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第二話 ていうか、ルーデルとデートをすることになりました。

「……そういえばさ……」


「な、何だ?」


「あんた、何で帝国にいるの?」


「あ、あー……例の『過去を辿る』ってヤツさ。だいぶ前に闘武大会を見に来たことがあったから」


 あー、そうだったわね。下手したら女の子に逆戻り……の状態はまだ解消されてないのね。


「………」

「………」


 焦れったいわね。


「……………で?」

「……ん?」


「どこへ行くの? 何をするの? 何をしたいの?」


「え!? ええっ……と……」


「………」


「……何も考えてなかった」


 ダメだこりゃ。



 昨日の話がそのままトントン拍子で進展し、今日は朝からルーデルとのデートと相成った。

 だけど…。


「………」


 こいつ、顔を真っ赤にしたまんま俯くばっか! 全然しゃべりもしない! あんだけ喜んではしゃぎ回ってたんだから、少しは計画を立ててるのかと思えば……。


「………」


 それもなし。

 まっったく! 初めてデートする思春期の子供かっつーの! ABすっ飛ばしてヤることヤってんだから、今さら恥ずかしがるな!


「………」


 ……とも言えないのよね。一応前世を含めても、初めてのデートなのは私も同じなのだ。ホントはリードしてほしいんだけど……仕方ない。


「案がないのなら、私の買い物に付き合いなさい」


「はえ?」


「はえ? じゃないわよ。行くの? 行かないの?」


「お供させていただきます」


 こいつ……余裕があるのかないのかわからん。


「わかったわ。ただ、おもいっきり荷物持ちやってもらうから、お願いね」


「任された!」


 よしよし、その調子よ。



「……ここかよ……」


 今、私達は、武器屋の前に立っている。

 そう、デートなのに。


「買い物に付き合ってくれるんでしょ!? つべこべ言わない!」


「いや、そうじゃなくて…」


 何なのよ。


「色気もくそも無いな……」


 うるさい!



「この投げナイフいくら?」


「銀貨一枚と銅貨五枚だな」


「えー!! ちょっと高くない? 少しくらいオマケしてよオマケ」


「あぁん? これでも安い方だぞ」


「ん〜……じゃあさ、何本かまとめ買いするからさ。だからオマケして!」


「うーん…」


 武器屋の店主と値段交渉をしている間に、ルーデルも武器をアレコレと見ていた。


「ルーデルも買うの?」


「ああ。もう呪剣士じゃ無くなったんでな」


 あ、そういえば暴風回廊(ゲイルストーム)の一件のときに、男の身体に戻れた反動で職業もリセットされちゃったんだっけ。


「じゃあ今の職業は?」


「騎士」


 あら意外。


「じゃあ今度からは槍を使うの?」


「騎士の武器は槍ばかりじゃないからな。今は短槍を使ってる」


 短槍かあ。なら馬上戦より地上戦をメインにするのね。


「短槍にちょうどいい素材あるけど使う?」


「え? 何があるんだ?」


「いつぞやの竜の爪が魔法の袋(アイテムバッグ)の底に残ってたのよ。短槍二本分くらいあるからさ、あんたにあげるわ」


 そう言って竜の爪を店主に渡し。


「これで短槍二本作って。柄とかの素材は任せるからさ」


「竜の爪かい。こりゃ上等な爪だな……二ヶ月待ってもらえればいいモノが作れるぜ」


 二ヶ月……ちょうど大会が終わるくらいか。


「わかったわ……ルーデルは大丈夫?」


「あ、ああ。俺は大丈夫だ……代金は?」


「まだいくらとも言えんな。武器の受け渡しの時でいいぜ」


「わかった……ただ魔法の契約(マジックチェック)は頼むぜ?」


「あいよ」


 魔法の契約(マジックチェック)というのは……読んだままの意味。今回は貴重な竜の爪を預けるので、武器屋側が持ち逃げしたりしないように、魔術的な契約を結んで戒めをしておく…という意味合いになる。この世界では一般的なことだ。

 ちなみに、もし契約を破ったりした場合は、契約の精霊に一生つきまとわれることになる。結構地味な嫌がらせをされ続けるので、普通は契約破棄なんてバカな真似はしない。


「サーチいいのか? 貴重な素材を……」


「いいのよ……(あんたの存在すら忘れてたことへのお詫びだし……)」


「……? 嬉しいんだが……悲しい気分になったのは、何でだろう…?」


 ムダに鋭い。


「気のせいよ気のせい。ていうか、私からのプレゼント(・・・・・・・・・)が気に入らないのかしら?」


「そんなわけないだろ! 嬉しいぜ! 嬉しいよ! ありがとうな」


 おい。何で私の頭を撫でる。


「いや、俺より低いヤツってなかなかいないうぐぉっ!」


 うるさいっつーの!余計なこと言うな! 腹を押さえて店内で踞るルーデルを放置して、私はカウンターへ向かった。



 支払いを済ませて店を出ると。


「おおい! 待ってくれ!」


 何か喚いてるけどサクッと無視。


「待てっての! 悪かったよ! 俺が悪かったから!」


 無視無視。


「もう身長のことは言わない(・・・・・・・・・・)から!」


 ツカツカツカツカッ


「サ、サーチ……うげえっ!」


 早足で近づいて、密着に近い状態で寸勁。


「あんたにはデリカシーってモノがないのか!!」


「ご、ごめ゛んな゛さい…」


「たく……次行くからちゃんとついてきてよ」


「は、はい……」



 その後も、防具屋にて。


「おい、お前のバストじゃこのインナーはガバガバんぎゃあ!」


 道具屋にて。


「お前……日焼け止めなんて、今さら買ったってもう手遅れがほうっ!」


 食事中にも。


「おい、口周りにソースがついてるぞ! ガキかってんだよ……あぎゃあ!」



 ルーデルのデリカシーのない発言は、止まることを知らず……。

 デートの終わりにも。


「……あんたさ……女の子に嫌われてない?」


「何でだよ?」


 自覚ないのかよ!


「私に言ったようなことを、他の女の子に言ったりしたらダメだってこと」


「え? サーチに言った事?」


 こいつ……天然か?


「だーかーらー……」


 イライライライラ。


「あんた、散々私に腹ド突かれたでしょうが!」


「あ、ああ! ああ! サーチに言ったのて……あー、そういう事ね」


 ホントにわかったのか?


「いや、大丈夫だよ。あんな事を普通の女性に言うほど、俺もバカじゃない」


「……ほおう……なら、何で私にだけ言うのかな?」


「はあ? 決まってんだろ。サーチだから(・・・・・・)言うんだよ」


「!」


「……つーか、サーチ以外に言う事はあり得ないよ」


「………」


 ゆ、油断した! ルーデルがこんな不意打ちをしてくるなんて……!


「ん? サーチ、何で赤くなってんだ?」


「ななな何でもないわよ!」


 わ、ヤバい! 耳が熱い……!


「おお〜! サーチが照れてる〜♪」


 こ、こいつ……!


「やっぱり俺はサーチが一番かわむぐっ!」


 強硬手段ではあるが、ルーデルの口を口で塞いで黙らせる。


「………ぷはあ! どう? ビックリした?」


「………」


 あ。今度はルーデルが真っ赤になって固まってる。


「ふん。私に不意打ちしてきた罰よ!」


 何か私って、ルーデルという名の泥沼(・・)に嵌まって動けなくなってる気がする……。

 ていうか、それと。


「あんた達。最初から最後まで尾行してたことはわかってるんだから、そのままぶら下がってなさい(・・・・・・・・・)



「おーい! 私が悪かったから下ろしてくれー!」

「何でこんなとこに罠が仕掛けてあるんですか〜……お腹空きました……びえ〜」

「……私、完全な巻き添え……」



 ……朝まで叫び声が聞こえたけどスルー。



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