表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
171/1883

第四話 ていうか、いよいよ今回の黒幕っぽいのが?

 しばらく昔話に花を咲かせていたんだけど……。


「ていうか! 院長先生、孤児院はどうしたんですか!」


「……サーチは昔から『ていうか』が口癖ねえ」


「そうですか……じゃなくて! 院長先生も自分の都合の悪いことがあると、すぐ話を逸らすのは悪い癖ですよ」


「よく見てたわね……院長は辞めたわ」


「ホワイッ!?」


「ほ、ほわ……?」


 しまった、つい……。


「な、何でもないです……そ、それで、何で辞めたんですか?」


「言い難いんだけどね……サーチが原因かな?」


 …………え?


「あなたが賊から孤児院の子供逹を守ってくれた事件が……どうしたの?」


「…………………いえ」


 心的外傷(トラウマ)に気軽に触れないでください……。


「……それで死人が出た責任を問われて……」


 私の……せいで……。


「私に減給処分を伝えに来た役人が、本当に嫌な野郎でね、つい……」


 ……んん?


「結局それでも怒りがおさまらなくて、つい行政所やら警備隊詰所やらを破壊(・・)しちゃって……」


 おい、「つい」のレベルじゃないぞ。


「で、指名手配されちゃって……仕方なく院長を辞めたのよ」


「いやどう考えてもあんたの個人的八つ当たりが原因だろ」


 私の一瞬だけした後悔と反省返せ!


「それで帝都でメイドをすることになったのよ」


 ……院長辞めてからメイドになるまでの間が、メチャクチャ気になるんですけど……。


「……それよりも」


 バチンッ ゴトッ


「わっ!」


「昔と比べたら随分と大きくなって……Dくらいありそうね」


 え!? ちょっ!


「……形は羨ましいくらい良いわね……何より先の色が」


「な、な、何をしとんじゃああああああ!!!」

 ずっごおおおんっ!!!



「……サーチ、ずいぶんと長いトイレでしたね?」


「……まあいろいろあってね……」


 リルとエイミアは頭上に「?」を浮かべていた。


 コンコン


『失礼します』


 カチャ


「間もなくトーナメント抽選会が始まりますので、会場までご案内致します」


「はい、わかりました。それよりも……ヒルダさんでしたよね?」


「はい……何か?」


「頭の上のおっきいたんこぶは……どうされたんですか?」


 院長先生は私に流し目をして。


「……狂暴な獣(・・・・)に襲われまして……まあ気になさらないでください」


「狂暴な獣って! 大変じゃ」

「気になさらないでください」

「気になさらないでください」


「な、何でサーチまで?」


「気になさらないでください」

「気になさらないでください」


「……リル、怖いです」


「……ホントに気にしない方がいい。ヒルダさん、さっさと案内してくれ」


「はい、承りました」


 院長先生の笑顔を見て、何故か髪を逆立てたリルの第六感は……本物だ。



「こちらが抽選会場になります」


 院長先生……ヒルダさんの案内で通された場所は、貴族専用控え室よりさらに豪華絢爛キンキラキンだった。


「……さっきの貴族の控え室も十分に成金趣味だったけど……ここまで派手だと見応えあるわね」

「……眩しすぎて夜寝られないでしょうね」

「……貴族ってヤツはようわからん……」


「呪い無いなら、興味無し」


 それぞれの価値観で感想を言っていると、ヒルダさんが小声で。


「……皆様の審美眼が常識的だった事を祝福させていただきます。では、ごゆっくりとお寛ぎください……寛げないでしょうけど」


 そのまま去っていったヒルダさんを、私達は呆気にとられた顔をして見送った。



「ええ!? あの人がサーチがいた孤児院の元院長先生なんですか!?」


「そうよ。で、元勇者パーティの一員であり、マーシャンの元相棒である、A級冒険者〝飛剣〟のヒルダよ」


「……元孤児院の院長やってたA級冒険者って……なかなか異色の経歴だな」


「で、でも……! サーチの説明通りだと、見た目と年齢が合いませんよ!?」


「それ本人の前で言っちゃダメよ。言ったら最後……」


「ど、どうなるんですか?」


「良くて外される(・・・・)、悪いと砕かれる(・・・・)……てとこかな」


「ガクガクブルブル……」


 ちょっと脅しすぎたかな……大丈夫よ、ヒルダさんは優しいから。


「それより、私達も席に座りましょ」


 そう言って席を探す……が。


「……絶対に貴族と区別されてますよね……」


 当然そうでしょうね。


「なら一番隅の貧相な席だと思う」


 確かに。

 やたら豪華な椅子が並んでるテーブルとは別に、ちんまりとしたテーブルが隅に並んでいる。たぶんあれが一般枠や冒険者の席だろう。


「あの豪華な椅子が皇帝の椅子ですよね」


 玉座っていいなさいよ。


「あの左下に並んでるのが……」

「国賓席よ」


 あれ……んん、国賓!?


「てことは……ルーデルもあそこに?」


「……獣人への風当たりを考えると……それは無いと思う」


 そりゃそうよね。

 まあ、ルーデルはどうでもいいんだけど…………いた!


「左から三番目に座ってる女の人、わかる?」


「え? は、はい。わかりますよ」


 リジーは……珍しく興味津々みたいだ。


「あの人がハーティア新公国の一番偉い人、ロザンナって言う人よ」


「はあ……あの人がどうかしたんですか?」


「よく覚えておいて。たぶん大会の後に、私達に接近してくるから」


 それにしてもリジーは、何でガン見してるのかしら?

 ……何て言ってると黒幕のご登場。


「今度はあれ。いかにも『アブラギッシュ』を絵に描いたような中年オヤジ」


「ああ〜……はいはい」


「ハイリッヒ……何とかアプロース公爵。今回の黒幕候補No.1」


「ええ!? 公爵ですか!」


「そうよ……侯爵じゃなくて公爵よ」


「まままま不味いです! 私、隠れま…んぎゃあ!」


 ?? エイミアは変な叫び声をあげてテーブルの下に隠れた。


「どうしたの?」


 私は何気なく座って、テーブルクロスの裏にいるエイミアに声をかける。


「こ、公爵の隣……ヒゲを生やした男」


 ん……今、公爵と談笑してる男ね……ん!? 公爵って、まさか。


「……お父さん?」

「……そうです」


 うわあ……ホントに厄介だわ。



 その後、公爵の簡単なあいさつの後に。


「それでは、我が帝国が誇る貴族の勇士達を紹介しましょう!」


 どうでもいいわ。早よ終われ。

 紹介される貴族の子息(ボンボン)なんか知ったこっちゃない。

 ……何て思っていたら。


「今回は下賤ながらも(・・・・・・)、一般枠や冒険者の有力な戦士が出場しています。その中でも、貴族の方々の御眼鏡に適った、特に幸運(・・)な戦士を紹介しましょう」


 貴族の推薦ってこと?


「まずはアプロース公爵の個人的な友人である……」


 うわ、イヤな予感!


「…ドノヴァン子爵のご息女であられます、エイミア・ドノヴァン!」


 うわあああ……。


「……もう嫌です……」


 エイミアがテーブルの下で突っ伏した。


「続きまして……新大陸の南の地を治める狐獣人の」


 またもイヤな予感。


「次期首長ルーデルの双子(・・)の妹、リジー!」


「……私、双子の妹?」


 私も初めて知りました。


「続きまして……我が帝国の友好国(・・・)でもある、ハーティア新公国国公ロザンナ様のご推薦……」


 国公、推薦?


「若手No.1との呼び声高い、竜の牙折り(ドラゴンブレイカー)のリーダー、サーチ!」


 何で私いいぃぃぃぃぃっっっ!?


「ふざけんな……!」


 私もエイミアと同じように、テーブルに突っ伏した。


「続きまして……」


 まだあるのっ!?


「ハイリッヒ・ヴァン・アプロース公爵、自らが強くご推薦されました……」


 ……え?


「〝飛剣〟や〝竹竿〟と並び称される、我が帝国唯一のA級冒険者…」


 ま、まさか…。


「……〝刃先〟(エッジ)!!」


 はあああっ!? ど、どういうことよ!!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ