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第一話 ていうか、帝国のイメージダウンダウンダウン♪

 ワアアアア……

「○○が優勝候補……」

「△△絶対勝ってほしい……」

「え? 闘技大会興味無いなんてありえね〜」

「負けられない戦いがあるんだよ」


「どっかの世界のワールドカップかーー!」


 ……という個人的な突っ込みを言うわけにもいかず、ダラダラと続く開会式もどき(・・・)を耐えるしかなかった。



 半年の間の修行期間を終えて、帝都へやってきた私とエイミア。ブラックリバー闇ギルドのクリアさんのおかげで、出場登録は済ませてあったので。


「……始まるまでは特にすることないわね……」

「そうですね……ひとまずお昼ご飯を済ませますか」


 何とクリアさん、帝都での逗留先から簡単なガイドまで全て手配してくれていたのだ。実際の話、私達が帝都に到着すると同時に。


竜の牙折り(ドラゴンブレイカー)御一行様』


 ……というプラカードを持った人が待ち構えていた……というくらい。そのガイドさんが教えてくれた「帝都に来たなら、ぜひ食べてみたい名店十選!」の一つに行ってみることにした。

 ……何だか命のやり取りをしに来た雰囲気じゃないんだけど……。



 すっごく美味しそうなビーフシチューを食べるエイミアを横目に、私は必死にリルに連絡をしていた。


「美味しいですね〜」

「何で出ないのよ! あのバカ……」

「このとろけるような歯触り……はあ〜♪」

「ていうかエイミア! あんたもパクパク食べてないで、リルに連絡入れなさい!」

「は、はい! ごめんなさい〜」


 ……たく。

 私なんかまだ一口も食べてなかったのに……。


 パクッ


 ……あら、美味しいわ。


「リルー! リルってばー!」

「…………やっぱ出ない?」

「はい、何ででしょう……あれ? 私のビーフシチューが減ってる!?」


 ……意外と気づくもんね。


「一口もらっただけよ。私のパスタを少しあげるからさ」


「………………パスタで許した訳じゃないですからね!」


 ……と言いながらも、スゴくうれしそうにごっそり(・・・・)持っていくのね……。


「……炭水化物だから太るわよ」


 ピタッ


 私の一言で止まるエイミア。

 最近あんたが二の腕を気にしてることは知ってるんだからね。


「……う〜……………………大丈夫です! 私は栄養がいく場所は一部分がほとんどですから!」


 そう言って最近また大きくなった胸を叩いた。


 サアアア…………


 ……急に店内の体感気温が下がる。私の放った殺気にあてられて、鳥肌をたてる人が続出した。


「……私に対する当てつけかしら?」


「い、いいいいいえ違いますますますます」


 エイミアの一言を聞いてサッと殺気を霧散させる。


「ならいいわ。ビーフシチューをたっぷり(・・・・)もらうけどいいわね?」


「あ……」


「い・い・わ・ね?」


「…………………………どうぞ」


 ふん。私が楽しみにしてたチーズの部分を食べた罰よ。私は好きなモノは最後にとっておくタイプなんだよ!



「困ったもんだ……リル達と合流できないわね」


 一応リル達の分も旅館が押さえてある。キャンセル料が高いのは前世も今も同じだ。


「それも大事ですけど……あの独特な大会についても説明しておかないと大変ですよ」


 まったくよ。

 まさか帝国闘技大会がここまで偏った大会(・・・・・)だなんて知らなかったわよ!



 それが冒頭の開会式の内容だ。

 リル達の到着がやや遅れる、とだけ受付に伝えて開会式に出た私達だったが……はっきり言って異常だった。

 最初のうちは「ああ、普通によくある眠たくなる開会式だなあ……」程度だったのだが。


「続きまして出場者を紹介致します」


 ……と言い出した辺りから、変な方向へ向かいだした。


「まずは帝国貴族でも屈指の名門! アプロース公爵家の後継でありながら武術も超一流の……」


 といった感じで帝国貴族からの出場者を大々的に優勝候補として宣伝しまくり。


「きゃあああ! アプロースさまー!」

「ステキー!」


 ……見た目とは不釣り合いなほどの、大規模な応援団が貴族のボンボン(・・・・)一人一人にあり。


「さあ、帝国貴族の英雄達が、野蛮な冒険者達(・・・・・・・)下賤な獣人共(・・・・・・)を叩き潰す、華麗な姿をお楽しみ下さい!」


 ……気持ち悪いくらい冒険者や獣人を敵視していたり。


「獣人なんて出てけー!」

「冒険者なんてみんな殺っちゃってくださいー!」


 ……うわ〜……。

 ここまでくるとドン引きだわ……。



 ……こんな大会だ。

 冒険者で……しかも獣人のリルとリジーにはどんな反応(嫌がらせ)があるか……。


『早く出ていけ』

『冒険者ごときが大会に出るな』


 ……はあ。

 こんな低俗な貼り紙して逃げようとするアホがいるくらいだし。


「きゃあああ!!」

「助けてえ! 降ろしてえええ!」


 ……逃げられずに罠にかかるヤツもいるし。


「……あの人達どうするんですか……」

「……放置」


 やる気を削ぐことだけは一流の大会だわ……これ。夜のうちに新しい罠をいくつか仕掛けておかないとね……。



 次の日。

 まだ着かないリル達を待ちきれず、先に組合わせ抽選会場へ向かった。


「あいつら〜! 結局キャンセル料払うハメになったじゃない!」


「サーチ……まずはリル達の身の上を心配すべきじゃないですか?」


 私はエイミアを見ながらため息をついた。


「あいつらがどうかなると思う?」


「ん〜……思えないです」


「なら大丈夫よ。それよりエイミアの番近いわよ」


 組合わせ方法は至ってシンプル。

 くじを引く。

 引いた番号の場所に名前が書かれる。

 で、トーナメント表の完成だ。


「次。エイミアさん」


「は、はい!」


 別に慌てなくてもいいのに小走りで前へ行く。

 ……走るな。揺れる胸が恨めしい。


「えーと……はい」


「エイミアさんは……三十八番です」


 えーと……エイミアの対戦相手は……。


「おおっ! オレの相手あの子じゃん! ラッキーだな」


 あいつか。


「エイミア、手の内は隠しなさいよ(・・・・・・・・・・)


「わかってますよ」


 エイミアはニッコリと笑った。相変わらす破壊力抜群の笑顔ね〜……。


「次。サーチさん」


 はいはい、私ですよっと。


「おい、あのビキニアーマー……」

「げ! 竜の牙折り(ドラゴンブレイカー)のサーチじゃねえか!」

「え? 獄炎谷(フレイムキャニオン)を攻略した!?」


 ……私も有名になってきたのね……。


「間違いない! あんな露出狂は、そうそういねえ!」


 ……あとで滅殺。

 哀れな運命を辿ることが決まった男を一瞥してから、くじが入った箱に手を突っ込む。


「はい」


「サーチさん……十三番」


 うわあい! めっちゃ不吉な番号じゃん!


「ボクが相手だ。よろしく」


 ……何か爽やか系の美男子が相手なんですけど。

 ……めっちゃ好みで戦いにくいんですけど。


「さっきのエイミアって子には負けるけど……君も魅力的だよ」


 ……滅殺二号。


「次。リルさん」


 あ、リルの番だ。


「あ、すいません。事情があって遅れてますので、同じパーティの私が引いてもいいですか?」


「そうですか……仕方ないのでお願いします。ただし試合当日に間に合わなかった場合は失格となりますのでご注意を」


「わかりました」


 ……で、私が引いたのは。


 リル、四番。

 リジー、四十九番。


「……以上で予選トーナメントの組合わせ抽選会を終了します」



 やべえ……。

 エイミア以外、イヤな予感しかしない……。

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