の選考会なんだけど……」
「じ、辞退!?」
学校代表選考会、決勝戦。召喚されたマーシャンの一言が、会場をざわつかせた。
「な、何故に辞退を?」
「うむ、妾が何も言っていなかったのが悪かったのじゃが……既に大会に招待されておっての」
「……はい?」
「妾はもう魔術会出場が決まっておる。じゃからここで戦って勝ち、学校代表の座を奪うのは忍びない、と言っておるのじゃ」
「そ、それは…………校長!」
校長先生に話が振られるものの、もう話は決まったようなもの。
「わ、私の権限の範疇を超えています! 運営委員会に聞いて下さい!」
「で、妾の意見を運営委員会が聞かぬ訳が無い。つまり決まりじゃな」
「で、では、今回の学校代表は……」
「うむ、倉庫三号とその召喚獣・深緑のリーフで決まりじゃな」
ザワッ
観客からどよめきが、特に上級生の席からは非難めいた声が聞こえる。
「……何じゃ、妾の意見に物申すか?」
マーシャンの一言で、どよめきがピタッと止まる。
「更に言えば、妾の召喚主はアンチテーゼ・フォン・アドレナリンであるぞ? 最上級生の筆頭に楯突くか?」
そのアンチテーゼさん、マーシャンのカリスマのせいで背景と化してます。
「……異論は無いようじゃな。では、代表を勝ち取った倉庫三号と深緑のリーフに拍手じゃ」
パチパチ…………パチパチパチパチ
マーシャンが求めた拍手は、結局最後までまばらだった。




