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第七話 ていうか、新大陸の悲惨な歴史。

 毎度のことながら大きく話が逸れた。


「おほん! で、裏切り者の獣人の話なんだけど……」


 私から話してもいいもんだろか? チラッとリルを見て確認する。


「ん? 私に遠慮なんかしなくてもいいよ。つーか、私が話してもムカムカするだけだからさ」


 そう? ならいいか。


「それじゃエイミアいい?」


「はい!」


「むかーしむかし、あるところにお爺さんとお婆さんがはぎゃっ」


「こらサーチ! いい加減なこと言ってんじゃねーよ!」


「いたた……ちょっとふざけただけじゃない……」


「バカ! エイミアにはそういうのか通用しないだろ! 本気にされるのかオチだ」


「…………そうね……エイミアならあり得るわね……」


 ていうか、そうなる未来しか想像できなくなった。


 バリ……パリパリ……


「「え……」」


「本人の前で……そこまで言いますかーー!!」

 バリバリずどーーん!!

「ぎいああああああああああ!!」

「いみゃあああああああああ!!」



「お、思えば……この展開も久々々ね……」

「サーチ……久々の々が一つ多いぞ……」

「ふんだ!」


 うう〜……久々だから身体中が痺れて喋りにくい……。


「私が話す」


 え? リジー?


「私は元リディアでもあり元ルーデルでもある。ルーデルの記憶は大半は受け継いでると思われ」


 なるほど……なら。


「お願いしますす」


「サーチ姉、すが多い」


 そしてリジーは語り始めた。



「新大陸」と他の大陸の人々から呼ばれるこの大陸は、獣人や古人族のような先住民が暮らす平和な楽園だった。

 北と南に分類される大陸は、北の地に古人族、南の地に獣人が住み分かれていた。

 南の地の獣人は比較的早い時期から他の大陸とも交易を行っていた一方、排他的な種族だった古人族は真逆の対応をしていた。

 結果、古人族は独自の文化を築くと同時に、「魔術」と呼ばれることになる独特な魔力の操作方法を編み出し、その強力な力を以て他の種族を拒み続けた。



「え? それじゃあ魔術って、古人族っていう人達が編み出したんですか?」


「そう。似たモノは他の種族にもあったらしいけど、古人族のモノが一番効率的で画期的だったらしい」



 当然、他の種族は古人族の魔術を欲した。

 特に人間は他の種族よりも弱く、常に劣勢であることを余儀無くされていた。人間の魔術に対する執着は凄まじいものだった。

 そんなある日、新大陸から二人の古人族が駆け落ちしてきた。人間達は二人を捕まえようとしたが、ハイエルフ族が二人を保護して匿った。格上であったハイエルフには手を出すこともできず、人間達は一旦は(・・・)断念した。

 ハイエルフ族に護られて二人の古人族は幸せな生涯を送ったのだった……。



「……それがハイエルフ族の魔術の祖にあたる……はい、おしまい」


 ………………。


「……そのハイエルフの魔術が、人間に伝わったんですか?」


「ハイエルフの魔術は古代魔術と言われていて、複雑で難しくて大変。一部のエルフが使うくらいで人間は使ってないと思われ」


 ………………。


「ちょっとリジー。肝心な部分が抜けてない?」


「人間に伝わった魔術の話はこれから言うつもりだった」


「……さっき『おしまい』って言ってただろが……」


「気のせい気のせい」


 ……大丈夫かしら……この子……。



 人間の執念はついに最悪な方法を選んだ。秘密裏に新大陸に忍びこんだ人間の部隊は小さな漁村を襲撃し、古人族の女子供を拐った。そして残虐な拷問の末に魔術を盗み出したのだ。

 古人族の追求をのらりくらりとかわしながら、人間は奪った魔術の研究を続けた。

 そして魔術がある程度の完成をみた人間は……更に最悪な選択をするのだった。



「…………すごく嫌な展開しか想像できないんですけど……」


「その通りよ。いま魔術を使える種族は?」


「人間と……獣人と」


「獣人は使わねえぞ」


「え? そうなんですか?」


 あんた今まで気づかなかったの!?


「……獣人は魔術との相性が悪くてな。スキルをメインにしてる奴が大半だ」


「……そうなんですか……じゃあ、あとは……エルフですよね?」


「エルフの魔術も系統が違う。あれは古代魔術の発展したものだよ。詠唱も術の形式もまったく違う」


「……と言うことは……」


「そうよ。古人族が使っていた正統的(・・・)な魔術を使っているのは……人間なのよ」



 人間は比較的古人族に近しい獣人を懐柔した。その獣人は言葉巧みに古人族を騙し……ある伝染病(のろい)をかけられた丸薬を古人族に飲ませたのだ。

 その伝染病(のろい)は瞬く間に古人族の間に広まり……古人族は急速に数を減らしていった。



「何なんですか! その伝染病(のろい)!?」


「たぶんだけど……古人族しか罹患しない致死性の病気……てとこかしら」


 ……なんて胸クソ悪い病気(もの)を作ったのよ、人間は……!



 ……伝染病(のろい)によって勢力が衰えた古人族に人間は襲いかかった。人間は魔術を改良し、より攻撃型に組み直された。それは従来の古人族の魔術が全く歯が立たない程の威力だった……。



「私も本で読んだけど……古人族はこの戦争で皆殺しされたってのは誇張でも何でもなく……本当のことみたいね」


「ひどい……!」


「結果として新大陸は人間に占領されて……人間と古人族を裏切った獣人の国家が誕生した……」


「……じゃあリルが言っていた裏切り者の獣人って……」


「そうだよ! 今は帝国の自治領として残っているがな! そこの自治領主の一族がその裏切り者の子孫さ!」


「ルーデルは南の地に住んでいた獣人の子孫。一番古人族と交流があったはずだから……」


 一番この事については詳しいはず。


「ちょっと待ってくださいよ! そんな裏切り者が治める国を、自治領として存続することを帝国は認めたんですか!?」


「だから……帝国には要注意なのよ」


 元々皇帝自体も勇者の荷物持ち(・・・・・・・)だしねえ……。


「知ってる? この戦争の呼び名って、私達のいた大陸と新大陸とじゃ呼び名が違うの」


「え? そうなんですか?」


「私達がいた大陸は殲滅戦争(ジェノサイド)て呼んでるでしょ? でもね……帝国では正義の勝利(ヒロイック・サーガ)て呼んでるのよ……」

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