play21 勤労のサーチ。
「いっらっしゃいませ~♪」
「げっ……い、いっらっしゃいませ……」
ん? 隣の子の様子がおかしい。ていうことは、今入ってきたのが?
「うっわ、可愛い……」
「ありがとうございます~♪ お持ち帰りでございますか? 店内でお召し上がりですか?」
「あ、はい、貴女をもっと見ていたいので、店内で食べていきます!」
うっわ、キモ。
「あ、ありがとうございます~。ご注文はお決まりですか~?」
「はい! 貴女です!」
マジキモ!
「あ、あの、お客様、そういうことではなく……」
「貴女が欲しいです! 僕のモノになって下さい! 結婚して下さい!」
「あ、あの……」
「さあ、これから二人でホテルに行き、愛の結晶を作りましょう!」
やっぱこいつだな。店長に視線で確認すると、うんうん頷いてるのが見える。
「ではお客様、こちらの部屋へどうぞ」
「うん! 婚姻届は持ってきてるよ!」
ギイ……バタン
ぼかどかべきぐきがんがんがんぐしゃごしゃあ!
「ぎいあああああああああああああああ!!」
「…………?」
「あ、お客様、こちらへどうぞ~」
「あ、あの、今のって悲鳴……?」
「お気になさらず~! 世の中には知らない方がいい事がありますので~」
「は、はあ……」
「あ、あべべ……」
「こいつで間違いないのよね?」
「はい。店内で女性に絡みまくっていた迷惑ストーカー客で間違いありません」
店長だけではなく、他の女性店員も頷く。
「オッケー。ならこれは裏の川に捨てておくわ……ていうか、これで一件落着かな?」
「ありがとうございました! おかげで仕事に集中できます!」
「ありがとうございます!」
「本当に助かりました!」
うんうん、最初の依頼、無事に達成と相成りました。
「サーチさん、このまま店員として働きませんか?」
「歓迎しますよ? サーチさん来てから、売上増えてますし」
「あ、いや~、そうなるとソース子も働かないといけないし」
「「「……あ~……」」」
がちゃあん!
「ソース子ちゃん! またやったの!?」
「す、すみませんー!」
あーあ……これで通算十枚目か……。
「……ソース子居ると……」
「……一週間で食器無くなりますね……」
ちなみに、一日の通算が十枚です。一週間働きましたので…………言わずもがな。
幸先良く大金を稼げたものの、まだまだ足りない。
「とは言っても、バイトレベルじゃ絶対間に合わないし……」
何かいい手はないものか、とバイト情報誌をチラ見していると。
バンッ!
「サーチさん、これよこれ!」
ソース子が何かのチラシを持って駆け込んできた。
「どうしたのよ。何かいい仕事でも見つかったの?」
「あったよ、サーチさんにピッタリの仕事!」
そう言って差し出されたチラシは二枚。
「えっと、緊急募集。ストリップダンサー若干名…………おい」
「露出狂のサーチさんには最適うぶぐしゃあ!」
一生そこで寝てろ。
「で、もう一枚は…………何でも解決、トラブルシューター募集?」
トラブルシューターなんて、マジであるんだ。
「イタタタ……そ、それは召喚獣を用いないトラブルシューティングの募集だね」
「召喚獣を、用いない?」
「基本的に召喚獣は小回りがきかないのが多いから、トラブルが逆に大きくなっちゃうかもしれないのよ」
あー、確かに。ホウキとチリトリで間に合う掃除に、ブルトーザー投入するようなもんだわね。
「……成功報酬の半分を貰えるんだ……」
「召喚獣を使わない仕事だから、危険を伴うのよ」
「……ていうか、これを私に見せたってことは、私にやれって言いたいの?」
ソース子はニッコリ笑って。
「だって、サーチさんにはこれ以上に最適な仕事は無いと思って」
そう言った。ていうか、さっきストリップダンサーが最適って言ったのは誰だったかしら?
で、面接を受けてみたところ。
「召喚獣でも人型で小回りきくなら無問題」
というわけで、即採用。次の日には最初の仕事を振り分けられ、一週間で見事に解決←今ここ。
「ていうか、食器の弁償で半分もってかれたわよ、報酬」
「ごごごめんなさい」
ソース子、ここまで不器用だとは思わなかった。
「……まあいいわ。とりあえず初仕事は無事に達成したんだし、次から頑張ろ」
「う、うん!」
次の依頼、デリバリー屋から。同業者による妨害を止めてほしい。
「ふんぬっ!」
ばきぃ!
「ぐはぁ!」
オッケー、妨害の実行犯確保。あとは吐かせれば……。
「サーチさん、助けに来たよわわわわわわわわ!?」
キキー……ガチャン!
あ、あああ。やっちゃった。
「お、お店の魔力バイクが……」
……報酬の2/3、弁償費用に消える。
次の依頼。敷地内に無断で魔力車を止める迷惑ご近所さんを排除。
「たああ!」
ずどむっ!
「うごぶ!?」
よし、迷惑ご近所さん確保。あとは吐かせれば……。
「車、動かすね」
え、待って、そのパターンは。
「あ、あれ、ブレーキ効かない!? あわわわわわわ」
がちゃあん!
あ、あああ。向かいの家の壁が。
「ほ、報酬無し!?」
それどころか、足りない分を払わなくてはならない結果に。
「……サーチさん。貴女はいいの。貴女は非常に優秀なの。だけど問題はオマケの方で」
「な、何で召喚主の私がオマケ呼ばわり!?」
まあ……これだけ損害出し続ければ、オマケ扱いはやむを得ないわな。
「貴女が優秀なのを差し引いてもなお、オマケのせいで評価はマイナスになっちゃうのよ」
だろうねー。バイクに車に家の壁。凄まじい損害だわ。
「そういう訳だから、恨むなら召喚主を恨んでね」
つまり……解雇、か。
「……ごめんなさい、サーチさん」
「まあ……こういうこともあるわよ。あははは……はぁぁ」
何とかソース子から離れられないか、真剣に考えよう。