play30 準決のサーチ。
「あの噛ませ犬、ついに準決か……!」
「ああ。もしかしたら、もしかするぜ」
四天王の一角を崩し、ついに周りの見る目も変わってきたようだ。
「あのスライムを倒す方法に、あんなのがあるなんて」
「そうそう。木属性の特性を応用して、フェイバリットも使わずに勝っちゃうんだもんな」
んっふっふ、私の頭脳に敵う者なし。
え? その作戦を考えたのはリーフ本人だって? わ、わかってるわよ。ちょっと言ってみたかっただけよ。
「だけどよ、次の準決勝で当たるのって……」
「ああ。四天王だよな」
また四天王なのかよ。
「えっと、確かBさんだよな」
「ああ、Bさんだ」
Bさんって、付き添いBなの、今度は!?
「またスライムだったか」
「今度は火属性だよな」
「火属性となると……木属性とは相性は最悪だな」
その通り。木属性最大の弱点はズバリ、火属性なのだ。
「でもさ、あんな意外な作戦考えてくるような奴だ。何かしら対抗策を考えてるのかもな」
そう言いながら去っていく男子生徒の背中を見ながら、私はため息を吐くしかなかった。
「どうしよっか」
「どうしようね」
寮の共同浴場に浸かりながら、ソース子といろいろ考えてみるが。
「……何も浮かばない」
「……私も」
うーん……どうしたものなのやら。
「ていうか、肝心の二人は?」
「やっぱソーコを励ましてるんじゃない?」
そう。次の試合の対戦相手がわかってから、ソーコは再びふぇふぇ地獄にハマってしまったのだ。で、部屋から出てこなくなったのを、リーフが何とかして連れ出そうとしている状態だ。
「で、ここに連れてくるはずなんでしょ?」
「まあ……いつ来る事やら」
そんなことを言ってると。
ガラッ
「ふぇぇぇぇぇぇぇぇん!」
「召喚主様、いい加減に観念して下さい」
リーフ、ようやく連行成功したか……って。
「あんた、何をしてんのよ」
「何をしてるって、お風呂に来たんですけど?」
「それは見たらわかるわよ。私が聞いてるのは、右手にくっついてるヤツよ」
リーフの右手からはツタが伸び、何か……ふぇふぇ言ってるからたぶんソーコ……をグルグル巻きにしているのだ。ていうか、今までのパターンからだいたいの予想はできるが。
「召喚主をムリヤリ引き摺ってきたんだ?」
「む、無理矢理って……サーチお姉様が連れて来いって言ったんじゃないですか!」
「あー、そうだったわね……ていうか、召喚主様より私の言うこと聞くんだ」
「当たり前です。サーチお姉様は何よりも優先事項ですから」
っ!?
「あれ。サーチさん、顔赤いよ」
「ちょ、ちょっと逆上せちゃっただけよ」
「へえ~……逆上せたねえ……へえへえへえ~」
「な、何よ」
「べっつにぃ~。経験豊富だって割に、こういうシチュエーションには弱いんだな~と思って」
……っ。
きゅっ
「はあああああん! い、いきなり何すんのよ!」
はいはい、あんたは黙ってなさい。
きゅっ きゅっ
「はあああああん! はあああああん……うきゃう」
ブクブクブク……
「よしよし、雑音は沈んだわね……ほら、リーフ。こっちに来なさいよ」
「あの……いいんですか?」
「ああ、ソース子のこと? 大丈夫大丈夫、死にそうになったら○首摘まめば復活するから」
それを聞いたリーフは、お風呂に入るなり私の近くに来て。
きゅっ
「はあああああん! な、何なのよ、いきなり!?」
「成程……これが普通の反応なのですね」
はい?
「召喚主様、今解放して差し上げます」
お風呂の中で解放されたソーコは、やっぱり泣いていて。
「ふぇぇぇぇぇぇぇぇん!」
「召喚主様、とりあえず泣き止んで下さい」
「ふぇ、ふぇ、ふぇぇぇぇぇぇん!」
泣き止まないソーコを見てため息を吐いたリーフは。
「召喚主様、失礼します」
きゅっ
「ふぇああああああああああん!」
効果てき免。一発で泣き止んだ。
「ふぇぇ、や、止めて、それはぁぁ……」
「わかりました。その代わり、もうふぇふぇ泣くのは無しですからね?」
「ふぇ!? わ、わかりましたよぅ……」
そんなソーコを見て、ニッコリ微笑むリーフ。うーん、これは立場が逆転しつつあるかな。
「で、サーチお姉様。召喚主様を連れてこさせた理由は何ですか?」
「あー、うん。次の対戦について、作戦会議をしようと思って」
「作戦会議ですか。わかりました」
「ふぇ? 作戦会議は会議室でやるものでは無いのかなぁ?」
「召喚主様、そこは突っ込んではいけません」
いいんだよっ。会議室と書いてお風呂と読むのよ。
「ああ、つまりはサーチさんの個人的趣味ではあああああん!」
いつの間に復活したか知んないけど、ソース子は黙ってなさい。
「で、リーフには何か考えがあるの?」
「考えですか…………正直言って、ありません」
「お手上げ?」
「はい。今までに火属性の相手と戦った事は何度かありますので、ある程度の対応策はあるんです。が、相手が火属性のスライムとなりますと……」
属性スライムは最も精霊に近い存在だ、ということはリーフから聞いている。
「ていうか、そこまで属性に片寄ってるんなら、弱点属性にはとことん弱いってことよね?」
「あ、はい、そうなりますね」
「だったら水で攻めればいいんじゃない?」
「……どうやって水で攻めろと?」
「えっと、ほら、樹液とか、蜜とか」
「火属性に対抗するほど樹液や蜜を出したら、干からびて死んでしまいますよ!」
あ、そうですか。
「なら、何かに大量の水を詰めて、担いで登場……とか?」
「できると思います、それ」
できないわな、当然。
「大体何かを身に付けて召喚してもらうには、事前申告が必須なんですよ? あからさまに怪しいモノを身に付けてたから、相手に警戒されるだけです」
そりゃそうか…………って、ちょっと待てよ。
「ねえ、それって身体の一部だとしたら……どうなる?」
「はい?」




