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第六話 ていうか、雨あられ。

 男男の薄い本的な展開をくぐり抜けた私達は、とりあえず近くの洞窟内に避難した。


 ひゅうううん……どどおおん!

 ひゅうううん……ずどおおん!


「あ、危なくて歩いてらんないわよ!」


 ひっきりなしに飛んでくる噴石が、私達の行く手を阻むのだ。


「オ、オニコに連絡して、水の一族に出動してもらわないと……!」


 念話水晶でメラさんネットに接続、そこからオニコの鬼板に……。


「っ! サーチお姉様、駄目です!」


 え?


「メラさんも炎の一族です。メラさんネットでのやり取りは炎の王に筒抜けになります!」


 うぐっ。そ、そうだったわ。


「オニコと連絡を取りたいんですの? でしたらワタクシが致しますわ」


 …………あ、そっか。鬼ババは月の魔女の傘下だから、垣根なく連絡がつくんだったわ。


「……月よ月夜に月見頃」


 短い詠唱の後、ナイアが一人言を言い始める。


「もしもし、聞こえますか? そうですわ、ナイアですわ…………ええ、元気ですわ。誰も被害には遭ってませんわよ。そちらはどうです? ……ツィタも元気ですか、良かったですわ。それよりオニコ、一つ頼みたい事があります…………ええ、ええ、そうですわ、炎の一族に対して………………は? ま、待って下さい。全滅? 水の一族が? 一人残らずですの?」


 ぜ、全滅!?


「ちょっと、水の長老は!?」


「待ってて下さいな。サーチ、水の長老がどうかしましたの?」


「水の長老は全身が水でできているような人だったから、炎は無効だったと思うけど」


「待って下さい……オニコ、水の長老の所在は確認できてますの?」


 ……メチャクチャ嫌な予感がする。


「……一番最初に? わかりましたわ」


 ナイアは無表情で私に告げた。


「水の一族は炎では無く、噴石によって壊滅させられたようです」


 っ!? や、やられた! 噴石は炎属性じゃない、土属性だわ!


「他の精霊族にもかなりの被害が出ているようです」


 あんのバカ王、島に避難した精霊族にまで攻撃してるわね!


「急いで島に戻らないと!」


 ひゅうううん……どどおおん!

 ひゅうん……ひゅひゅううん……ずどどどおおおん!


「あ、あれ? 何か噴石がヒドくなってきたような……?」


 どどどどおおん! ずずずずん!

 ……ぱらぱら……


「……! マズい、ここから出るわよ!」


「サーチ、今は危険ですわ!」


「わかってるわよ! だけどこのままだと、洞窟が耐えきれずに崩れるわ!」


「ら、落盤ですか!? なら早く逃げないと!」

「いやあ! 生き埋めいやあ!」


「落ち着いて下さいな! 噴石の量が異常に増えています、今洞窟を出たら……!」


「ナイア、あの噴石は明らかに私達を狙ってる。つまり、炎のバカ王には私達の居場所がわかるのよ」


「ま、まさか、この噴石は落盤を狙って意図的に!?」


「そう考えるのが妥当でしょうね!」


 ナイアの返事を待たずに外に向かって駆け出す。


「ま、待って下さい! ならばこの噴石の集中は、ワタクシ達を炙り出す為の罠では!?」


「十中八九そうでしょうね。だけど洞窟の強度に期待するよりは、ここから逃げ出した方がまだ生き残れる可能性が高いわ」


 落盤で生き埋めになったら、もう為す術がないわ。


「わ、わかりましたわ」


「ウォータ、フレア、洞窟から出たら水蒸気を放って」


「「す、水蒸気?」」


「ウォータの水をフレアの火で蒸発させればいい。霧で覆えば、炎のバカ王が見えなくなるかも」


「そ、そうか!」

「わかりましたわ!」


「ナイア、霧で誤魔化してる間に、月魔術で私達を見えなくできる?」


「そうですわね……周りの景色をきちんと把握できれば、同化できなくはありませんわね」


 やっぱりか。


「そのための霧よ。時間稼ぎにはなるでしょ?」


「……サーチ……ワタクシの魔術をそこまで把握して……」


「ま、いい加減付き合いも長いからね。ていうか、出口が見えてきたわ。みんな、準備して!」

「「「了解!」」」


 フレアとウォータが洞窟を出る直前に属性を放つ。


 ゴオオオッ!

 バシャアア!

 ジュワアアア……


 大量の水が一気に蒸発し、周りが霧に覆われた状態になる。


『ぬっ!? 小賢しい!』


 この声は……炎のバカ王!


「やっぱ見えてるみたいね……ナイア、準備はいい?」


「はい、やれるだけやりますわ!」


 そして、洞窟から脱出。


 ひゅうん!


 噴石か!


「はあああっ!」

 ばがぁぁん!


 どうやら手当たり次第に霧が出てる場所に噴石を集中してるらしく、周りにドスンドスンと落下する音が聞こえる。


「まぐれ当たりでくる噴石は私が何とかするわ! ナイア、急いで!」


「わかってますわ! 月よ月夜に月見頃、月よ月夜に月見頃……」


 ひゅうん! ひゅひゅううん!


「ちいいっ!」


 ばがぁぁん! ばきゃあん!


 量が増えてきた。どうやら細かいのを大量に降らせる戦法に変えてきたみたいね。


「このままだと裁き切れなくなるのは時間の問題……だったら≪偽物≫(イミテーション)!」


 オリハルタイト製のタワーシールドを作り出し、噴石を防ぐ。


 ひゅひゅううん! がんごんがんごん!


「細かいのなら、これで何とか凌げる……」


 がんごんがんごんごんごごんぐわぁぁぁん!


「んきゃあああ! 手が! 手が痺れたあ!」


 ごがああああん! ごわああああん!


「いひゃああああ!」


「サーチお姉様、手伝います!」

「わ、私も!」


 フレアとウォータも盾を支えてくれる。た、助かった……。


 ぐわわぁぁぁぁぁん!

「「「みぎゃあああっ!」」」

 ごぐゎあああああん!

「「「くるきゃああ!」」」

 ごぅぅぅぅぅぅぅん!

「「「ひぎゃあああ!」」」


「喧しいですわ! 集中できません!」


「「「す、すいません……」」」

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