表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
148/1883

第四話 ていうか、何だか尾行されてるみたい。

 いや〜、個人的にだけど憧れてた冒険者に出会えたから、めっちゃハイテンションだわ。


「じゃなきゃエイミアをどっかに捨ててたかもね……あー重い!」


 ムリヤリにでもテンション上げないとやってられないのよ! 酔いつぶれて寝ちゃってる人って、何でこんなに重たいのかしら……ていうか、おんぶしてるせいで背中の感触(・・・・・)がモロだし。

 男の人なら嬉しいんだろうけど、私的には苛立ちしか感じないわ!


「はあー、はあー……『体力』の数値が低い私には地獄だわ…」


 “刃先”(エッジ)に手伝ってくれって頼むべきだった……。



「ひぃ〜、ひぃ〜、ふぅ、はぁ、はぁ、つ、着いたあ…」


 あれから一時間くらい、休み休み這うようなスピードで、何とかたどり着いた……。


「はあ……はあ……とにかく、部屋に放り込まないと……」


 半分引き摺るような状態で部屋の前までいき、蹴破るつもりでドアにクリティカル。


 ばぁぁん!


「ん〜にゃあ…もう飲めないのら…」

「たく…いい気なものよね…」


 今度絶対に何か奢らせる! そう決めながらエイミアをベッドに投げ込んだ。

 外れたドアを直し、厳重にロックして外へ。そのまま私は裏へまわり気配を消す。しばらく周囲に溶け込んで、下手な尾行をしてきた連中を待ち受ける。


 タッタッタッ……


「おい、どこ行きやがった!!」


「クソ! 完全に見失ったぞ!」


 冒険者じゃないわね……貴族の衛兵かな?


「この辺りに潜んでいるかもしれん! 手分けして探せ!」


 そう言って散開する衛兵達。バカねぇ……これじゃあ私の独壇場じゃない……ウフフ。



 ガンガラガンッ!


「クソ……何でこのオレがこんな下っぱがやるようなことを……」


 何かブツブツ言いながらゴミ箱を蹴飛ばしている。あーあー、注意力が散漫になってるわよ。


 スタッ

「やってらんねえ」

 ブスッ

「がっ! ぐぶぅ」

 ……ドサッ


「口から鮮血~♪ 一丁あがり〜」


 うーん、簡単すぎて準備運動にもならないわね。


「あと五人。さっさと片付けて、お風呂入ろうっと♪」


 私は再び闇に紛れ込んだ。



「アルフー!! ガイー!! ちくしょう! 一体何が起きてるんだ!?」


 あらあら、いつの間にかひとりぼっちなのね。


「うう……一旦引き上げるしかないか」


 ちょうどいいわ。あんたを逆に尾行すれば、黒幕もわかるし。


「しかし部下の行方がわからん以上は戻るわけにもいかないし……どうしよう……」


 これって絶対に優柔不断なヤツね。時間かかりそうだなあ……さっさと片づけちゃおかな。


「ううむ……見捨てることはできん……だが……」


 よし、殺ろ。


 スタッ

「むっ、何奴……がはっ!?」


 ≪偽物≫(イミテーション)で作ったトンファーで肩を殴りつける。怯んでいる間に首筋に針を突きつけた。


「動かないでね?」


 私の声と針の感触で事態を悟ったのか、言われたとおりに固まった。


「はい、いい子ですね」


「ぐ、馬鹿にするな! 私にこんなマネをして、タダですむと思うなよ!」


「それはあんた次第よ。ま、あんたの仲間みたいになりたくなければ、おとなしくするのね」


「私の仲間? まさか……部下達は無事なんだろうな!?」


「……あんたね、か弱い乙女を尾行するような変態、無事で帰すと思う?」


「な……まさか!」


 部下が死ぬ可能性を考えてなかったわけ?


「今頃は仲良くあの世へ向かってるわよ……あなたも後を追いたければ、喜んで協力してあげるけど?」


 そう言って針を少ーしだけ突き刺す。


「ひっ!?」


 男は崩れ落ちて。


「た、頼む! 命だけは、命だけは助けてくれえええ!」


 命乞いを始めた。


「それはあんた次第だって、さっき言ったでしょ。私の質問にちゃんと答えなさい」


「わ、わかった……」


「じゃあ単刀直入に聞くわ。あんたのご主人様は誰?」


「………」


「あーあ。針ってどうしてこんなに重いのかしら。手が疲れてきちゃったー。手元が狂っちゃうかもねー……こんなふうに(・・・・・・)


 少しだけ針を深く刺す。


「う……うあああああああああ!! アプロースだ! アプロース公爵家だあああ!!」


 あっさり吐いたわー、楽でよし。


「ありがとう。最初からこれくらい協力的なら死なずに済んだのにね(・・・・・・・・・・)

 ブズズッ

「え……ぁ……」


 男はあっさりと事切れた。ていうか、最初から生かして帰すつもりはなかったんだけどね。


「それにしてもアプロース公爵家か……公爵なんだから当然大物よね」


 私自身が帝国のことを知らなさすぎるわ。


「……明日は一日かけて情報収集ね」


 まずは闇ギルドから当たるか。明日の予定を考えながら後片付けを始めた。



 次の日になっても配下の兵士達が帰らなかったアプロース公爵家では、怪しい雰囲気を漂わせる人間の出入りが多くなっていた。


「現皇帝の義理の父親か……そりゃ大物どころじゃないわね」


 朝一番に闇ギルドで聞いた情報で、アプロース公爵家の権勢の規模が確認できた。いきなりのラスボス登場とは思わなかったけどね……。


「当主のハイリッヒ・ヴァン・アプロースは典型的な権力の亡者。皇帝へのゴマ擂りと下の者へ威張り散らすことしかできない」


 闇ギルドでの情報では今の当主はただの俗物っぽい。家の権力だけが取り柄みたいね。


「子供達はとことん甘やかされて育ったため、父親と似たり寄ったりか」


 よく潰れないわね、この公爵家。


「となると……大会に出場する長男のための露払いってわけか」


 本拠地に忍び込んで天井裏で盗み聞き……なんて時代劇でよくあるヤツをやってみようと思ったんだけど……必要ないわね。わざわざ危ない橋を渡ることもないし、退散退散。


『……ーチ……サーチ……』


 ん? 念話水晶?


『サーチ! サーチってば!』


 エイミアか。


「はいはい、どうしたの? 何か掴めた?」


 エイミアには元貴族の伝を辿ってもらって、帝国貴族から情報を集めてもらってたのだ。


『すいません、今回は私の伝は使えません。かなりマズい状況です』


「……何があったのよ」


 まさか、エイミアに危険なことが!?


『実は……父が帝国に来ているらしいんです』


 ……はい?


「何で?」


『わかりません! でも間違い無く父が来ています! 見つかったら絶っ対に面倒なことになります!』


 ホントにめんどくさいことになりそうね。


「仕方ないわ、とりあえず引き上げて。まだ見つかったわけじゃないわね?」


『はい……今は仲が良い公爵家(・・・)にお世話になってるみたいですから、私には気付いていないかと』


 ……はい?


「……公爵家?」


『はい』


 ちょっと……勘弁してよ。


「どこの公爵家?」


『どこのって……帝国で公爵家なんて一つしかないですよ?』


 ああ……アプロースなのね……つまり。


「ここにいるわけね」


『ここって……まさかアプロース公爵家に居るんですか!?』


「そのまさかよ。おまけに今回の黒幕確定」


『……めんどくさ……』


 激しく同意するわ。



 このタイミングでエイミアの父親が帝国に来てるって……偶然なわけないよね。

 ホンットにめんどくさい……。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ