閑話 ビキニアーマー紀行 7 お久しぶりーねー♪
前回のあらすじ。
嘆きの竜の訓練?によって更に強くなった勇者エイミアとリル。
そして少しだけ巨乳化した私は無事にウロコを手に入れた。
やっとこさ素材をアップリーズ防具店に持ち込める!←今ここ
さてさて、どうなるやら…。
「「「暑い…」」」
…ずいぶん前にアタシーの辺りで散々呟いた気がするけど、今日1日であの時言った「暑い」を超えた気がする…。
「…サーチは涼しそうでいいですね」
「あのねえ…直射日光の直は熱いのよ!暑いじゃなくて」
…火傷するくらいの暑さだわ。
仕方ないので外套を羽織って日焼けを防ぐ。
「でも風通しがいいぶん涼しいだろ?」
「……風通しねえ…」
…リルの風通しの良さには負けるけど。特に胸元からお腹辺りを通る風が。
「…?…何でかな?妙にサーチを殴りたい気持ちが…」
やめて。
「エイミアも暑いんでしょ?だったら風通し良くしてあげるわよ」
ブチブチ!
「えっ!?」
パチンッ!
「きゃあ!サーチ何するんですか!」
「何って…服のボタン全部外してブラのホックを外したんですが何か?」
「な、何か?じゃないですよー!…リル、ブラ直してください」
「わかったわかった…サーチもムダなことにスキル使うんじゃねえよ…」
うっさいわね。
エイミアが「涼しそう…」とか言い出すからいけないのよ!
今、私達はロングミラ大平原を歩いている。
帝国の西に広がる大平原で、新大陸の約1/5を占めている。
けっこう開発が進んでいて、平原を開墾して作られた穀倉地帯は新大陸の食料事情を一気に改善させたほどの規模だ。
だけど平原にはまだまだ開発されていない未開の場所が残っている。私達はそこを進んでいた。
「…ここって砂漠より暑いんじゃないですか?」
「砂漠と違って湿気があるからね…」
今歩いてる場所は平原というより湿気に近い。
「ふう、ふう…あとどれくらいなんですか?私達が目指してる…えっと…」
「地獄門だよ。あと2日だな」
「あと2日ですか…はああ」
エイミアは大きく肩を落とした。
“嘆きの山”で嘆きの竜のウロコを手に入れた私達は、そのままハギフィールドにとんぼ返りした。
宿屋に荷物を預ける手間ももどかしい状態でアップリーズ防具店に駆け込んだ。
「手に入ったわよ!嘆きの竜のウロコ!」
「「「…へ?」」」
あ、久々のバイトヒャッハーズ。
「店長さんは?」
「「「………」」」
「?…ちょっと。聞いてるの?店長さんはいるの?いないの?」
「「「…ぎ」」」
ぎ?
「「「ぎいああああああああああ!!!」」」
ダダダダダダ……
「………」
な、何?
「な、何事だい!?」
バイトヒャッハーズの騒ぎを聞きつけて店長さんが出てきた。
「あ、店長さん」
「ん?…ああ、君達か…素材は手に入ったのかい?」
「あ、はい。だから嘆きの竜のウロコを…」
「…はあああああ!?…ま、まさか…」
私の手からウロコをひったくってルーペで確認する。
「これは…間違いなく嘆きの竜のウロコ…!ま、まさか!?…ま、まさか君達…嘆きの竜を怒らせるようなことはしてないよね?」
してないしてない。
そんな人類殲滅みたいなことはしてない。
私達は全力で首を横に振った。
「…じゃあどうやって?」
…どうやって!と言われても…。
「…ただ…『ください』と頼んだら『どうぞ』となっただけですが…」
「……………………そんな簡単に?」
「は、はい…すんなり」
「……そんな簡単に伝説級の素材が手に入るとは……」
まあ…『非礼には非礼で』っていう対応だからね…。下手なことはしないほうがいいかと。
「あ、それで作ってもらえますか?」
「ん?…あ、ああ…もう設計は終わってるから、あとは作るだけなんだけど…」
やた!
ついに!ついに!伝説級のビキニアーマーが完成する!
「…まだ素材がいるんだ…」
……へ?
「…今…なんて?」
「だからね…まだ素材が必要なんだ…」
………はあああっ!?
「ななななんでよ!」
「ごめんね!本当にごめんね!…このウロコは性能的には文句無しなんだけどね…素材が強すぎて並みの素材では繋ぎ合わせることすらできないんだ…」
…ウソでしょ。
「じ…じゃあ…ビキニアーマーは…」
「大丈夫!あと1つだけ素材があれば作れるから!」
あと…1つだけ…。
あと…1つだけか…はあ。
「ただね…今回も一筋縄ではいかない相手なんだ…」
「も」って…。
嘆きの竜並みに厄介な相手ってことよね?
…まさか…。
「…ソレイユ?」
「違う違う」
じゃあ…消去法で…。
「…地獄門のケルベロス?」
店長さんは神妙な顔をして。
「…そうなんだ。三冠の魔狼のヒゲが必要なんだよ…」
三冠の魔狼…ですか…。
「強さでは嘆きの竜と同等だと言われている…」
まあ…でも三冠の魔狼なら…。
「三冠の魔狼ならサーチが頼めば大丈夫だろ」
「…そうですね。三冠の魔狼なら…」
うーん…あまり頼み事はしたくないんだけど…仕方ないか。
「え?君達三冠の魔狼なら何とかなるの?」
「そりゃあそうだろ…」
「なんてったってサーチは…」
「「三冠の魔狼のつがぶべっ」」
「…余計なことは言うなって言ってるでしょ」
「「…ごべんばばい…」」
…店長さんはひたすら「?」を浮かべていた。
「…サーチ!」
あ、やべ。
考え事してた。
「ごめんごめん。何だった?」
「三冠の魔狼と連絡とれないかって言ってたんです」
…えー…。
『そんなに我と会話をしたくないのか?我が番よ』
「「…え?」」
ほーら…そういうこと言い出すから来ちゃったじゃない…。
「…こっちからわざわざ会いに行ってやってんのに、あんたが来てどうすんのよ…」
『久々に我が番の顔を見られるのだ。何処へでも馳せ参じようぞ』
「はいはい嬉しいわ…あれ?」
「「ガクガクブルブル…」」
「ちょっと!そのムダな威圧どうにかしなさいよ!私の親友を怖がらせたら承知しないからね!」
『む…?…それはすまぬな…』
三冠の魔狼はそう言うと、徐々に縮み始めた。
そして…。
『……「む…む…あー…』あーあー。よし、こんなもんか」
「…最初からその姿で出てくればいいのよ」
「ははは…違いない。この格好では久しぶりだな、サーチ」
「…そういえばそうね…久しぶり」
三冠の魔狼。
明日から新章です。




