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第二十一話 ていうか、骸骨仮面との戦いで苦戦しまくり。

 それからは三人とも、危なげなく勝ち進んだ。

 何回も組み合わせが変わる特異なトーナメントではあったけど、エイミアとリジーは無事に本大会出場権を獲得した。


「やったなエイミア!」


「えへへ〜……ありがとうございます」


「私も誉めて誉めて」


「……昨日イヤってほど誉めてやったろ」


「誉めて誉めて誉めろ」


「わかったよ! よくやったよくやった」


「リル姉、投げやり」


「ウゼえええええっっ!!」


 リルとリジーの漫才を見て笑っていたエイミアが、私の方へ向き直る。


「……サーチは明日でしたよね」


「ん? そうよ。相手は確か……ホネホネ伯爵だったかな?」


「スケルトン伯爵ですよ! 帝国貴族の中で、優勝候補の筆頭です!」


 あ、スケルトンか。ていうか、いいじゃない。スケルトンもホネホネも似たようなもんだし。


「今日はサーチの組の練習日でしたよね? 見に行かなくてもよかったんですか?」


「行かないわよ。もしホントに優勝候補と言われるほどの実力者なら、公開練習なんてするワケないわ」


 それに偵察はしなかったワケじゃないし。見事に気づかれて逃げられただけで。


「でも肩慣らしくらいはした方がいいんじゃないんですか?」


 私はニヤリと笑って。


「そう? ならエイミアが徹底的に(・・・・)付き合ってくれるんなら」


「え゛っ」


「冗談よ。何でそんなに顔が引きつってるのよ」


「……サーチ姉の徹底的(・・・)は恐怖の代名詞」


 何よそれ!


「ま、エイミアとリジーが厳しいのなら私が付き合ってやるよ。サーチの徹底的(・・・)についていけるのは私ぐらいだしな」


 ……ふうん。


「わかったわ……よ〜くわかったわ。なら絶望的(・・・)にやりましょうか」


「え゛っ」


「ほらほら、リル行くわよ。関節の二、三()箇所は外れる覚悟はしなさいね」


「ちょっと待て! 一桁多いぞ……いや、一桁多くなくてもイヤだけど!」


「ほらほらほら」


 ズルズル


「ウニ゛ャアアアアア!!!」


 エイミアとリジーは抱き合いながら……。


「「成仏してね、リル……」」


 と呟いた。


「あ、リルがヘバったら(・・・・・)あんた達の番だからね?」


「「……ガクガクブルブル……」」



 そんないつも通り、平常運転な次の日。


「……相手はまだ来てないみたいですね」


「まだ時間は……あるわね」


 装備品の確認をしながら待機することにする。


「サーチは結局≪偽物≫(イミテーション)は一度も使ってませんよね?」


「そりゃあね……『切り札は先に見せるな。見せるなら奥の手を持て』っていう有名な言葉もあるし」


「へえ……誰の言葉なんですか?」


 リジーに種族的に近い赤髪の人です。


「あ、来たぜ。スケルトン伯爵だったか」


「……わ……あ」


 すげえ。


「……スケルトン伯爵って偽名なのかな」


「いえ、本名です。あれ(・・)は戦うときの衣装なんだそうですよ」


「……リル姉のニャンコ仮面に負けてな」

 がしっ!

「リジーぃぃ……ちょおっとお話しようか?」

 ズルズル

「たーすーけーてーー」


 ……あの二人は無視して。


「……あのまま戦うのかしら……」


 スゲえ気になる。だって……骸骨の仮面(・・・・・)被って出てきたのよ、対戦相手……。



 結局入場した時だけで、仮面は外した。入場してくる時のモンタ師匠もああいうの被ってたっけ。


「我がスケルトン家に伝わる〝敗北の骸骨〟を見てしまった君は、すでに敗北が決まっている」


 きゃああああああ!!


 ……スゴい歓声。

 ニャンコ仮面と同じで、仮面系は人気あるのかしら。


「真剣勝負よ、スケルトン仮面!」


「誰がスケルトン仮面だ!!」


 違うの? まあいいけど。


『それでは始め!』


 スケルトン伯爵は細剣(レイピア)を抜いて構える。私は短剣を両手に持ち、左手だけ逆手に構えた。


「……はあああ!」


 早い!


 キインッ


 ギリギリで突きを弾く。右側の短剣で反撃を……。

「は! は! はあ!」

 ビュビュ!

 キン! キキン!


 く……早くて受けきれない! 左側に転がって距離を取る。

 流石に連続突きは持続できないらしく、スケルトン伯爵は深追いしてこなかった。


 うおおおおおおお!!!


 何よ、この歓声!? 私、何かしたの?


「僕の初撃を無傷で耐えたのは、君が初めてだよ」


「そりゃどうも。けっこう危なかったけどね」


 なるほど。スケルトン伯爵は初撃で相手を仕留めるタイプか。


細剣(レイピア)は突き専門の武器。突きしか来ないとわかっているなら、捌くのもわけないわ」


「……ふふふ。そう簡単にいくかな?」


 再び突きを繰り出すスケルトン伯爵。私は右に避けて斬りかかっ……っ!


 ザシュ

「……く!」


「確かに細剣(レイピア)は突きをしやすいように作られた武器だ。だが剣である以上、斬る事ができないわけではない」


 脇腹をやられたけど……浅い。


「でも……致命傷には至らないわね」


「そうだな。だが動きは鈍る(・・・・・)だろう?」


 ちぃ! 斬るのはあくまで補助的役割。突きで相手を仕留めるための布石か!


「まだまだ行くぞ!」


 剣が軽いだけに、斬撃が早い! これは苦戦必至か……!



「はあ……はあ……」


 ポタポタ


 出血がひどくなってきた……仕方ない、≪偽物≫(切り札)を使うしかないか。


「……全身傷だらけだが……まだ降参しないかね?」


「浅い傷をいくらつけたところで、私には勝てないわよ」


「ふうむ……若いのに相当な修羅場を潜っておるな」


 そりゃあね。人生二度目だし。


「だが、これで終わりだ! 出血と疲労で動きが鈍くなったお前には、もう避けることはできまい! はああああ!」


 一番最初に放ってきた連続突きが私に迫る。


「お生憎様! ここまで剣筋を見ていれば速さにも慣れる(・・・・・・・)わ!」


 ≪偽物≫(イミテーション)でリングブレードを作り出し。


「たあ!」

 バギインッ!


 心臓に迫っていた細剣(レイピア)を挟み折った。


 カラン……


 折れた剣先が地面に転がる。スケルトン伯爵は折れた細剣(レイピア)を見てニヤリと笑い。


「……まさか僕の突きの速さに慣れるために、今まで防戦に徹していたとはね……」


 剣を投げた。


「……僕の負けだ」


 わああああああっっっ!!


 この瞬間、今大会一番の歓声が会場を包み。

 私の本戦出場が決定した。



「痛い痛い! もっと優しく治療してほしいんだけど!」


 試合後、回復魔術士が傷の治療をしてくれてるんだけど、妙に痛い。何でよ!?


「まあまあ。アタシ自ら治療してあげてんのよ。痛いのくらいガマンガマン♪」


 !!! こ、この妙に明るいノリは……!


「ソ、ソレイユ!?」


「ぴんぽーん……ようやくわかったのね♪」


 私がケガした時の担当が、何故か同じ人ばっかだから変だとは思ってたけど……。


「な、何でここに?」


「ん? 無事に≪絶対領域≫(アルティメットゾーン)を修得できるかどうか確認してたんだけど…エイミアは合格ね!」


 ……やっぱ私はまだまだか。


「さあてと。本戦に入る前に一度みんなに集まってほしいな」


「……どしたの?」



「この大会に出てもらった、()の目的を話そうと思ってね」

あと二三話で新章です。

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