表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
132/1883

第十三話 ていうか、明らかに無謀だった。

かなり残虐な表現があります。苦手な方はご注意ください。

 戦闘態勢とは言っても……こっちには装備品が欠けているのがつらい。

 特に力ではパーティで一番の、リジーの装備品がほとんどないのがツラい。

 前衛にとってこれは致命的だ。


「今回は役割を変えるわよ。前衛は私とリル、エイミアはバックアップに専念して。リジーは遊撃」


 こんなもんだろうな。


「……遊撃?」


「隙を突いて斬り込むの。そして離脱……これの繰り返しで」


 ……本来なら私みたいなタイプが担当するんだけど、今回は仕方ない。


「ん……わかった」


「リル、エイミア! 迷宮喰らい(ダンジョンイーター)を捕捉したら、強力なヤツお見舞いしてやって!」


「おーけーだ!」

「わかりました!」


 よし! 準備万端!


「みんな! 生きて脱出するわよ! 温泉が私達を待ってるわ!」


「「おー!」」

「……おー」



「……この辺りです」


 エイミアが止まる。


「ここから約50mほど進んだ先の天井に、強い静電気を感じます。丸い玉みたいなのがぶら下がってる感じです」


 目を凝らして見てみると……なぜか景色が歪んで見える。たぶん光学迷彩ね。


「リル。エイミアが言ってる付近が妙に歪んでるのわかる?」


「ああ……違和感ありありだな」


「狙える?」


「……うーん……当てられるが……ダメージを与えられるかは微妙だな」


「やっぱりそうよね……ある程度大きいモノを射ち出せれば……」


 バズーカとかがあればなあ……。


「私のせいでんきは通じないでしょうか?」


「……何とも言えないわね……何も効果がないばかりか、相手に気づかれちゃ目も当てられないし」


 せめて矢に電気を纏わせて射つ……とかできればなあ……。試してみてもいいけど、高確率でリルが焦げて終わるわね。


「……なんだよサーチ……」


 ……リルも意外と鋭いわね……まあ、一応聞いてみよ。


「ムリだとは思うけどさ、リルの矢にエイミアの静電気を纏わせられないかなー……と思って」


「どう考えても、私が焦げて終わるだろ!」


 同意見だったー!


「私もそんな細かいコントロールできる自信ありません」


 自覚もあったー!

 つまり、手詰まりか。


「サーチ姉、エイミア姉が何か武器にせいでんき? を纏わせて投げればよくない?」


 リジーの提案も不可能。


「言っとくけどね、エイミアは投げたモノが後ろへ飛んでいくような子よ?」


「……エイミア姉すごい。真似できない」


 私も理解不能だったわよ。スプーンを投げてって頼んだら、後ろにいたリルのスープにホールインワンしたんだから。


「じゃあエイミア姉が直接飛んでいけば?」


 あんたムチャクチャ言うわね!

 ……ん?


「リジーなら……いけるかな?」


「……え?」


 エイミアがすごくイヤそうな顔をした。



「イヤです! 離して! 助けて! きゃーきゃーきゃー!」


「エイミアうるさい! リジーは大丈夫?」


「無問題」


「エイミアは」


「問題ありまくりです!」


 よし、サクッと無視。


「リジー! 教えた通りにね」


「おけ」


「おーけーだよ!」


 何もやることがないリルのつっこみが冴え渡る。


「じゃあ行きます」


 リジーがエイミアの足を掴む。


「やめてえええ!」


 ロープでぐるぐる巻きにされたエイミアには為す術がない。


 ぶんっ


「いやーーー!!」


 リジーが回転を始めた。


 ぶんぶんぶんっ


「きいああああああああ!!」


「おい、今さらだけど大丈夫なのか?」


「大丈夫よ。エイミアがちゃんと言ったことをしてくれれば……ね」


 一応私がフォローするし。


 ぶーーーーんっ!


「いやああぁぁぁあああぁぁぁあああぁぁぁあああぁぁぁ……」


 そろそろかな。


「やっちゃえリジー!」

「そーれぃ!」


 ぎゅんっ!


「ああああああああぁぁぁぁぁぁ…………」


「エイミア! ≪雷壁の鎧≫(サンダーブロック)よ!!」


 ……バチ! バチバチ!


 間に合った!

 静電気を纏ったエイミアが迷宮喰らい(ダンジョンイーター)の結界に直撃する!


 ずどおおおおんっ!


 クリーーンヒッット!


「ナイスコントロールよ、リジー!」


 私はすぐに砂煙の中に突入する。半分目を回したエイミアを見つけてかっさらう。


 バリバリ!


「あだだだだ!!」


 まだ静電気が残ってるのね〜! 痛い痛い!

 そのまま引き摺って戦線離脱!


「はあはあ……エイミア大丈夫?」


「はみゃ〜……回る回るぐるぐるぐる……」


 ……大丈夫みたいね。


「リル! 姿が見えたら迷宮喰らい(ダンジョンイーター)に一発ぶち込んで!」

「もう準備してる……!」


 リルは弦を右足で踏んで、右手で引っ張りあげる。限界まで張った弦に矢をつがえる。やがて砂煙が霧散していき……黒い影が現れる!


「≪身体弓術≫の強化版……≪全身弓術≫をくらいやがれ!」


 ずぎゅんっ!


 まるで銃で撃ったかのような音を響かせて、矢が放たれた。真っ直ぐに矢は影に吸い込まれ……。


 ギュイイイイイッッ!!


 何かが苦痛の悲鳴をあげた! 命中!


「リルもナイス!」

「ないす……か。後で教えろよ!」


 わかったわかった。


「さあ! 一気に畳みかけるわよ!」

「よし! いくぜ!」


 磁石にはくっつかない銅でリングブレードを作りだす。リルはいつものフィンガーリングを握る。

 そのまま迷宮喰らい(ダンジョンイーター)に攻撃を……。


 ぶうんっ!

 めこっ!

 バキバキッ!


「かはあっ!」



 ロープをほどきながら起き上がると。


「かはあっ!」


 ……触手みたいなものに脇腹を叩かれて、吹き飛ぶサーチが目に入った。

 そのままサーチは地面に叩きつけられる。


「うぐ……ごほっ!」


 脇腹を抑えながらサーチは血を吐いた。


「い、いやあああああ!」


「サーチ!! ク、クソ!」


 リルはすぐにサーチのカバーにまわる……。


「リル! 前!」


「え……きゃああ!」


 今度はリルを襲った。

 ガードはしてたみたいだけど、リルはそのまま壁に激しく衝突し。

 ……動かなくなった。


「……リルゥゥゥゥゥ!」


 私の叫び声だけが虚しく響く。黒剣を握ったリジーが斬りかかろうとするけど……もう一本の触手に邪魔されて、サーチやリルのところへたどり着けない。


「く……ぐふ……」


 その間にサーチが立ち上がり、歩きだすが。


「…………うぐっ」


 大怪我をしたサーチは、逃げる事もできずに触手に捕まる。

 そして。


「ぐああ! ああああああああぁぁぁぁぁぁ!!」


 めきめき……バキバキ……


 サーチを触手が絞めあげる。私のところまで、サーチの骨が折れる音が聞こえてきた。


「やめて! やめてええええええ!!!」


 私の叫び声など全く無視して、サーチを更に絞める。


「うぐぅぅぅっ!! ぐああああああ!!!」


 やめて! やめて!

 サーチが……サーチが死んじゃう……!


「うぐあ! ぅあああああああああ!」


 サーチが……! サーチが……!


「やめて……」


 私が……!


「止めなさい……」


 私……が……!


「止めなさいって言ってるでしょう!!」


 勇者(わたし)がサーチを助ける!



 その時。

 サーチの魔法の袋(マジックバッグ)から何かが飛び出して。


 キィン! キンキンキィィン!

 ザシュ! ザン! ザザザン!


 サーチを捕えていた触手を細切れにする。


「サーチ!」


 普段の私では考えられないスピードで走りだし。


 がしっ


 落下してきたサーチを抱き止め、素早く離れた。


「サーチ! 大丈夫!? サーチ!」


「う…………エイ……ミア?」


 良かった、生きてる。


「ちょっと待ってて……≪修復≫(リペア)


 私の回復魔術(・・・・)がサーチの傷を癒す。


「ぐ! ……う……あ、あれ? 痛みが……?」


「これで命の危機は去ったわ。だけど完全には回復してないから……サーチはリルをお願い」


「え……エイ……ミア?」


 私は飛んできた“知識の聖剣”(アカデミア)を手にする。


「……あとは任せて」


 私は。

 許さない。

 仲間(みんな)を傷つけたコイツを。


「さあ……私が相手よ」


 ……聖剣が再び空を駆ける。


勇者(わたし)を怒らせた罪は重いわ!」

ついにエイミアが覚醒か?

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ