ビキニアーマーで殺意を込めて 〜元アサシンは巨乳の夢を湯煙の彼方に見る〜

第八章 新大陸でEになる！

第二十二話 ていうか、結局全員参戦。

「あーいむなんばーわーんん！！」

　……勝った！

「目がっ！　目がぁぁぁっ！」

　毒霧を吹きかけられたリルがのたうち回る。

「指がっ！　指がぁぁぁっ！」

　指極め十字固めでさんざん痛めつけられたエイミアは、指を抑えて大泣きしていた。

　うーん……壮観。

「……何があったのか聞かない方がいいのかな？」

「……リジーも気を使うのね……」

「この惨状に首を突っ込むほど馬鹿じゃない」

「賢明ね。で、何かあった？」

「ニーナから連絡あったけど、サーチが忙しそうだったから(・・・・・・・・・)伝言頼まれた」

　げっ！

「……もしかして私の念話水晶に？」

「勝手に私が話をした。ごめんなさい」

「いや、それはいいんだけど……もしかして私達の……」

　醜態を見られた……とか？

「私の背後はバッチリ見られていたかと。あと音声は駄々漏れ」

　ぐぁ…………あとでニーナさんに謝っておこう。

「『とっても楽しそうね』って言ってた」

　…………絶対に謝ろう。

「また私から連絡はしておくわ……」

　こうして模擬戦は終わったけど……しばら〜く「目が〜目が〜」と「指が〜指が〜」とうるさいのには辟易した。

「……結局、出なきゃいけないわけね……」

　リジーからニーナさんの伝言を聞いたんだけど……冒険者全員強制っすか……。

　港に近いとこにいる冒険者は、今頃新大陸を脱出してることでしょうね……。

「サーチと私は出るつもりだったからいいけど……リジーはともかくエイミアも出るのか？」

「え、ええ！？　私も出なきゃいけないんですか！！」

「私は出る。絶対出る。是が非でも出る」

「わかったわよ……問題はエイミアね」

「なぁ。ギルドの決定かもしれねえけど、別に無視していいんじゃねえか？」

「私もそう思う。エイミア姉は不安」

　エイミアは激しく頷く。

「……私は出るのも『あり』じゃないかなー……と思うんだけど」

「「「…………え？」」」

「サーチ正気か！？」

「止めたほうがいいと思う」

「ムリムリムリムリぜっったいムリ！」

　全否定ですかい……。

「まあ、ちょっと話を聞いて。私も考えなしで言ってるわけじゃないんだから」

　私がエイミアの出場を推す理由、それはソレイユのオススメだから……というのが大きいかな。

　私自身が体感しているとおり、ソレイユの見る目は正確だ。もし私だけに大会出場を勧めるのなら、私にだけ直接言えばいいんだし……やっぱり私以外のメンバーも「出なさいよ〜」ということなんだろう。

　……以上のような理由を語ると。

「「「……それって強制……」だな……」よね……」

　何故に？

「……サーチはソレイユが勧めてきたことを無視できるか？」

　……なるほど。ムリだ。

「そうなるとエイミアを鍛えた方がいいか」

「そうね……何もしないよりはマシだし」

「でも訓練するなら、ビシバシやった方がいい」

「え〜っ！？」

　……エイミアはイヤそうね。でも訓練するんだったら……。

「ちょっといい？」

「何だサーチ」

「訓練するにしても、大会まであと半年もないじゃん？　今からビシバシバシバシやっても……伸びると思う？」

　エイミアだし。

「…………ムリだな」

「何で？」

「……エイミアの大振りを直せる自信あるか？」

「あー……ムリだ」

　エイミアはどうしても大振りしていまう癖がある。まあ武器が武器だから仕方ないんだろうけど……それにしても大振りなのだ。私とリルで何回も矯正してるんだけど……上手くいかない。

　最近はリルも諦めている感じだ。

「でしょ？　だからさ、今回は棍棒の訓練はなしで」

「……じゃあ何の訓練を………………って、もしかして≪蓄電池≫(バッテリーチャージ)か？」

「そう！　でも訓練するのは攻撃じゃないわよ」

「え？　え？　≪蓄電池≫(バッテリーチャージ)で攻撃以外ですかあ！？　…………あ、≪雷壁の鎧≫(サンダーブロック)ですか？」

「≪雷壁の鎧≫(サンダーブロック)なら……防御？」

「ん〜……防御ではないわ。戦う直前のことね」

「……てことは戦闘態勢を整えるってことか？　いや、その前に敵を事前に察知することか」

「ビンゴー！」

「「びんご？」」

　しまった…………何かはずみで言っちゃうわね……気をつけないと。

「古代語か？　古代語なんだな？」

　まーたリルがメモ帳取り出したしー！

「あとでちゃんと教えてあげるから！」

「わかった。あとで、だな？　絶対だぞ？　絶っ対だぞ？」

　あー……ウザい。

「わかったわよ……」

　……話が逸れるからホントに気をつけよ。

「で、エイミアの話に戻すけど。≪蓄電池≫(バッテリーチャージ)を使って、結界とか静電気を帯びたモノは探知できることはわかってるわよね？」

　みんな頷いた。けっこうお世話になってるしね。

「ちょっと前に試してみたんだけど、その探知を近場だけにする感じで、弱い静電気を広げてもらったんだけど……」

　そう言って私はエイミアを見る。

「え！？　は、はい、やりました！」

「けっこう周りのこと把握できたはずよね？」

「はい……リジーの手の動きは把握できたのは覚えてます」

　ああ、上げて下げてとかやってたヤツか。

「あれから訓練はしてきたけど……実戦ではまだよね？」

「……自信がなくて……まだ試してないです」

　……やっぱり。

「じゃあ一回試してみる？　リルとリジーにも協力してもらってさ」

「うーん……わかりました」

「じゃ、いきます……」

　エイミアは≪蓄電池≫(バッテリーチャージ)で静電気の膜を作り、徐々に広げていく。

　パリ……ビリビリ……

「エイミア、ちょっと静電気強い。もう少し弱くして」

「は、はい」

　パチッ

　……まだ強い感じだけど……その辺りは大会までの課題ね。

「どう？　何か感じる？」

「……はい……今ならサーチ達の立っている位置もわかります」

(リル、少し動いてみて)

「リル、少し動いてみて……と唇を動かしましたね」

　え！？

　リルと……リジーすら固まってる。

「あれ……全員何で動かなくなったんですか？」

「……ふう……スゴいわ。前より強力になってるじゃない」

　あ、何だかエイミア嬉しそう。

「そうですか！　毎日サーチが訓練をしてくれたおかげです」

　訓練……て言っても……「ダルマさんが転んだ！」の延長みたいなことしてただけだしね……。

　まあ交互にだけど。

「私も付き合ってもらってたんだから気にしないで」

「おい、サーチ。確かにスゴいとは思う。けど」

「わかってる。あれだけ静電気の膜を張るのに、時間がかかってるようじゃね……」

　敵が待ってくれるなんてことはあり得ないし。

「エイミア。今度からは常に膜を張り続ける(・・・・・・・・・)ようにしなさい」

「え゛！？　常にですか！」

「そう」

「ご飯の時も？」

「当然」

「一日ずっと？」

「当たり前」

「まさか……寝てる時にも？」

「そこまで出来れば合格で」

「マジですかーーー！！！」

　マジよ。

「ちゃんと私も付き合うから。がんばりましょ」

「…………わかりましたぁ…………」

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もうちょっとで新章です。