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第七撃っ! ジャイアントスイング!

「……反応ないわね」


 火山による爆撃から三日。人間側に送った降伏のススメの返答はない。


「本当に届いたのかな?」


「スカイが本陣上空でバラ撒いてきたのよ。あれで届いてないなんてことはあり得ないわ」


 使者を送ると、怒った相手に危害を加えられる可能性がある。この方法なら安全だし、確実に相手に知らせられる。


「うーん……なら人間側の結論がまだ出てない?」


「その可能性もあるけど、もう一つの可能性も考えないとね」


「まさか……反撃してくるとか?」


「人間だって無力じゃないんだから、それなりの強者がいればわかんないわね」


 どこの世界にもいるのだ、一騎当千ってのは。


「その時はサチが撃退すればいいじゃない」


「何で私なのよっ。ツィツァもオニコもいるじゃない」


「いや、サチなら嬉々としてジャイアントキリングしてまわりそうだからうぐふぅ!?」


 あんたは私を何だと思ってるのよ!



 ……何てこのときは言ってたんだけど、まさか現実になるとは……。



「サーチお姉様、ちょっと来て」


 ツィツァとの会話のあと、お昼ご飯の準備をしていた私に、ホープが声をかけてきた。


「ほぇ? 今はちょっとマズいんだけど」


「いいから来て!」


「ちょ、ちょっと!」


 ビキニアーマーにエプロンなんて姿の私を引っ張り回さないで!


「何、何があったの?」


「スカイが海で何か見つけたです」


「海で? そういえば偵察に行くって言ってたわね」


 風の一族と水の一族が定期的に偵察してくれてるのだ。今回は風の一族の番か。


「何か大きなのがにこっちに向かってるって」


 大きなの?



「お~きな、お~きな、三角四角の固いのが」


「……?」


 スカイに話を聞くものの、何が来ているのかよくわからない。


「その、三角四角ってのは何?」


「空の上から見ると四角で~」

「水中から見ると……先が三角の四角でした」


 ん、ウォータ?


「スカイに頼まれて、私も調査してきたんです」


「う~ん……三角が先についた四角って感じ?」


「はい」


「なら……絵にしたらこんな感じ?」


 地面に鉄の棒で描く。


「あ、はい。そんな感じです」


「要は、船ね?」


「いえ、船じゃないです」


 いやいや、この形は船でしょ。


「あれは絶対に船じゃありません」

「はい~、あんな四角い船は見た事がありませ~ん」


 ま、確かに四角い船なんて馴染みがないかもしれないけど、ないわけではない。


「ていうか、あんた達が船じゃないって言い切る根拠は何?」


 二人は同時に。


「「だって、鉄でできた船なんてあり得ないですよね!?」」


 と言った。そうね、鉄でできた船なんて浮くわけが…………へ?



 スカイとウォータに推進力になってもらい、小舟でその推定・船を見ることにする。


「上から見ると四角い……で、鉄に覆われている船……」


 その条件に当てはまる船は、一つしか心当たりがない。空母だ。


「だけど木造船オンリーの世界で、何でいきなり空母?」


 まだ戦艦の方がわかる。空母だと搭載機がないと意味ないんだけど。


「見えてきました、あれです!」


「んー……≪遠視≫」


 最近覚えた望遠鏡スキルで見てみると。


「うっわ…………マジで空母だわ」


 あのシルエット、間違いなく空母。ただ。


「何で空母の上にお城が?」


 搭載機が離着陸するための甲板に、何故か城……ていうか砦かな……が建てられている。


「何なんだろ……スカイ、ちょっと詳しく見てこれない?」

「は~い~」


 スカイは城空母の上空に行き、じっくりと観察する。

 が。


「ひえ~~~っ!!」


 ひゅんひゅんひゅん!

 ぼぼぼぼぼっ! どんどんどーん!


「お、対空装備は万全みたいね」


 弓矢と魔術だけど。


「し、城には~、沢山の人が居ました~」


「どういう理屈かわかりませんけど、人間達は移動するお城を作り出していたんですね……」


 ウォータの顔色が悪い。ま、確かに海に浮かぶ城のインパクトはスゴいわな。


「だけど空母を知る私からしたら、意味がないとしか言い様がない……」



 夜。


「サーチお姉様、お気を付けて」


 ウォータに運んでもらって、船内に侵入する。オリハルタイト製の鉤爪で這い上がり、甲板へ。


「はあ、はあ、侵入成功っと」


 見る限りは空母で間違いない。前世の世界の文字があちこちに見受けられるから、この世界のモノではないわね。


「ていうか、だいぶ古いわね。サビだらけだし、対空砲はクモの巣だらけだし」


 しかも静か。動力源が動いてないのだろう。


「城もムリヤリ建てた感ありありね」


 基礎の辺りは、ただ石を置いただけって感じ。これ、ちょっと海が荒れたらすぐに崩れるんじゃね?


「やっぱり空母自体は死んでるわね。たぶん魔術を使って動かしてるんだ」


 水系や風系の魔術を使ってるんだろうな。


「ていうか、何のためにこんな城を……ん?」


 人の気配。物陰に隠れてやり過ごす。


「……それにしても圧巻ですね、先輩」


「ああ、このクーボ城だろ?」


 まんまかよ! もっと名前を捻れよ!


「ずいぶん昔に稀代の召喚魔術士が召喚した鉄の船を改修した、俺達の切り札だからな」


 召喚魔術士が召喚って……どうやったら空母を召喚できるんだよ!


「鉄でできてますから、沈められる事も無いですね」

「ああ。まさに不沈艦だよ」


 まあ……鉄砲もまだまだ普及してない世界だから、沈めるのは不可能でしょうね。


「だけど浮かんでるだけの鉄の船だったら、何とでもなるわ」


 私は早々に空母……クーボ城を脱出し、ウォータを呼んだ。


「何ですか?」


「ウォータ、またモーゼってくれる?」


「はい?」


「あの船の下で」


「はいい?」



 人間側の切り札・クーボ城は、突然割れた海の谷間に落下し。


 どずぅぅぅぅん!


 自重で全壊。そのまま海の藻屑となった。


「本当にジャイアントキリングしやがったよ……」


スイングじゃなくてキリング。

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