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play19 暴言のサーチ。

 突然の校内放送が、私とソース子を凍りつかせた。


『……という訳で、代表選考会を開催します』


 おい。


『出場を希望される方は、担任まで出場届を提出するように』


 ちょっと待て。


『この世界一魔術会は、召喚術士の頂点を決める大会です。出場する選手は当然ながら、星五以上の猛者ばかりでしょう』


 何でやねん。


『それを覚悟して挑むつもりがあるなら、どしどし参加して下さい……以上です』


 出場するの、私じゃなかったのかよ。



『どういうことなのよ!?』

「さあ……どういう事だろうね」


 ひたすら文句を言う私に、ソース子も返す言葉がないっぽい。ていうか、だから校長室へ向かってるんだけれども。


「私も一週間考え込んで、ようやく覚悟が決まったばかりなのにっ」


 そうよ、ソース子もウジウジウジウジと迷った上で、どうにか出場を決めてくれたんだから。


「なのに、私達に断りも無く、突然選考会を開催!? 一体何だってのよ!」


『ていうかさ、今までこの学校から出場した生徒っていないの?』


「この学校から? 居ないはずだよ」


 ……それなのに、急に私達を代表として参加するなんて決めれば……。


『もしかしら校長さん、半泣き状態かもしんないわよ』


「え?」



「申し訳ございませんんん!!」


「ほ、本当に半泣きだ」

『ね。言った通りでしょ』


 校長室の豪華な絨毯に頭を擦りつける勢いで、校長先生頭を下げました。土下座ではないのがある意味スゴい。


「こ、校長先生、頭を上げて下さい!」


「しかし、しかし、私は貴女達を代表にと、一度は決めたのです。決めたのです…………ですが。ですがぁ!」


 ……やっぱり……か。


『間違いなく、他の生徒の親から突き上げ食らったのね』

「……どういう事?」

『簡単な話よ。今まで参加すらしてなかった世界一魔術会に、突然学校代表を派遣するのよ? しかも半年経ってるとはいえ、一年生を』

「あ、そっか。他の生徒は面白くないのね」

『しかもその一年生が使う召喚獣が、最低ランクの人型とくれば……』

「親も巻き込んで、大騒ぎになるでしょうね」


 で、どうせ騒ぎになるんだったら、自分達の子供を代表に据えたいだろう。それだけの大会だ、出場するだけでも名誉だろうし。


『ソース子、私を召喚して。校長と直接話したい』

「わかったわ…………出でよ、鉄クズのサーチ!」


 ブゥンッ


 魔方陣が現れ、一旦分解された私の身体が、現実世界で再構築される。


「……ふう。で、校長先生」

「は、はい!」

「私達は……出れるの?」


 そう聞かれた校長の顔色が、明らかに悪くなった。やっぱり。


「何を言ってらっしゃるのかしら、この落ちこぼれは。貴女達みたいな三流が、一流の大会に出れるはずがないでしょう?」


 ……後ろにジメジメした気配を感じるとは思ってたけど……親の登場っすか。


「この大会に出場する生徒を決める代表選考会は、最上級生のみが参加できますのよ」


「最上級生のみって……そんなのほんの一握りじゃないですか!」


 ソース子が食ってかかるものの、ニヤニヤしてる親連中は動じない。


「当たり前ですわ、その一握りこそが出る事ができる大会なんですもの」

「一年生の落ちこぼれが、何を身の丈に合わない事を言ってるんでしょう」


 そう言ってクスクス笑う。


「っ…………校長先生、何とか言って下さいよ!」


「…………申し訳……ありません……」


 校長の立場弱すぎじゃね?


「では校長先生、今回の代表選考会は私達で仕切らせて頂きますわね」

「最上級生の、星四以上の召喚獣を連れた優秀な生徒のみが参加しますわよ」

「間違っても、星一の落ちこぼれ一年生なんかが参加できる選考会にはなりませんわ」


 頭を下げたままブルブル震える校長を見ているソース子は、ため息を吐くことしかできない。


「……どうする、サーチさん」


「どうするもこうするも、学校代表は諦めるしかないでしょ。今さらあのオバサン達相手に話し合ったって、時間のムダ以上に労力のムダよ」



 ぴしりっ



 私のオバサン呼ばわりで、校長室の空気が凍りついた。


「……今……何と仰いました?」


「オバサン、と言いました。オ・バ・サ・ンと、オとバとサとンを連ねて言いました」


「な、何て失礼な……!」


「失礼も何も、十二歳のソース子と比べたら普通にオバサンじゃん」


「あ、貴女は何を言ってるのかわかっていらっしゃるの!?」


「ていうか、召喚獣で歳をとらない私から見ても、十分にオバサンだし」


「~っ……校長先生! この暴言に対し、何らかの処罰を求めます!」


「は、はあ、それは……」


「はいはい、しっつもーん。召喚獣をどうやって処罰するんでしょうか?」


「っ……な、ならば召喚主である……」


「未熟な落ちこぼれ一年生では、星一の召喚獣は制御できまっせーん。その方法を学ばせるのが学校でありますから、ここで処罰するのは可哀想じゃあーりませんか?」


「な、何を言って……」


「ていうか、ソース子。私達は私達で出場すればいいんだから、勝手にやらせとこ」


「はあ!? だから貴女達は代表選考会には出れないと……」

「この学校の代表選考会には、でしょ? 別に個人参加なら、制限はないわよね」


 私にそう言われて、校長はようやく顔を見せた。


「あ、はい。個人参加には特に制限はありません」


「だそうよ。個人参加なら学校代表なんていうめんどくさい看板背負う必要もないから、気楽に戦えるよ?」


「た、確かに……そう言われてみれば……」


 さて、校長室から退散しますか。


「ではオバサン方、頑張って代表選考会やって、出場する一人を選んで下さいませませ……ではアデュー♪」



 私達が去ったあとの校長室は、かなりの修羅場だったらしい。校長先生には胃薬を送っておこう。

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