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第二話 ていうか、訓練でリジーとコンビ。

「飽きた……」


 出港してから一週間経つけど、着く気配一切なし。


「ニーナさん……いつ頃着くんだっけ?」


『そうですね……あと十日くらいです』


 げ……十日……。

 そうよね……風がほとんど吹かない海域らしいから……。


「……風以外の推進力っていうと……?」


『風力以外ですと海流、人力、魔術でしょうか』


 魔術かー……。

 便利屋(マーシャン)がいれば何とかなったんでしょうけど……。



「……くしょん!」


「マーシャンのアネゴ! 大丈夫ですかい!?」


「……多分誰かが噂をしておるんじゃろ……これ、オシャチ! 口をはさむ暇があったら手を動かすのじゃ!」


「す、すいやせん!」



『……サーシャ・マーシャも意外と敏感ですね……』


「何か言った?」


『いえ、魔術で推進力を得られないかと』


「……ムリしないでね。結界術の維持だけでも大変なんでしょ?」


 さすがのニーナさんも結界術にかなりの魔力を使うらしく、今回のような無風状態の対処にまわせる魔力の余裕はないらしい。


『……申し訳ないです……流石にアタシーのギルドの業務を滞らせる訳にもいかず……』


 ……はい!?


「ニーナさん……ギルド業務もやってたの!?」


『はい……結界術の応用で私の分身を置いてきました』


 そりゃ魔力の消費ハンパないわけだわ!


「なんだかホントにごめんなさい……」


『気にしないでください。“賢者の杖”(マスターロッド)のおかげで回復も早いですから』


 ……へ? 魔力の増幅効果は知ってたけど……MPも回復するの……?


『知りませんでしたか……? サーシャ・マーシャも持っていたはずですからご存知かと』


 ……たしか闇深き森(ディープフォレスト)で「MPが回復せんのじゃ」とか言ってたわね……。


「ニーナさん……闇深き森(ディープフォレスト)みたいに回復を阻害するような場所でも“賢者の杖”(マスターロッド)の効果って……」


『問題なく効果を発揮します』


 マーシャン! 闇深き森(ディープフォレスト)で手ぇ抜いたわね!

 今度会ったら問い詰めてやる……!



 ゾクゾクッ


「っ!? な、何じゃ、寒気が……」


「風邪ですか? 大丈夫ですかい?!」


「う、うむ…………むむっ! また手が止まっておるぞ!」


「す、すいやせん!」



「……サーチ」


 ニーナさんと会話が途切れたときに空間が裂けて(・・・・・・)リジーが出てきた。


「ちょっ……あんたどこから出てきてるのよ!?」


「……? 普通に戸を開けた」


『申し訳ありません。こちらに繋いでいたのを伝え忘れていました』


 ……甲板もニーナさんの結界内なのね。


「まあいいけど……で? リジーどうしたの?」


「エイミア姉との模擬戦飽きた。たまには相手して」


「はあ、はあ、はあ……もうダメ〜」


 背後から汗だくになったエイミアが出てきた。手には“知識の聖剣”(アカデミア)が握られている。


「エイミアが剣を使うなんて珍しいわね」


「使わないとうるさい」


「何故かカタカタ音がなって気持ち悪いんです〜」


 呪いでもかかってるの?


『エイミアが勇……いえ、気に入ったのでしょうね』


 ニーナさんあぶないよ……。


(すいません。あの剣は勇者を探す魔術がかけられていますので)


 ……直接頭の中に話せるんですね。


(はい。言ってませんでしたか?)


 聞いてません。早く言ってくれれば色々と楽だったのに……。


(……重ね重ねすいません)


 いえ……。


「……? サーチ姉、どうした?」


「……え? ……あ、ごめんごめん……なんだっけ?」


 リジーは小さく息を吐く。


「サーチ姉、もの忘れには早い」


 悪かったわね。


「模擬戦してほしい」


「私と?」


「そう」


「……とは言っても、あんた私とは相性最悪じゃない」


 リジーみたいに殺気ムンムンで斬りかかってくるタイプは、私が一番戦いやすい相手なのよね。


「今度は勝つ」


「……何回も言うけど殺気を鎮めないと私には勝てないわよ」


「なら殺気の鎮め方を教えて」


「だーかーらー……」


 何回教えたと思ってるのよ……。


『でしたら私と模擬戦をなさいますか?』


「「えっ?」」


 ニーナさんと?


「……どうやって?」


『私が結界内に魔術で仮想の敵を創ります』


 ……前世のVRみたいなものね。おもしろそうだけど……。


「……MPは大丈夫?」


『結界術の維持に含まれる事ですので全く問題ありません』


 ……ならいいか。


「じゃあ……それでお願い。リジー、二人で戦う訓練をするわよ」

「わかった」



 ニーナさんに導かれて着いた場所は闘技場だった。


『リクエストをいただければ地形も自由に変えられます』


「戦う相手は?」


『Cクラスぐらいの冒険者でしたら問題無く再現できます』


「最初は……そうね……アタシーの警備隊をお願い」


『わかりました。但しダメージは現実と変わりませんのでご注意ください。深い傷を負われた場合は強制的にストップします』


「わかったわ。リジーも気を引き締めなさい」

「勿の論。出てきた相手全て倒す」


 ……リジーみたいに協調性のないパワーファイターは……私がバックアップするしかないわね。


『それでは……始め!』


 ニーナさんの掛け声と同時に三人の警備隊が現れた。

 まず一人がリジー目掛けて槍を突き出す。それを寸前で避けたリジーは。


「……ふふ」


 笑いながら“首狩りマチェット”を振り下ろした。警備隊員の頭から地面まで大鉈が通り抜ける。

 ……真っ二つになって倒れる途中で、霧散して消えた。


「……弱い」


 余裕ブッこいてんじゃないわよ!


「後ろよ!」


 リジーに足払い!

 ガッ!

「わっ!」


 リジーが倒れたあとを矢が通り抜ける。


「相手は複数だって言ったでしょ! 私がフォローしてなかったら、あんた死んでたわよ!」


 矢が飛んできた方向に投げナイフを放つ。


 ……ドスッ


 手応えあり。それと同時に≪偽物≫(イミテーション)で背中に鉄板をイメージする。


 ガギンッ


 倒れているリジーを狙って飛んできた矢を、その鉄板で受ける。すぐに鉄板を霧散させてまた投げナイフ。


 ………………。


 外れたか。

 だが。


「……これで最後だった」


 ……リジーが大鉈を投げつけて敵を倒していた。



「ごめんサーチ姉。私油断してた」


「……しばらくこの訓練続けよう」


 リジーは圧倒的に多数との戦いの経験が少ない。リジーは破壊力があるから、慣れればスゴい戦力になる。


「わかった。私頑張る」


 よし!


「ニーナさんお願い! 今のをもう一回!」


『わかりました』



 それから三日。

 ご飯と寝る時間以外は全部訓練に費やした。その甲斐もあってリジーの反応も格段に良くなった。


「リジー! 後ろ……」


 ブウン!

 ザンッ


「何か言った?」


 ……何でもないです。



「……よし!」


 もう一段階上を目指すことにした。


「リジー! 次はコンビじゃなく個々(・・)での戦いをやりましょ!」


「わかった!」


「ニーナさん! お願いできます?」


 ………………。

 ……あれ?


「ニーナさん?」


「……ニーナいない?」


「さんをつけなさい……おかしいわね。ニーナさんが反応しないなんて……」


 すると。


『サーチ! リジー!』


「あ、ニーナさん。少し難易度」


 ギイイッ


「あ、ドア開いた」


 あれ? 場所を変えるのかな?


「……行ってみよか」


 リジーが頷く。

 一緒に開いたドアをくぐると。


「……貴様ら、ここをどこだと思っている!」


 をを! 超リアルじゃん!

 喋る幻影じゃない!


「貴様らはおごふぉっ!」


 とりあえずうるさいヤツをブッ飛ばす。


「お、おいサーチ……」

「これはマズいんじゃ……」


 ん? リルとエイミアの幻影もいる?

 ……まあ、いいか。


「リジー! 手加減なしでいくわよ!」

「わかった!」


 ブウン! グシャ!


 うわ……えげつない威力ね。


「何だこいつら! 強いぞぐぎゃ」


 背後から私の一撃を受けて崩れ落ちる。まだ二十人くらいいるけど問題ないわね。


「リジー! 半分任せていい?」

「全部いける!」


 言うじゃない。


「じゃあさっさと片付けるよ!」


 私もがんばりますか!

 手始めに弓を取り出した兵士を蹴り倒した。



 十五分もかからずに全員張り倒した。


「リジー! ナイスナイス!」

「簡単だった!」


 お互い良い笑顔……。


 ボカッ! ボカッ!


「痛!」

「んきゃ!」


 何で殴られるのよ……!


「サーチ! リジー! お前ら、何てことしやがる!」


「「……え?」」


「その人達……ランデイル帝国の湾岸警備隊ですよ!」


 げっ!


『今入国に関する手続きをしていたのですが……』


「あの……私達が呼ばれたのは……」


『はい……面通しです……』


 ………………。


「リジー……全員消すわよ(・・・・)

「わかった、口封じ」


「「ダメに決まってるだろ!!」 でしょ!!」



 結局。

 警備隊を怒らせてしまった私達は入港できるわけもなく。

 ……更に十日かけて違う港へいくハメになった。



 ちなみに……私とリジーは罰として船の掃除を言い渡された。


 ゴシゴシゴシゴシ


「サーチ! 力が入ってねーぞー」


 ルーデルうるさい!


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