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第十話 ていうか、ルールに関する対策会議開催!

「それでは……リジーとオマケ(・・・)で勝てたエイミアの勝利を祝って、乾杯!」


「「カンパーイ♪」」

「エイミア姉は完敗」


 こらリジー、字が違う、字が。



 本戦の一日目が終了してから、私達は酒場で祝勝会兼反省会をすることにした。

 そう。反省会も兼ねるのだ。

 今回は「貴族の御都合(ルール)」によって、あわやエイミアが一回戦敗退……という結果になりかかったのだ。

 で、審判に問いただしてみると。


「毎年大会前に改訂されたルールブックが発行されてますので、一度確認されてみては?」


 と言われて、初めてルールブックが売っていることを知った。早速大会の公式ショップでルールブックを購入し(一冊銀貨一枚。高!)、酒場で広げているわけだ。


「……あったあった。貴族と対戦する場合は礼を失してはならない。詠唱の間に攻撃するような、野蛮(・・)な真似はすべからず……尚、破った場合は失格となり、対戦相手が勝ち上がるものとする。だってさ」


「それで貴族の攻撃魔術士は堂々と詠唱してたんですね……」


 ため息まじりに酒を煽るエイミア。やっぱり悔しかったみたいで、少々自棄酒気味。


「まだまだあるわよ……貴族以外の民が後から入場した場合、リング内にいる貴族には一礼してからリングインすること……」


「うっわ、めんどくさいですね」


「それから……あ、これはマズいわ。貴族と対戦する場合は、先に攻撃するような無礼なことはしてはならない」


「ええー! そんな、黙って攻撃を受けろって事ですか!?」


「まあ避けるしかないわよね……それよりエイミアって、この条項に引っ掛かるわよね?」


「そうなると思う。エイミア姉は相手の詠唱中に殴っちゃったから」


「でも済んだことですよ? もう大丈夫じゃないですか?」


 安心できないわね。


「わからないわ……もしかしたら、エイミアがこの先の試合で貴族に勝ったとしても、この条項を持ち出されて有無を言わせずに失格! ……なんてこともあり得るわね」


 なんてったって貴族の御都合(ルール)だから。


「そ、そんな〜……」


「サーチ姉、ちょっと見せて………あ、大丈夫。攻撃の規定の欄を見てみて」


 ん、何よ……あらホントだ。


「エイミア、大丈夫だわ。魔術の詠唱も攻撃に含まれるって規定されてるわ」


 たまたま貴族に都合よく作ってあった規定に助けられたわ。


「そうですか! よかった〜……」


 ……何て会話してる最中に、店の扉が開いた。


「……あ、いたいた! どこに行くかくらい言ってってくれよ」


 リルか。

 そういえば酒場に行くって言ってなかったわね。


「ごめんごめん、忘れてたわ……ていうか、何か飲む?」


「あ、果実酒頼んできたから大丈夫だ……サーチ、お前の言う通りだったよ」


「やっぱりか……」


 リルにはちょっと調べモノを頼んでたのだ。


「何かあった?」


「リルにね、過去に反則で敗退した冒険者や、一般枠で出場した戦士のことを調べてもらったの」


「運良く何人かはこの街のヤツだったんでな、直接話を聞くこともできた」


 え! めっちゃ嬉しい誤算じゃない!


「リル、それ聞かせて! すいませーん、果実酒と麦芽酒十杯ずつ(・・・・)追加でー!」


「十杯ずつって……誰が飲むんだよ」


「え? 私とあんたに決まってるじゃない……で? どうだったの?」


「あ、ああ。話を聞けたのは三人だけなんだけどな、全員失格になってから初めてルールを知った(・・・・・・・・・・)そうだ」


「……内容は?」


「二人はエイミアと同じで、詠唱中の貴族を攻撃した。もう一人は対戦相手の貴族に一礼しなかったことへのペナルティ。ただ……」


「……ただ?」


「こいつは準決勝の直前にいきなり宣告されて失格になってる」


 予想通りね。


「過去のパターンはどうだったの?」


「似たり寄ったり。順調に勝ち進んでたヤツは大概ルール違反で失格だった」


「それじゃあ、ルールの過大な解釈はあっても……」


「ああ。あくまでルールの範囲内だな。突然ルールが変更されたっていうのは流石に一度もないってよ。これに関しては裏ギルドでも確認できたから間違いない」


 ……ふううううううぅぅぅ……。


「お、おい。どした? 急に空気が抜けたみたいになって?」


「……いっちばん最悪なパターンは回避できたのよ」


 形振り構わず来られたら、どうしようもできないからね……やっぱり相手が権力を持ってるから、正面からぶつかるしかない。


「このルールをちゃんと頭に入れて、さらに文句のつけようがないくらいに圧勝するしかないわね」


「文句のつけようがない……ですか」


「難しいけど〝死神の大鎌〟(デスサイズ)の為に頑張る」


「……言っとくけど、優勝しても〝死神の大鎌〟(デスサイズ)をあんたにあげるわけじゃないからね」


「………………………わ、かってるよ」


 めっちゃ動揺してるじゃない!


「わわわ私が欲しいななんて」


「落ち着きなさい、リジー……あの大鎌はソレイユに渡す方向でまとまってるって知ってるわよね」


「……うー……でも」


 まあリジーも「欲しい! 欲しい!」って、かなり前から言ってたしね……仕方ない。


「わかった。リジーちょっと待ってなさい」


 念話水晶を取り出す。


「……もしもーし! ソレイユー!」


『……はーい! はいはいは……あ、サーチじゃない! お久〜!』


「お久〜……じゃなくて! 時間がないからストレートに言うね!」


『ん? いーよー』


「もし〝死神の大鎌〟(デスサイズ)が手に入ったら、魔王様(ソレイユ)秘蔵の呪われアイテムちょうだい」


『……あ、リジーか。いーよー! とっておきのヤツあげる』


「マジで!? ありがとー!」


『いいっていいって! ごめん、私さ、現在進行形で戦闘中なんだ! 切るけどいい?』


「戦闘……ごごごめんなさい! んじゃまた!」


『ほーい! まったね〜』


 ……切れた。

 ていうか、戦闘中に会話できるソレイユって、やっぱスゴいわ……。


「というわけで、リジー」


「という訳でって言われても……」


「最後まで聞きなさい。ソレイユが〝死神の大鎌〟(デスサイズ)をくれたら、魔王様秘蔵の呪われアイテ」

「それでいいそれがいいていうか今すぐくれ」


 めっちゃ食いついた!!


「……まあ解決して何よりだわ……」


 何か重要な話をしていると逸れるのよね…まあいいか。


「さーて、それじゃあ本題にいきますか。このルールブックの中身、一夜漬け(・・・・)で覚えてもらうわよ」


「え!? 何でですか!」


「いきなり理不尽。上げて落とすのはもっと理不尽」


「……あのね、今夜以外にあんたらが試合前日(・・・・)にならない日が他にある?」


「え!? えーっと……決勝までぶっ通しだから…」

「……負けない限り休みがない」


「でしょ? 試合の前に完徹したい?」


「「……イヤ」」


「はいはい! そういうわけです! 今から旅館に戻って拷問(じゅぎょう)を始めるわよー!」


「サーチ! 字が! 字が違います!」

「……ちーん」


「あ、リルはいいわよ」

「そうか? じゃあな。がんばれよー」


「なっ!? 何でリルは除外なんですか!」


もう負けたヤツ(・・・・・・・)には意味ないでしょ?」


「ぐ……チクショーーー!!」


「うん、これぞ上げて落とすの見本市」



 やっぱりエイミアは途中で陥落した。

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