第十三撃っ! マッシュルーム!
「ほい、枯草大陸再上陸~」
「ひい、ふう、ひい」
元気に砂浜に足跡をつけた私と、ヨレヨレになって倒れ込むウォータ。
「お疲れ様」
「は、はい、本当にお疲れ様です……」
フレアに支えられて立つけど、マジでヘロヘロだ。
「うーん……」
流石にここまで頑張ってくれたウォータに、何かご褒美が必要ではないだろうか。ふと思い立った私は。
「ウォータ、何か食べたいモノはない?」
今日の夕ご飯に何か好きなメニューを作ってやろうと考えた。
「ふひい、ふひい……好きなモノ、ですか?」
「うん。オーク肉とか、ドラゴンの肉もあるよ?」
今までの旅で貯まった食材の数々、今回である程度放出しても構わないだろう……っていうか、そろそろ満杯だし。
「私、肉が苦手で……」
何ですとおおっ!? 私にとっては至高の食材でありますぞお!
「私は肉好き」
「私も」
友よ~っ♪
「だけど、肉以外のモノを食べたい時もあるます」
「私も」
「肉以外……岩とか?」
「何でっ! 属性同じだからって岩は食べない!」
そりゃそうか。
「…………火、食べませんから」
そりゃそうだ。
「火遊びはするけあばっしょい!?」
「余計なことは言うなっ!」
「見ていて楽しい火遊びでしたぶふぁ!?」
「記憶から消し去ってしまえ!」
そんな私達のド突き漫才をジト目で見ながら、ウォータ。
「……水は飲みます」
「「「そりゃそうだ」」」
飲まなきゃ死にます。
で、疲れ切ったウォータはホープにお願いし、フレアと二人で食材調達に出かけることになった。
「ていうか、海の近くにこんな山があるんだねぇ」
「枯草大陸は砂漠が多いですけど、この辺りはまだ自然が豊かですから」
ウォータはこの辺りの出身で、小さいころから山の恵みを食べて育ったんだとか。
「小さい頃から爪弾きされてて、山で自分で食材を調達してましたから」
とのこと。これは聞いちゃいけないヤツだったか。
「わかる~」
「フ、フレアも?」
「私はご近所の夕飯とかご近所の家畜を奪っ」
「はいはい、聞かなかったことにしますっ」
ていうか、そんなことしてたから爪弾きされたのでは?
「生きる為です」
「ならウォータみたいに自分で食材を探しなさいよ!」
「面倒です!」
威張って言うな!
「ていうか、マイタケが食べたいって……そういえば時期だわね」
枯草大陸の少ない緑も、かなり赤くなっている。日本と同じなら秋真っ盛りだろう。
「マイタケ……私、食べた事が無いです」
「マイタケはムズいかな~……天然モノはマツタケ以上に見つけるのが大変だからね」
栽培法が確立してる前世と違って、マイタケでもシイタケでも天然モノを探すしかない。こうなると、普通にスーパーで買えたキノコが如何に貴重なモノだったのかがわかる。
「遭遇したらラッキーなんですね、それはそれで燃えます」
そうね、遭遇したら……え?
「遭遇ってより、発見じゃね?」
「え、遭遇で合ってますよ?」
「え?」
「え?」
あれ? 何か噛み合ってないような……?
フシュルル~
そんなとき。木々の間から、それは現れた。
「あ、居た! 居ました! マイタケです!」
マイタケが、いた?
フシュルル~
「って、何よこいつ!?」
「探してたマイタケですよ! わかりませんか!?」
ま、待て待て待て! 何でマイタケがこんなに巨大で、しかも自分で歩いてるんだよ!
フシュルル~ボフッ
「危ないサーチお姉様! キノコの胞子攻撃は、いろんな状態異常を引き起こします!」
うぷっ! ま、まともに食らったけど……!
「毒が無効な私には聞かないわよ!」
ザンッ!
ブシュル!?
必殺の小太刀二刀流で真っ二つにする。急所が全くわからないので、とりあえず真っ二つにしてみた。
「サーチお姉様、お見事です!」
ピクリとも動かなくなったマイタケを、袋に放り込む。
「……量的に一匹で十分ね」
「ですね。サーチお姉様、目的達成ですから戻りましょう」
こ、こんなに早く達成できるなんて……普通ならあり得ないなあ。
フシュルル~
「あ、また出た…………って、シイタケ!?」
見た目は違うけど、動き方とか登場の仕方とかマイタケと差がない!
「よっしゃー、ダシゲーット!」
ザンッ!
ブシュル!?
スゲえ。これ一匹でどれだけダシが取れるか。
フシュルル~
フシュルル~
「ああ! マツタケにシメジにエリンギまで!」
「よっしゃあ、全部いただきだぜぃ!」
ザンザンザンッ!
ブシュブシュブシュル!?
香りに味に歯応えゲッート!
フシュルル~
フシュルル~
「げ、あの白い身体は……猛毒キノコ御三家の一角、ドクツルタケ!」
それに男性の天敵ドクササコ、最強毒キノコのカエンタケまで!
「あれは焼くべし! フレア、かえんほうしゃだ!」
「はい!」
ゴオオオッ!
ブシュルルルー!?
おお、流石に破壊の天使も火には弱いか。
「……カエンタケでも燃えるんだ……」
フレア、見た目が由来の名前だから。実際に燃えてるキノコじゃないから。
「たっだいまー!」
「あ、サーチお姉様。おかえりです」
「採れたわよ、マイタケ! 早速調理するわね……ていうか、ウォータはどうやって食べたいの?」
「そうですね、丸焼きですね」
に、人間より大きいマイタケモンスター、丸焼きっすか。
「じゃあ取り出して……えい!」
ドサドサーッ
「え゛……マ、マイタケモドキを捕ってきたんですか!?」
え、マイタケモドキ?
「マイタケのフリをして、人間を襲うモンスターの一種です!」
「じゃ、じゃあ、ウォータが好きなマイタケは……」
「普通のマイタケに決まってるじゃないですか!」
そ、そりゃそうか。
ちなみに食べてみたけど、大味のマイタケでした。結論、マズい。