第九話 ていうか、運命的出会い。
「グギャア!」
作り出した針を脳天に突き立てる。そのままゴブリンは倒れ、私からある程度離れた針は霧散した。
「地を這え、静かなる雷よ!」
バリバリバリッ
「「「ギャギャギャギャギャギャ!」」」
エイミアの≪蓄電池≫を受けたゴブリンが三匹ほど黒焦げになる。しかし「静かなる雷」って……言い方変えれば静電気だけど……。
「はあ……はあ……電気が足りない……」
逆立ってた髪がすっかり元に戻ってる。エイミアの服って麻よね? なら、こんなこともあろうかと買っておいたウールの布地で……。
ゴシゴシゴシゴシ
「きゃっ!? な、何ですか……って、あれ? 力が……電気が……溢れてくる……!」
あーあー、超のつく野菜星人みたいになってる。今度からこの手使えるわね。……エイミアって体にアースしちゃったら……頭の濡れた某正義の味方みたいになっちゃうんかな?
ていうか、あれから二時間ほどくまなくゴブリンを刈ってまわったけど……何故か異様に多いわね。
「エイミア……これって」
「もしかしたらゴブリンの上位種がいるのかもしれません」
だよね。レッドキャップかホフゴブリンが……周りの連中も気付いているらしい。少し警戒している。
「まあ、こういうときのためにギルマスがいるんだから、ヤンデルさんに任せちゃいますか」
「……ランデルさんですよ」
ちょうどそのタイミングで、ギルマスが集合を呼びかけている、と同じクラスの子から言われた。
「ギルマスも気づいたみたいね……一時撤退よ」
「わかりました。急ぎましょう」
森の入り口へ急ぐ。が、その時。
ゾクッ
急に悪寒が……エイミアの左か!
「エイミア危ない!」
銅のナイフを投擲する。
ギインッ
エイミアに向かって飛んできた矢に当てる。
「ひえっ」
軌道が逸れた矢がエイミアを掠めた。あ、エイミアの服を……なんて気にしてる場合じゃないか。“不殺の黒剣”を抜いて構える。
…………。
ヒュン
「……!」
ギインッ
……300m先に一匹。
「……」
ヒュン
「後ろ!」
ギインッ
……500m後方に……二匹か。よし。
「エイミア、時間稼いで」
「えっ、ちょ……!」
エイミアが慌ててたけど……何とかなるでしょ。ていうか、それくらい何とかしないと冒険者やっていけないぞ
。
叢を音も無く駆け抜ける。アサシンの場合≪早足≫と≪気配遮断≫が覚えられるけど重装戦士は覚えられない。だけど重装戦士の私のスキルには、何故か≪早足≫と≪気配遮断≫がある。使える私が言うのも変だけど、どういうことだろうか。たぶん私の固有スキル≪前世の記憶≫が関係してるんだけど……なんて考えこんでるうちにゴブリンの背後に出る。
肌の色は普通のゴブリンだけど弓持ち……ゴブリンアーチャーか。
「さて、殺っちゃいますか」
まずは一匹。≪偽物≫で針を作り出す。
「……グギャ……ッ……」
口を塞いでから後頭部に針を刺す。動かなくなったゴブリンアーチャーの耳を切り取って移動。すぐ近くにいたゴブリンアーチャーも同様に始末する。
「イヤー、助けてくださいー!」
「た、助けるから! その電撃を止めろおお!」
ゴブリンになぜか追いかけられるエイミア。≪蓄電池≫を暴走させているため、近寄れないギルマス達。
すでにエイミアの電撃に巻き込まれて、何人か黒焦げになっていた。うん、やっぱり心配ない。周りに被害は出るけど、ギルマスいるから心配ないでしょ。
「なら、私はあっちに集中しても無問題ね」
さっき見つけたもう一匹のゴブリンを確認する。
「頭の先が赤い……レッドキャップか」
ホフゴブリンよりも上位種で、しかもズル賢いため厄介な相手だ。今も配下が全滅したのを確認したのか退却を始めていた。
「かなり用心してるわね。気づかれないように……」
気付かれないように背後にピッタリついて並走。レッドキャップが地面で一息ついた瞬間。
「……! ギャア……」
黒い短剣が頸動脈を切断した。
レッドキャップを倒したからか、かなりのレベルアップを実感する。それと同時に。
「あれ? 宝箱?」
レッドキャップの死体が突然宝箱に変化した。たぶん、ドロップアイテム。
「レッドキャップの角の先切る前に消えちゃった……」
しまったー、と思いつつ宝箱を開ける。
すると。
「……あ……」
そこには、「運命」が入っていた。
レッドキャップのドロップアイテム、それは。
革のビキニアーマーだった。