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第七話 ていうか、ギリギリル登場!

少し差別用語が出ます。不快な方はスルーしてください。

 ハーティア新公国に関しては情報が少なかった。たぶんだけど、意図的に情報操作がされているんだと思う。かなり巧妙だったけど、いくつか痕跡も確認できた。

 せいぜいわかったことと言えば……エイミアが入手してきた名簿の裏付けくらいなものだ。

 他の部署の責任者の名前も確認できたけど、やっぱり男と思われる名前がなかった。ハーティア新公国は普通じゃないくらい、女性の社会進出が進んでる国なんだろうか……。

 その後、大きな事件が起こることもなく日は過ぎ、ついに予選トーナメント初日を迎えた。



「あいつらは〜〜……どこほっつき歩いてるのよっ!!」


 朝。

 結局リルとリジーは来なかった。


「あと二時間しかありませんよ!」


「……仕方ない! 棄権ってことにするしかないわね」


 そう言って大会本部に向かおうとしたとき。


 ガチャッ


「遅れた遅れた。ごめんなさいごめんなさい」

「「リ……リジー!!」」


 ギリギリ間に合ったー!



「……今、何てった?」


「だから。リルはかなり日にちがかかる」


「な、何でよ! よりによってリルのほうなの?」


「私来たらまずかった?」


「違う違う。トーナメントの順番がリルが今日なのよ!」


「あ、なる」


「それより、リルはどうしたのよ!」


「わかったから今説明する……リルと私、マーシャンに送ってもらった」


 そうよ! そうなのよ!


「何でマーシャンの転移魔術で送ってもらえるはずなのに……」

「サーチとエイミア送った時点でMPを使い果たしていた」


 ……あ!


「そうか……! 転移魔術にはMPバカ食いっていう制限があったんだっけ……!」


「そう。だからマーシャンはハクボーンの人魚の……何だっけ」


「オシャチ?」


「そう! オシャチオシャチ! あとその配下の人魚を含めて全員の魔力吸い取った(・・・・・・・・・・)


「…………吸い取っちゃったの…………」


 嬉々としてオシャチや人魚達にダイブするマーシャンが浮かぶ……。


「人魚達、全員足腰立たなくなってた」


「そういう情報はいらないから!」


「そう? で、マーシャン魔力回復して転移魔術使った……そしたら」


「「……そしたら?」」


「私達を違った場所に置いてマーシャン消えた」


 ……マーシャン……またやったの……。


「……どこに?」


「〝嘆きの山〟の中腹」


 ………………………………………………おい。


「…………大丈夫だった?」


「……うん。何もなかった」


 よかったあああ!

 嘆きの竜(ローレライ)を刺激せずにすんで、ホントによかったあああ!


「……流石のマーシャンも真っ青だったでしょうね……」


「ううん。大丈夫大丈夫って言いながら大笑いしてた」


 あのバカはこの世界を滅ぼす気か!?


「……まあいいわ。嘆きの竜(ローレライ)が怒りだしたらマーシャンに生け贄になってもらうから」


「それでリル姉のことだけど……」


「あ、ごめんなさい……で? リルはどうしたの?」


 リジーは神妙な顔をした。


「昨日、リビングアーマーと遭遇して戦闘になった」


 リビングアーマーか……個体ごとで強さにばらつきがあるから、厄介なのよね……。


「そしたらリビングアーマーの一体が、変わった呪われアイテムを持ってた」


 ………………。


「で、そのリビングアーマーが逃げたので追っかけてたら」


「リルとはぐれた……とでも言うのかしら?」


「当たりたたたたたたたた」


「当たりじゃないわよ! あんたが呪われアイテムに釣られて、はぐれたのが原因じゃないの!」


「いたたたたたたたたたた」


 ……ホントに痛いのかわかんないわね……。



「……あんたが着いたんならリルも近いかと思ったけど……」


「……駄目ですね……近くにリルはいません」


「ていうか、エイミア。リルを判別できるの?」


「はい。耳のもふもふのせいでんきで」


 ピンポイントな静電気ね!


「近くにいないのなら間に合わないわね……やっぱり棄権するしか……」


 でもリルも頑張って特訓してたのよね……。


「バカリル……早く来なさいよ……来ないんなら、私が代わりに出てやるんだから……」

「サーチ姉……」

「サーチ……」


 ……もう……。


「……あ」


 リジーが突然立ち上がった。反応的に頭の上の電球が光ったイメージだ。


「代わりに出ればいい」


「「は?」」


 代わりに出る……って、まさか!


≪化かし騙し≫(トリック)で!?」


「そう。リル姉に化けて代わりに出ればいい」


 ……なんて突拍子もない……。


「……それしかありません。仕方ないです! やりましょう!」


 おいちょっと待て。


「わかった。私の≪化かし騙し≫(トリック)の精度なら一日くらい余裕」


 待たんかい、こら。


「でもそうなると……リルと同じように徒手空拳で戦える人じゃないと……」


 どう考えても。


「……サーチ!」

「……サーチ姉!」


「あーそうよね! そうなると思ってたわよ!」



「やる意気込みは良い。リルを助けたい気持ちも良い。それよりも!」


「……何ですか?」


「……絶対にバレないって言い切れる?」


「そ、それは……」


 どちらにしてもこのままではリルは100%失格だ。だから試してみる価値はあるかもしれない。

 ただ。


「……バレたら私とリジー、下手すれば同じパーティという理由で、エイミアまで処罰の対象になるわよ」


 当然のように大会の出場権は剥奪。


「それだけの代償を払うことになりかねない……ということを踏まえて。それでも……やる?」


 私が二人の覚悟を試す。

 すると。


「やります!」

「私の≪化かし騙し≫(トリック)は見破られることはあり得ない。やる」


 ……即答でした。

 まったく……何にも考えてないんだから。嬉しいような、悲しいような……。

 でも。


「わかった。やりましょう!」


 ……私も同類だ。



「サーチ姉。遠慮する必要はないから存分に暴れて。絶対にバレないから」


 ……リジーから術をかけてもらって予選に参加したんだけど……。


「……誰もサーチ(わたし)だと気づいてないみたいね」


「すごい……声までリルの声に変わってます」


 ……エイミアが言うなら間違いないか。


「あとは口調だけ気をつけてください……いよいよですよ」


「それでは予選の二回戦。リルとウルスは前へ」


 私と……どうやら貴族の下っ端らしく、妙に身なりがいい男が上がってきた。


「ちっ! 何で帝国貴族のボクが汚ならしい(・・・・・)獣人なんかと……」


 ……私自身は獣人じゃないけど……めっちゃイラッとしたわ。


「両者、礼!」


「……ふん」


「…………」


「……おい」


「……何だよ」


「ボクはともかく……お前ら獣人が頭を下げないとはどういうことだ! 無礼にも程がある!」


 ん〜……リルならこういうときなんて言うかな……私が考え込んでいると。


「おい、審判。この下賤な輩は人間の言葉がわからんらしい。つまみ出せ」


 ……むかっ。


「……おい、審判。この下賤なサル(・・)は人と会話する能力すらないらしい。野生に帰せ」


 ……あ、貴族の男がめっちゃ怒ってる。


「……殺してやる……殺してやる!」


 きゃー、ヘンタイー、助けてー。


「……始め!」


「うりゃあああ!」


 ……男が儀礼剣を振り上げてドタドタと走ってくる。


「えい!!」


 私を両断したいのか、そのまま振り下ろす。けど、あまりにも遅い。


「……えい」


 足を払う。


「うわっ! ぐひっ」


 ……見事に転ぶ。そんな歌が、昔にあったわね。

 そのまま首筋に手刀をいれて終わろう……。


「く! 下等生物が何をしてくれるか!」


 ……やめた。

 とりあえず脇腹を思いきり(・・・・)蹴る。


「ぐほお!」


 背中を思いきり(・・・・)蹴る。


「ぅはあっ!」


 腹を思いきり(・・・・)踏む。


「ぐぼ!」


 左足を思いきり(・・・・)踏む。


「ぐぎゃあ!」


 いちいち説明するのもめんどい。蹴る、踏む、蹴る、踏む……。


「ぎゃ! ぐっ! おぼ! うあ! や、やめ! やめでうぎぃ! やめてぐれぎあ! うぎゃああ!」


「止めろ! 勝負ありだ! おい、止めろおおっ!」



「ふう……勝った」


 ……?

 なぜかエイミアがドン引きしてるみたいだけど……?


『なんという凄惨な試合展開だ……!』


 ん? 実況?


『さすがは〝深爪〟のリルと渾名される冒険者だ! 試合内容も拷問そのものと言える展開でした……!』


 ……あ。

 ヤバい……やり過ぎた。

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