第十六話 ていうか、被った!
最後の戦いに臨むため、火口を目指して進む。
「オニコとツィツァは、噴火前から火口の監視をしていたのね?」
「はい~。炎の王が大人しいのが気になるからって~、ここんとこずっと詰めていらっしゃいました~」
それだけオニコ達が警戒してくれていたのに、今回の暴走は防げなかったのね。
「今小康状態なのは何でかな。もしかして、オニコ達が頑張ってくれてる?」
「さあ……ワタクシにはわかりかねますわ」
どちらにしても、火口に着かないことにはどうにもならないか。
「スカイ、空から火口の様子を見てきてくんない?」
「わかりました~」
「ただし、ムリはしないように。危ないと思ったらすぐに逃げて。いいわね?」
「ラジャりました~」
そう言って飛び立つスカイ。相変わらず掴みどころがない、というか……。
「ていうか、それはどうでもいいわ。フレア、火山のマグマの動きは探れない?」
「全っ然平気です」
「なら登りながらで悪いけど、常時探っておいて」
「ラジャー……りました」
「ウォータとリーフもそれぞれの属性の力で異常がないか確認を」
「「はい、サーチお姉様」」
これもどうでもいいことなんだけど、ウォータとリーフってキャラが被ってるわね。
「「…………」」
そんなことを考えてたら、何故かウォータとリーフが見つめ合い始めた。
「……前から思っていたのですが……」
「何ですか、リーフ」
「私達、キャラ被ってますよね」
「確かにそうですね」
以心伝心!? まさか私が感じてたことが、二人にそのまま伝わるなんて!
「サーチ、サーチ。思いっきり顔に出てましたわよっ」
へ?
「サーチお姉様にそう思われてたみたいですし」
「何か手を考えないといけませんね」
マ、マジか。
「……サーチの考えてる事は、顔を見れば丸わかりですわよ……」
それ、エイミアやヴィーにも言われるんだけど、そんなにわかるもんなの?
「うーん……一番簡単なのは、口調を変える事でしょうか?」
「そうですね。ならウォータも私も敬語ではなく、普通に話せばいいのでは?」
「そうですね、そうしましょう」
「では……」
二人ともタメ口になったら、それはそれで……。
「待って。私と被っちゃうから」
「「あ、フレアですか……」」
そう。フレアも普段は敬語だけど、たまにタメ口っぽくなるのが特徴なのだ。
「で、でしたら、明らかに違う口調になればいいのでは?」
「例えば?」
「語尾に何か付けるとか」
語尾にっすか。
「なら……『ー』とか『~』でしょうか」
待って、それは。
「私と被ります~」
「「あ……」」
スカイは語尾が少し間延びするのが特徴なのだ。
「でしたら、もっと思い切った語尾にしては如何ですの?」
「「思い切った……語尾?」」
「はい。『~だゴン』とか、『~だペン』とか」
「「絶対嫌ですっ!」」
そりゃそうだ。語尾にゴンだのペンだの付ける仲間、私は御免被る。
「なら……一人称の変更ですか?」
「ああ、それはいいですね」
一人称の変更か。それは実用的かも。
「ならワタクシに」
「それはワタクシですわね」
ナイアと被るわね。
「ならあたいで」
「それはツィタと同じですわね」
ツィツァ自身もリルとちょっと被るからなあ。
「な、ならワシで」
「オニコですわね」
実はワシってのもマーシャンと被ってるのよね。ま、最近は「妾」って言ってることが多いけど。
「ぅぅぅ……なら、どうすれば!?」
「そうねえ…………ミー、とか?」
「「ミー……ですか……」」
「サーチ、それはもっと強烈な印象が」
あ、そうか。出っ歯の人になるわね、しぇー。
「な、なら私達はっ」
「一体どうすればっ」
「待って。カラーを一人称にしては?」
「「カラーを?」」
「ウォータはブルー、リーフはグリーンですわね。それを一人称にするのです」
「そ、それは……」
「確かに差別化できますが……」
「待って。色がそのまんま名前になってる子がいるわ」
「……あ、イエローですか」
「それはそれで不味いですよ……ウォータ、リーフ、これも駄目だね」
フレアからのダメ出しで、ガックリと塞ぎ込む二人。
「……ていうか、そこまで重要なこと?」
「「重要です!」」
さいですか。
「大体何故にウォータは敬語を使うんですか!? 普段はまるで違うじゃないですか!」
「そういうリーフだってそうじゃないですか! 普段は絶対に『私』なんて言わないくせに!」
あーあー、ついにケンカを始めちゃったよ。
「うっさいわね! リーフみたいに恥ずかしい一人称は絶対に嫌だしっ」
「はああっ!? そういうウォータだって、普段の荒い口調は聞くに耐えませんよ?」
「何ですってぇ!? ワタシのどこが荒いってんだよ!」
「ほーら! 既に荒くなってるって、リーフは思いますよ」
「はん! 自分の事を名前で呼ぶヤツなんて、その歳じゃ恥ずかしいだけじゃんか!」
「待って待って、ストーップ!」
「何だよ、サーチお姉様!?」
「リーフの邪魔をしないで下さい!」
「それで十分に差別化できてるじゃん」
「「……へ?」」
「ウォータ、あんた普段はそんな荒い口調なのよね」
「そうです。荒いとは思ってませんけど」
「普段からそれでいなさい」
「ええっ!? そ、そんな、サーチお姉様の前で!?」
「サーチお姉様の命令。敬語禁止」
「あ……う……わ、わかりましたよ。わかったよ。こう喋ればいいんだよね!?」
「はい、よろしい。次にリーフ」
「は、はい!」
「一人称をリーフで固定」
「そ、そんな!?」
「わかった? 私、じゃなくてリーフよ。これもサーチお姉様の命令」
「うぐ……わ、わかりました。リーフはリーフと呼びます。それでいいですね!?」
うんうん、大変よろしい。
「あーあ、サーチお姉様の前で敬語を使わないのって、何か変な感じだなー」
「まあいいじゃん。それはそれでウォータだよ」
「「「あ……」」」
「「な、何だよ?」」
今度はウォータとフレアが被った……。
「ウォータ、やっぱあんたは敬語で」
「はああっ!? な、何なんだよ!?」
「サーチお姉様の命令」
「うぐっ……な、何なんですか!?」
ウォータのキャラの迷走は、しばらく続きそうね。