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第二話 ていうか、エイミアと敵を視察。

 組合わせ抽選会が終わって日程も公開された。


「リルは初日かあ……」


 一日に十二試合消化していく日程だから……。


「私が二日目の一番最初の試合、エイミアが四日目の最初よ」


「予選トーナメント開始は三日後……ふああ、今から緊張してきました〜……」


 ……今からガクブルしてどうすんのよ……。


「さて……私はもう少し会場にいるけど、あんたはどうする?」


「会場にって……あ、そうですね。私もサーチと一緒にいます」


 ……ふーん……私の意図を汲んだのかしら。


「わかった。じゃ、行こ」



「ほら、あそこ」


「あ、私の対戦相手ですね」


 会場にはいくつか闘技場があって、練習ができるように開放されている。

 ただし試合以外で負ったケガは感知しません、という条件つきで。


「ケガはしないようにやってるみたいね……危なっかしいけど」


「そうなんですか?」


「例えるなら……大振りエイミアが『寸止めできますっ!』って言い張って、本気で戦ってる感じ」


「何で私を例えに使うんですか! わかりやすいんですけど! ですけど!!」


 なんか不満があるみたいだけどスルー。


「ま、大丈夫よ。あれなら余裕じゃない」


「ん〜……どうなんでしょうか……」


「……私と対戦相手(あっち)とどっちに勝てそう?」


「そりゃあ比べる間でもないです」


「エイミア。あんたは私にも勝ったんだから(・・・・・・・・・・)大丈夫よ。自信持ちなさい」


「……はい。わかりました」


 さて、次は私の対戦相手はと。


「…………いました。奥から三番目の」


「……ああ……あれ」


 私の対戦相手は、格下の相手になってあげてる感じだった。

 ……なかなか身のこなしはいいけど……。


「ムダな動きが多いわね。避けたときにあと半歩前に着地してれば、倍は早く対処できるのに」


 どうやらナイフの二刀流みたいだけど……。


「……あの戦い方なら短剣二刀流の方がいいわね。ナイフで攻撃を受けるのは割に合わないから、避けたほうが効率いいし」


「あっちの方が私は勝てそうな気がします」


「かもね」


 ま、どちらにしても……こんなまる見えな場所で(・・・・・・・・)訓練してるようじゃダメね。


「……やっぱクラスの高い冒険者はいないわね……仕方ない、行こ」

「はい」


 それじゃ帰りますか……と会場を出ようとすると。


「へへへ……」


 私達の行き先を大柄な男が遮った。


「よし、袋のネズミだな……」


 私達の背後を三人の男が囲む。


「……何か用?」


「ん? いやあな、この辺りじゃ見かけないツラだから、挨拶くらいしとこうと思ってな」


 ウザ。


「挨拶ですか? わかりました。はじめまして、エイミアです」


 エイミアが天然で返すと後ろの男達が失笑した。


「ふふ、これであいさつは終わったわ。じゃね」


 そのままエイミアを連れて通り過ぎようとする。


「はあ!? ふざけてんじゃねえよ」


 大柄な男が私に向かって手を伸ばす。

 が。


「!? とと……ありゃ?」


 男の手は空を切った。


「どこに……おい! 待てよ、お前ら!」


 しつこいわね。エイミアを離れさせると、再び伸ばしてきた男の手を掴み。


 ぐるんっ

 バタン!


「かは……!」


 男の身体は空中で一回転し、地面に叩きつけられた。


「な、何しやがった!?」

「もう手加減抜きだ! やっちまえ!」


 残った男達が武器(えもの)を取り出す。

 そして私達に斬りかかる……はずだったが。


「うっ!」「がっ!」「な……!」


 ……男達の足が止まった。


「……どうしたの? 入ってきていいのよ? 私の領域に(・・・・・)


 死にたければね。


「ぐ……!」


 男達が冷や汗を垂らしたとき。


「何をしている!! ここでの戦闘は禁止だぞ!」


 警備隊が騒ぎを聞きつけてやってきた。


 タタタンッ


 その間に男達の意識を刈り取って、転がしておく。


「何が……あったんだ?」


「こいつらがスケベな顔をして迫ってきたのでシメておきました(・・・・・・・・)


「……お前達は?」


「私はサーチ。この子がエイミアです」


「パーティか?」


「はい。竜の牙折り(ドラゴンブレイカー)というパーティを……」


「何……竜殺し(ドラゴンキラー)の?」

「まさか獄炎谷(フレイムキャニオン)を攻略した!?」


 おお……やっぱり何だか有名になってきてる。


「わ、わかった……もう行っていいぞ」


 膝がガクブルになってるヤツに言われても、迫力のカケラも無いわね。


「あそ。じゃ、あとはよろしく〜♪」


 そう言って無料のスマイルを振りまきながら歩き去った。



「あの……サーチ」


「何?」


「よかったんですか? サーチの手の内見せちゃって」


「……あんた気づいてたの?」


「え、だって。あからさま過ぎませんでした?」


 エイミアが気づいてるとは思わなかったわ。ちょっとは成長してたのね、胸以外も。


「……サーチ……」


 顔が険しい。また気づかれたのかな。まあサクッと無視して。


「知られて困るようなものじゃないしね」


「そうなんですか?」


 私の場合は知られても防げない(・・・・・・・・・)から問題なし。


「問題は……誰の差し金かってことね」


「私達が特別注目されるようなパーティだとは思えませんし」


 うーん……一応獄炎谷(フレイムキャニオン)を攻略したことになってるから……その辺りが探られる要因だろうか。


「……考えても仕方ないわ。とりあえず旅館へ退散しましょ」


「……わかりました。汗かきましたからお風呂に入りたいですし」


 エイミア! こういう場所でそういうこと言わない!


「「「………………」」」


 ……ほら……男共が無言で私達を注目してるじゃない……。



 旅館に戻るまでの間に、どれだけ尾行を撒いたか覚えてない……。


「あんたの余計な一言が原因よ! 少しは考えてしゃべりなさい!」


「いひゃい! いひゃい! いひゃい! ご、ごめんなさ〜い」


 ったく。

 エイミアの頬っぺたを離してから湯船に浸かる。


「……ふえ〜ん」


「そんなに強く引っ張ってないわよ」


「そんなに強くないのに、何でこんなに痛いんですか!!」


 これも技よ技。


「それより、始まるまで少ししかありませんよ……リル達は大丈夫なんでしょうか……?」


「大丈夫よ。信じて待つしかないわ……」


 ……たく。ホントに何してんのやら……。



 その頃。

 リルとリジーは。


「ぎゃあああ! 何で落とし穴の底からドラゴンが出てくるんだよ!?」


「ニャンコ先生の婆様、無茶苦茶だったと思われ!」


「ニャンコ先生言うなって何回言わせるんだあああ!」


『ほれほれ♪ 早くせんと大会に間に合わないどころか、ドラゴンのエサじゃぞ♪』


「「うっぎゃああああああああああああ!!!」」



 ……一応こっちへ向かっているが……無事に着けるかは微妙だった。

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