play26 革命のサーチ。
「ホントに精霊族なの? 誰も私に反応しなかったし、ほぼ獣の姿だったわよ」
「獣の姿なのは普通です。そうやって皆、自分の正体を隠しているんですから……ただし、サーチお姉様に反応しなかったのは……」
リーフの表情が暗くなる。
「…………死んでるんだと思います」
は?
「死んでるって……ちゃんと動いてたわよ?」
「死んでるのは本人です。召喚をされたのは精霊力の結晶ですね」
はいい??
「ごめん、よくわかんない」
「えっとですね、召喚されてる間の精霊族は、本人は寝ているような状態になります」
「……魂だけ抜けちゃってる……みたいな?」
「そんな感じですね。で、その状態で本体である身体が死んでしまった場合に」
「魂だけが召喚領域に取り残される?」
「いえ、身体が駄目になっちゃった以上、魂だけ無事という事はありません。意思の無い抜け殻だけが残ります」
「あ、それが精霊力の結晶?」
「そうなります。その場合は召喚されても召喚主の指示通りにしか動かない、操り人形のような状態になりますね」
そっか、だからか。
「通りで攻撃するかそれを受けるか、しかしなかったわけだ」
「あ、それは普通の仕様ですよ」
はい?
「召喚されたリーフ達は、フェイバリットを出すか受けるか、それだけしか行動できないんです」
「な、何で?」
「そういう仕様だ、としか言い様がありません。何故かそのようにしか行動できないんです」
ふうん……だったらおかしいよね。
「私、いろいろしちゃってるよ? リーフの戦いにも干渉したし、相手のフェイバリット避けまくってるし」
「それは……わかりません。サーチお姉様だけですよ、そんな事ができるの」
「そ、そうなんだ……」
「もしかしたらサーチお姉様は、召喚獣ではないのかもしれませんね」
「あ、それはない。ステータス欄にはちゃんと『召喚獣』って明記されてるし『絶対命令権』ってのには従っちゃうし」
「『絶対命令権』に逆らえないのなら、召喚獣に間違い無いですね」
あ、そうだ。聞きたいことがあるんだった。
「リーフってさ、フェイバリットいくつある?」
「はい? フェイバリットは一つだけに決まってるじゃないですか」
やっぱりそうなのか。
「私、三つあるんだけど」
「ぶふっ!?」
「ちょっと、汚いわよ」
ヨダレやら鼻水やらを盛大に垂らしながらも、それを拭くのを忘れるくらい愕然としている。
「一つは攻撃型の『鉄クズの流星雨』、二つ目がまんまの名前だけど『高速回避』」
「……フェイバリットが三つ……あ、あり得ない……」
「普通にステータス見たら載ってたわよ。あんたも見てみたら?」
「ス、ステータス欄なんて見れるはずがな…………え?」
目の前に現れたステータス欄を見て、今度は呆然とするリーフ。
「な、何で!? 召喚獣がステータスを見れるはずが……」
「あら、リーフは術士型なのね」
「えっ!? サーチお姉様、見えてるんですか!?」
見えてるって、普通は見れるもんじゃないの?
「あらあ、結構細かく出るのね…………げっ! 胸囲私よりありやがる!」
しかもEですって!? きいいっ!
「ちょ、人のプライバシーを」
あれ、未成年閲覧禁止って欄があるんだ。どれどれ……。
「……うおっ、えげつない情報がたっぷり」
「ササササーチお姉様!? 何を見てるんですか!」
よいではないか、よいではないか。
「え。あんた、経験あるんだ」
「ぎゃあああああっ」
「しかも意外、二桁いってる」
「うっぎゃあああああっ」
「わ、好きな体位はバッむぐぐぐ」
「見ちゃダメ言っちゃダメ聞いちゃダメェ!」
ちょ、ちょっと。見ちゃダメ言っちゃダメはわかるけど、聞いちゃダメは何なのよ。
「えっと、聞くつもりは無かったんだけど……」
「……え? あ、あれ? 何でソース子がここに?」
「何でって、試合に干渉したいから近くまで連れてってくれって言ったの、サーチさんじゃない」
…………あ。隠れててくれってソース子を押し込んだの、選手控室だったわ。
「まさか、召喚獣全員が異世界人だったなんて……」
あはは、全て聞かれちゃったか。
「ソース子、この話は……」
「誰にも言わないよ。まあ、言ったところで信用してもらえないだろうし」
そりゃそうか。
「ま、ここまで聞かれたなら紹介しちゃっていいわね。この召喚獣はリーフ。私の仲間よ」
「あ、初めまして。鉄クズのサーチさんの召喚主のコーミです。召喚術士ネームはソース子です」
「ふむふむ……あ、はい、よろしくお願いします、ふむふむ」
ていうか、リーフ。いつまで自分のステータス欄に見入ってるのよ。
「リーフ?」
「あ、すいません。何でしたっけ?」
「いや、ソース子が自己紹介してたんだけど……あ、拗ねてる」
部屋の隅でのの字を書くんじゃないの。
「も、申し訳ありません。で、ですがサーチお姉様、このステータス閲覧は革命ですよ」
「革命? そりゃまた極端な」
「いえ、冗談抜きで。見て下さいよ」
そう言って私に見せてきたのは、リーフのフェイバリットの欄だった。
「それがどうかしたの?」
「リーフのフェイバリットは『深緑の葉刃』なんですけど、その下です」
その下って…………あれ?
「もう一つフェイバリットがあるじゃないの」
「そうなんです。リーフも初めて気付いたんですけど、二つ目のフェイバリットがあったんです」
その名も『葉っぱ防御』。その名の通り、葉っぱで防御するフェイバリットらしい。
「ていうか、何で今までそれに気づかなかったのよ?」
「二つ目のフェイバリットは、ステータスを確認して初めて使用可能になるみたいなんです」
そ、それってつまり。
「召喚術士が召喚獣に『ステータスの閲覧』を命じれば、全ての召喚獣に二つ目のフェイバリット開眼の可能性があると?」
「そうなりますね」
た、確かに革命だ。