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第十話 ていうか、この世界にはまともなギルドはない?

 バラバラになったダンジョンコアと、モンスターの素材をギルドで売り払うために少し寄り道した。


「えーと……ようこそゲージタウンへって……そのまんまの名前ね」


「本当にここにあるんですか? ギルドも冒険者も……人もいませんけど……」


 ヒュウウ……


 あ、あれ転がってる。

 よく西部劇で転がってくる丸いヤツ。こっちの世界にもあるのね……。


「ま、こういったシチュエーションなら、まずは酒場に行くのよ」


「し……しちゅ……?」


 あ、しまった。リルが……やっぱメモってるわね……。


「何でもないわ……」


 めんどくさいことになる前に会話を打ち切って、酒場に入った。



 ギイッ


「……うおっ!?」


 中にいた数人の冒険者が、私達を見たとたんに歓声をあげた。

 ……エイミアは人気あるわね……。


「おい、ビキニアーマーだ……」

「ビキニアーマーだぜ……」


 ……私か。

 ちなみに変装はとっくに解いている。だけどリルとエイミアには「ビキニアーマーは止めといた方が……」とは言われた。

 ていうか、別にいいじゃない。


「だから言っただろ……ビキニアーマーは止めとけって」

「やっぱり目立ちますよ」


「うっさいわね〜……エイミアのソレ(・・)のほうが目立つじゃない!」


 そう言って私はエイミアの胸をパンパン叩いた。


「あの……止めてください……」


 エイミアか呟くと。


 ビリビリ

「きゃっ!?」

 静電気が!?


「あれ……? エイミア今の……?」


「どうですか? ≪雷壁の鎧≫(サンダーブロック)もここまでコントロールできるようになりました」


 えっへん! と胸を張るエイミア。それだけでブルンッと胸が揺れる。


「「おお〜〜〜!!」」


 ……私のビキニアーマーよりも反応してるじゃない……。


「……私が何着てても反応変わらないんじゃない?」

「……そうだな……」


 今度サラシを巻くときは泣くまでギュウギュウにしてやる……。



「何か飲むかい?」


「アルコールの入ってないヤツを適当に人数分ください」


 全員「任せる!」と言うので選択を店の人に丸投げした。


「……金の取れない客だな」


 ……すいませんね。


「あの〜……サーチ」


「何?」


「前に言ったことは撤回します! ぜひ(・・)ビキニアーマーを着ていてください!」


「へ? いきなり何よ?」


 ……ちょっと前までリルと一緒にブーブー言ってたくせに。


「サーチがビキニアーマーを止めたら……私がさらに目立っちゃいます……」


 あー……なるほど。ていうか、スゴい複雑なんですが……。


「…………どっちにしてもやめる気は更々ないし……」


「本当に!? 助かりました〜」


 ふにゃ〜と脱力するエイミア……くそ……かわいいじゃない。


「……ほらよ」


 店の人が透明な液体が入ったコップを私達の前に並べた。あ、このコップのフチが欠けてるじゃない。指紋もついてるし……まあ、喉が渇いてるし……仕方ないか。


 ごくっ


「「「………………」」」


 これって……。


「ねえ。確かにアルコールは入ってないけど……単なる水よね?」


「うちの店には、アルコールの入ってない飲み物は、水しかないんだよ」


「いや……せめて味をつけてくれても……」


「ソルティドッグ用の塩があるから、塩水にしてやろうか?」


「水でいいです」


 ……要は早く出てけってことね。ならこっちもさっさと聞くこと聞いて出ますか。


「ちょっと教えて。ギルドはどこ?」

「ここの三軒隣のボロ屋の二階だよ」

「冒険者が全然いないのは?」

「仕事ねえからな」

「じゃあ住人がいないのは?」

「過疎化」

「簡潔ですね」

「用が済んだら早く出てけ」


 商売する気ないな!



 ……ある意味、気持ちいい対応をされた酒場を出て三軒隣へ。


「…………これっすか」


 確かにあった。

 三軒隣のボロ屋……つまり崩れかけのアパートの二階の奥。


「ああ……確かにギルドって書いてあるな」


 ここが警備隊の詰所なの!?


「……確か新大陸ってギルド兼ねてるはずよね……」


「……これが警備隊の詰所なら、ゲージタウンは無法者の天下だぞ」


 そうよね。


「この建物居心地いい。呪われてる可能性大」


「古い建物だからな……そりゃあ曰くの一つや二つくらいあるだろ」


「こ、怖いこと言わないでください!」


 建物内で騒いでいると。


 バンッ!


『うるせえぞ! ボロアパートなんだから静かにしてろ!!』


「ひぇ!! す、すいません!」


 ……まあパターンよね。


「エイミア落ち着いて。こういう場所ではよくあることだから」


 ……とりあえずギルドに入りますか。


 コンコン


 ………………。


 コンコン


 ………………。


 コンコンコン


 ………………。


 ドンドンドン!


『うるせえって言ってるだろ!』


 ……イライラ。


 コンコンコン


 ……イライライライラ。


 ドンドンドンドンドンドンドンドンドン!


『お前ケンカ売ってんのか!? うるせえぞ! ぶっ殺すぞコラ!!』


 ぶちっ


「うるさいのはあんたでしょうが! ぶっ殺すような度胸も無いくせに、えらそうなこと言うなハゲ!」


 ばあんっっ!


「どいつじゃ、ハゲ抜かしおったバカは!!」


 マジでハゲだし!


「私だよ私! 一瞬でゴートゥーヘルしてやるから表に出ろ!」


「上等じゃ!」


「あああ! 何でこうなるんですか!」


「エイミア逃げるぞ!」


「えいっ」


 ごおおおんっ!


「「「あ」」」


 ……リジーが大鉈の背の部分で後頭部ど突いた……。


「……ぶい」


 ぶいじゃないでしょ……。


「あーあ……完全にのびてるわね……」


「まあ、いいんじゃねえか? 明らかに悪人顔だぜ、こいつ」


 ……確かに。見るだけでムカつく顔だし。


「とりあえず出てきた部屋に戻しましょ」


 四人で持ち上げて、出てきた部屋に放り込む。


「うわ、武器だらけじゃないか! マジ物騒なヤツだなこりゃ……」


 剣、槍、打撃武器に暗器まで……物騒どころか危険人物じゃない。

 物騒なおっさんの部屋のドアを閉めて再びギルドの前へ。


「出ないし……どうしようか」


「強硬突破?」


「ちょっとちょっと! 大鉈振り回さないでよ!」


「もう一回だけノックしてみましょうよ」


 ……なんて騒いでいると。


 ギイッ


「……はい?」


「「「いるじゃない!」」」


「ひっ!? ごめんなさいごめんなさい! トイレに入ってて……」


 トイレね。

 まあ、ありがちだけど……。


「ここギルドでしょ?」


「え? ……はい、そうですけど……受付はなさいました?」


 受付?


「受付なんてどこにあるのよ?」


「……ああ、なるほど。表札見ました?」


 表札?


「だから『ギルド』って書いてある部屋に来たんだけど?」


「表札最後まで読みました?」


 最後まで?


『ギルド』


 ん? 下にもう一つ表札?


『マスター』


 ……なにこれ……。


「初めての方はよく間違われるんですよね……案内しますね」


 そう言って歩き出す女の子についていく。すると二階の最初の部屋の前で止まった。


「ここです」


 ……?

 表札を見ると……。


『受付』


 ……まさか。

 私は気になって二階の部屋の表札を見て回る。


『依頼』

『鑑定』

『休憩所』

『冒険者待機室』


 ……やっぱり。


「……この建物の二階……全部の部屋(・・・・・)がギルドなの?」


「そうなんです。空きのある建物が無くって……仕方なく全フロア貸し切ったんです」


「じゃあギルドってわかるように看板くらい出しなさいよ!」


「無理ですよぅ……一応闇ギルドなんですから……」


 カモフラージュなんです……と女の子が絶壁の胸を張った。じゃあさっきの危険人物は……?


「……ちょっといい?」



 さっきぶん殴った危険人物を見せてみると。


「お父さん!? お父さーん!」


「やっぱりこういう展開なのね……」

「おい……部屋の扉……」

「うん……『武器庫』の表札があるわね……」


 そりゃ物騒なわけだ。


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