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第十八話 ていうか、絶対領域と言う名の中二病?

≪絶対領域≫(アルティメットゾーン)?」


「そうよ。命名、私! いいでしょ?」


 命名って……。

 ソレイユって中二病だったのね……。


「……?? 馬鹿にされたのか、誉められたのか、よくわかんないんだけど?」


「だから心を読むなと何回言えば……まあいいわ」


 それよりも。


「何なの、その≪絶対領域≫(アルティメットゾーン)って?」


「職業を極めた人が達する事ができる、人外の領域よ」


 ああ、なるほど。

 長年弁当屋さんで働いてる人が、しゃもじでご飯をすくっただけで何gか当てちゃう……みたいな。


「…………サーチ…………随分と庶民的な例えね……」


「わかりやすいでしょ?」


「そうなんだけど……そうなんだけどさ! できればもう少しカッコいい例えを」


「あんた弁当屋さんをナメてんの!? 町の労働者の胃袋を支えてんのよ!! 弁当屋さんに謝れ!」


「わかった! わかったから手を離して! 魔王の首絞めてきたの、サーチが初めてだよ……」


「謝れって言ってんの!!」


「それはもういいから!」



「……落ち着いたサーチ? これ以上興奮するなら……」


「わかったわよ! お願いだから外さないで(・・・・・)!」


「よろしい。私が確認した限りだと、≪絶対領域≫(アルティメットゾーン)はスキルとして存在している」


「……誰がそんなスキル持ってんのよ……」


「ん〜〜……今はいない……かな?」


 いない!?


「じゃあ絶滅スキルなの!? そのスキルが私と何の関係があるのよ?」


「短縮バージョンで簡単にしてほしい? 長々と詳しく具体的に説明されたい?」


「……はい?」


 いきなり何?


「ストレートに言われたいか、暴風回廊(ゲイルストーム)の時みたいにじっっっくり解説されたいかって聞いてるの!」


「………………ストレートに簡潔にお願いします」


 さすがに長々と具体的に説明されたくはないし……。


「わかった! サーチが覚える! 以上!」


 はい!?


「簡潔過ぎるわよ! もう少し説明を加えなさい!」


「ん〜? なら超ロングバージョンを……」


 ……ソレイユ……遊んでるわね……。


「適度に短いヤツを!」


「クスクス……わかったわよ〜」


 む、ムカつく……!


「サーチは前世でアサシンをしていたのよね?」


「アサシン……になるのかなあ……」


「ぶっちゃけ後ろから近付いてギャー! が多いでしょ?」


 後ろから近づいてギャー! って……。


「まあ……そうね……間違ってはない……」


「じゃあアサシンね。前世と合わせればアサシン歴は長いでしょ?」


 そうね……ザッと三十年くらいかな。


「そんだけ長くアサシンしてれば、アサシンマスターくらい名乗ったってバチは当たんないでしょ? そういう事よ」


「アサシンマスターは名乗りたくないな……でも熟練の弁当屋さんと同じレベルに達してるってことよね!?」


「……サーチ、何か弁当屋さんに憧れでもあるの?」


 いや、何となく……。



≪絶対領域≫(アルティメットゾーン)を覚えると、どうなるの?」


「わからないわ。≪絶対領域≫(アルティメットゾーン)はその人の経験してきた事が現象となって再現されるスキルだから、個人個人で異なるの」


 どっかの世界の大禁呪かよ!


「…………そうなると……覚えるタイミングも、人それぞれっぽいわね……」


「アタシが知ってるのは『夕飯の後にデザートを食べてたら開眼』てパターンかな」


 ……どういう≪絶対領域≫(アルティメットゾーン)なのかスッゴく気になるわね……。


「サーチの今の状態を見る限り、スキルの開眼が近いように感じる。あとはきっかけね」


 きっかけ……まさか!


「さっきソレイユが投げてきた蜘蛛も……?」


「ん……『恐怖を乗り越える』なんてことがきっかけになるかも……とは思ったんだけどね」


 ハズレだったみたいね。


「……ただサーチの弱点が発覚しただけだったわね」


 クスクスと笑うソレイユ。うぁ、しまった……一番知られてはいけないヤツに知られちゃった……。



「さーて。アタシはそろそろ行くわね」


「えぇ!?」


 ホントに急ね!


「アタシだって暇じゃないのよ。エイミアへの処置も終わったし、サーチもからかい……もとい元気づけたし」


「ちょっとだけ『からかい』って単語が聞こえたんだけど……?」


「気のせいよ気のせい……あ、それとね」


「ん?」


「この宿場町過ぎるとダンジョンあるからさ……攻略するなよ♪」


 そう言ってウィンクした。魔王様のウィンクで萌える世界って貴重かも……。


「あ、もう一つ!」


「……まだあるの?」


「サーチを半殺しにした……えっと……ダンジョン殺しだっけ?」


 迷宮食らい(ダンジョンイーター)よ。


「そうそれ。サクッと(・・・・)絶滅させといたから……じゃ♪」


「はいぃぃぃっ!?」


 ていうか、居なくなってるし!


「………………」


 ……それが魔王(ソレイユ)なりの好意だったと気づいたのはもう少し後でした。



「……ていうわけで、エイミアは安心だって」


「本当に?」


「ええ。私も見てたから」


「本当に?」


「大丈夫だって……近い近い」


「本当に? 本当に? 本当に? 本とぷぎゃっ!」


「しつこいわああ!」


「痛い〜! でもよかった〜〜……びえ〜」


 エイミア泣いちゃった。まあ、気持ちはわかるけどね……。


「しかし、あっという間に去っていったな……」


 リルも呆れ気味だ。


『ナニ言ってんのよー! 可愛かったぞニャンコ先生♪』


「「「ぎゃー!」」」


『以上、ニャンコ先生が喋ると発動する伝言魔術でした♪ じゃね♪』


「「「………………」」」


 ……ムダなMP使いやがって……。


「もうイヤ〜……びえ〜」


 更にエイミア泣かせてどうするのよ……。


「何か呪いの匂い!」


「リジー……」


 呪いじゃなくてドッキリよ……。


「どこに行ってたのよ」


 突然消えたと思ったら……。


「魔王様に頼まれた」


「何を!? っていうかいつの間に!!」


 あんた湯当たりしてたんじゃなかったの!?


「治してもらった」


 なんでリジーだけ? …………あの魔王やっぱわからん…………。


「魔王様に言われた通りに探してきた」


 そう言って紙の束を差し出してきた。


「何なのよ……何かソレイユに引っ張り回されてる気が……」


 リジーが配った紙には、異世界転生には必ずついてまわる定番が書いてあった。



『第四十六回帝国格闘技演武大会のお知らせ』



 ソレイユ……これに出ろって言いたいのかしら……?

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