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第五話 ていうか、私の出番少なめ。

サーチ以外の視点もあります。

 私を鑑定してくれた鑑定士さんの視線が、何故か憐れみを含んでる気が……。



 私はギルドに勤めてもはや十年になる鑑定士です。一応それなりの地位にあります。

 私は魔術はからっきしで体術もあまり得意ではありません。ですから自分に与えられたスキルを磨いてきました。

 私のスキルは≪鑑定≫です。このスキルは名前のとおり相手の隠れた能力を見つけたりアイテムの名称・効能・価値を数値化して示したりできます。

 ただ、このスキルは土台となる術者の知識が重要となります。その為に私はありとあらゆる知識を頭に叩きこんできました。伝説上の英雄に纏わる逸話や毒の種類や治療方法等、役に立つのかわからないような知識まで。そのおかげか、私の≪鑑定≫スキルはギルド随一とまで言われるようになったのです。

 そして今日。私はクソジジ……失礼、ギルドマスターよりある女の子の魔術の鑑定を頼まれました。私の前に座った女の子はまだ駆け出しの重装戦士だそうで……特有の重い装備ではなく初心者用の革製品です。まだ金銭的に余裕が無いのでしょう。

 身長はやや低めで華奢な体格。なぜかガバガバな胸部には年相応の膨らみが……。


「うわ!?」

「どうかしたのか!?」


 な、何故か寒気が……?


「し、失礼しました」


 では気を取り直しまして……今回私が鑑定する少女の名前はサーチ。ギルドマスター曰く将来有望の新人だそうですが……≪鑑定≫ をかけた結果は、あまり芳しくないものでした。

 彼女の魔術……それは≪偽物≫(イミテーション)でした。この魔術自体はそんなには珍しいものではなく「自分が触れたことがある対象物を、自身を中心とした半径50㎝以内に作り出せる」というものです。対象物といっても作り出せるものは人によって様々。しかもかなり限られたものばかり。

 作り出せるものは確認されているものでも五つ。火、水、雷、土、そして金属。

 金属以外ならまだ属性攻撃としての用途はあります。格闘家などではよく重宝されています。ただ金属はいただけない。

 ほぼ全ての金属を再現できますが……あまり使い途がないのです。半径50㎝以内しか再現できない、という制限がネックで、≪偽物≫(イミテーション)でナイフを作り出して投擲してもすぐに消えてしまう。アサシンが即興で武器を作り出す、つまり武器を隠し持つ必要がない……くらいしか有用な用途は考えられないはずれ(・・・)魔術です。彼女の≪偽物≫(イミテーション)はまさにそれなのです。

 彼女……サーチさんのような重装戦士には特に使い途が無い魔法でしょうね……せっかくギルドマスターが才能を認めてくれてるのに……お気の毒です。

 しかし、これが私の仕事。伝えるしかありませんね……。



 鑑定結果を伝えられたとき、何故かエイミアの視線にまで憐れみが……。



 私、エイミア・ドノヴァンはサーチの友達です。

 一応、下級貴族のドノヴァン家の出身です。母が侍女だった為に私の立場は微妙で……母が亡くなってからそれは更に顕著になりました。

 ある時、腹違いの兄に入浴中に襲われたことがきっかけで、ドノヴァン家に見切りをつけて飛び出しました。

 あ、兄は黒焦げにしちゃいました……つい。

 そして職を求めて隣町のギルドに向かうことにしました。その時にサーチと出会ったんです。町の入口で妙なダンス(?)を踊っているのを見たのが最初でした。

 何だかんだで話が弾んで……気が付いたら私から「お友達になりましょう」と声をかけました。

 実を言いますと、初めての友達だったんです。本当に嬉しかった……。

 でも、サーチはこれからギルド養成学校に行くとのこと。何となく離れたくない、と思ってしまった私はつい「私も」と言ってしまいました。でも、ここで初めての友達と離れるのは嫌です。こうなったらドノヴァン家秘伝の血族スキル≪蓄電池≫(バッテリーチャージ)を最大限利用します。稀少スキルですからギルドマスターも無下にはしないでしょう。

 そして、私の目論見通りにギルド養成学校へと入れることになりました。嬉しい……これでこれからもサーチと一緒に居られます。

 だけど……サーチには悲しい現実が待っていました。彼女の魔術は≪偽物≫(イミテーション)だったのです……。

 ……。

 私が……。

 友達の……私が……助けなきゃ。サーチと……一緒に……頑張らなきゃ。


 

 何か気になるけど……まあいいか。ていうか、ようやく私の魔術がわかったんだし。≪鑑定≫してくれたギルドの人から説明を聞くうちに。

 私は……理解した。


(これ……メチャクチャ私にピッタリじゃないの!?)

他の二人とは違う見解のサーチです。


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