表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
138/1883

第十九話 ていうか、闘技大会出場決定。

 帝国格闘技演武大会。

 結構あちこちで開かれていそうな武術の大会ではあるが……意外とこの世界では少ない。

 理由はいくつかあるけど、最大の理由は「ギルドが協力を拒む」ことかな。

 ギルドにしてみたら、貴重なA、Bクラスの冒険者を同士討ちで失うなんてもってのほか。それぐらいなら「ウチは参加しねえんだよ」という姿勢を明確にしておけばいい……ということだ。

 それ以外にも「こういう大会って勝つヤツは、だいたい同じなんだよね……」とか「戦争中にそんな余裕あるわけねーだろ!」とか、様々な理由があげられる。「開催しても優勝するメンツ、だいたい一緒だから賭けも成立しにくいしな……」とも言われるそうで。そりゃあ誰も開催したくなくなるわけよね…………そんな中でも律儀に毎年毎年飽きもせずゲホゴホ……開催しているのが帝国なのだ。

 初代皇帝が遺言で「必ず続けろ!」とか言ったとか……迷惑な話よね……。

 ていうか、その遺言が原因で段々と帝国は傾いてきてんだから……。



「…………これは……私達に出ろって言いたいのかしら……」


 はっきり言って興味は皆無なんだけどね……。


「別に絶対ってわけじゃねえんだろ? 無視してもいいんじゃねえか?」


「………………」


「な、なんだよサーチ……」


「あ、ごめん……何かスゴく勇気がある発言したからさ……魔王様の仰ったことを無視しろ(・・・・)だって……」


「ニ゛ャ!? い、いや違うんだ! 違うんだ! お願いだから黙っててー!」


「……最近さー……疲れがヒドくって……甘〜いスイーツを食べたいのよね〜……」


「わかった! 今度帝都で奢ってやるから!」


 やたっ!


「ええ!? サーチばっかりズルいです! 私も、私も!」

「なら私も便乗」

「エイミアとリジーまで!? お前らは関係ないだろ!」


「「魔王様〜!!」」


「ぐぁ……! わかったよチクショウ!」


『私も私も!』


「わかったっつってんだろ!! 何度も言わなくても……」


 ……あれ?


「……最後のは誰だった?」

「私は違いますよ?」

「違う」


 ………………。

 たぶん、ソレイユね……。


「暇な魔王様……いた!」


 ……なぜか頭叩かれた気がする……?



「さて、次は……リジーお待ちかねブラックリバー」


「連れてけ連れてけ連れてけ連れてけ連れてって」


「行くから! ていうか、帝都へ行くには通らないとダメなのよ!」


「ならいい」


「ブラックリバーにはギルドがありますけど……私は大丈夫でしょうか?」


 ……そういえば私達はウォンテッドだったわね。


「まあ私達は、簡単に変装できるから問題ないわよ」


 私はビキニアーマーを普段着に変える。

 リルは帽子を被る。

 リジーは……。


「前に染めた髪色覚えた。自分で変える(・・・・・・)


 なんと自分で髪色を変化させられるそうで。


「……どうやって?」


≪化かし騙し≫(トリック)の応用」


 ……そういえば身体は狐獣人がベースだったわね。


「ならさ、いっそそのまま別人に化けちゃえば?」


「そこまですると疲れる。髪色くらいがちょうどいい」


 なるほど。リジーはリジーなりに考えてのことか。


「あの〜……私は……ひっ!」


 エイミアは、私が取り出したサラシをみて半歩後ずさった。


「やっぱりそうなるんですね……」


「痛いだろうけど我慢しなさいよ。あんたはやっぱりソレ(・・)が一番目立つんだからさ」


「……そうですね……ご面倒をおかけしちゃいます……」


 シュンとするエイミア。仕方ない、今度はあまり締め付けないように巻いてあげようかな。


「私の胸がおっきいせいで、サーチとリルに迷惑かけちゃいます……こんなに大きくなければなあ……。リルほどじゃなくても、せめてサーチくらいならいいのに」


 ……前言撤回。泣くまで締め付ける。何か青黒い炎を立ち上らせるリルも同じ気持ちだと思う。



 宿場町から乗合馬車に乗って、二日ほどでブラックリバーに到着した。乗合馬車に揺られている間に、帝国闘技大会への出場について話し合った。


「ソレイユはあまり意味のないことはしないでしょ。何かあるのよ、この大会……」


「でも……大会出て大ケガでもしたらシャレになんねーぞ? 旅にも影響は出るからな……」


 ……実際に治りきってない私とリルは、戦闘には参加してないしね。

 そのぶんリジーとエイミアに負担がかかってるのは間違いないから、リルの言うことは否定しようがない。


「それなんだけど……問題ないみたい」


 私はチラシの下の説明書きを指差す。


「ん? ……『なお怪我人が出た場合は、帝国軍所属の回復魔術隊が、責任をもって治療いたします』……へえ、破格の対応だな」


 帝国軍の回復魔術隊は、世界屈指の魔力量を誇る。条件さえ整えば死者の復活もできるらしい。

 最近になって財政難に陥っている、と噂されている帝国にしては金かけてるわね……(魔術隊の維持費はバカにならないのだ)


「…………ならいいか。私も参加してみるかな」


 ……とりあえず現段階で私とリルの出場が決まった。


「サーチも出るんですか?」


「うん。前回の戦いは不甲斐なかったし……それに」


 ≪絶対領域≫(アルティメットゾーン)についても何かヒントが掴めれば……いったいどんなモノなのかもわからないしね。


「……サーチ?」


「……あ、ああごめん。それに最近ちょっと慢心気味だったみたいだからさ……一から鍛え直そうと思って」


「それは私もそうだな。大会に出るというより修行の一環だな」


 ……実際に私もリルも、優勝なんてことは一切考えてなかった。


「……!! ……ちょっと見せて!」


 リジーが優勝賞品に心奪われるまでは。


「……私も出る。優勝する。賞品は私のもの」


 ……珍しく感情を表に出すリジーを不思議に思った私は、チラシをもう一回見てみた。


「なになに……『優勝賞品は、伝説の武器としても知られる、“死神の大鎌”(デスサイズ)を進呈!』ねえ……………………はああああああ!!?」

「嘘だろ? 帝国の連中はバカか!?」

「……下手したら帝国が滅びますよ(・・・・・・・・)!」


 エイミアが言ってることは誇張ではないのだ。帝国によって厳重に封印された最凶最悪の呪われた大鎌、“死神の大鎌”(デスサイズ)。この鎌は実際に当時の人口を半数以下(・・・・)にまで追い込んでいるのだ。

 ……なぜそんな武器を帝国は優勝賞品に……?


「まあ悩むのは今度今度! 今日から傷が癒えるまで湯治よ湯治♪」


「「おー!」」


「私は呪いの……」


「わかったから! その旅館に泊まるから!」


「……うふ♪」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ