第三話 ていうか、変態セクハラギルマスクソじじぃ。
「「すいませんでした」」
ヤクザもといギルドマスターを蹴り倒してから三十分、ひたすら謝ってます。エイミアまで一緒に謝ってくれてます。だから許せよ。
「あー、もういい。 儂の話し方も粗野すぎた。悪かった」
ホッとして下げてた顔を上げる。すると、微妙ににやけて隣のエイミアをガン見するギルドマスターが目に入った。視線を辿っていくと……エイミアの顔の下の……くっきりと谷間が……。
「……うりゃあ!」
「ぐっはあっ!」
私は再びギルドマスターを蹴り倒した……半分八つ当たりで。エイミア、あっきらかに私よりデカい。
さらに三十分後、ギルドマスターもといセクハラヒゲじじぃが目を覚ましてから話が始まった。
「うぉっほん。それではギルド養成学校についての説明をはじめる」
「はい、変態セクハラヒゲクソじじぃさん」
「変態……と、とにかくサーチだったか? お前さんは紹介状があるんだな?」
「はい、変態セクハラヒゲクソじじぃさん」
するとギルドマスターはものすごく情けない顔になった。
「……悪かった。ほんと、悪かった。頼むから変態云々はやめてくれ」
「……私に謝るよりエイミアに謝るべきじゃない?」
「私に、ですか?」
私はエイミアの胸元を指差す。
「前屈みになると丸見えよ」
エイミアはゆっくりと服を引っ張って覗きこむ。そして変態ヒゲじじぃを見る。そしてまた胸を見やり……しばらく繰り返しながら顔が真っ赤になる。
「い、いやああああああああ!!」
「ぎゃあああああああ」
……エイミアのスーパー○ンボが決まった。
「KO! You win!」
「う、うるさいわ!」
ボコボコになったギルマスが叫んだ。
盛大に話は逸れたけど、ようやく院長先生の手紙の話になる。
「手紙は読んだが……まさか“飛剣”の推薦とはな……」
「……では入学は問題なしですか?」
「まあ、“飛剣”のお墨付きだ。本来なら問題無いんだが……」
本来なら? なんかすごく嫌な予感……。
「『一度手合わせしてから裁定を』と手紙に書いてある」
院長せんせーい!?
「というわけだ。試験として俺と戦ってもらう」
え? ギルマスと?
「もう二回もシバき倒し」
「ノーカウントだ!」
「……はい」
仕方ないか。院長先生も何か考えがあってのことだろうし。
……たぶん。
「それから……えーと……エイミアだったか」
エイミアは半泣きで胸を隠して睨む。
「わ、悪かったよ……あんたも試験だ。相手は俺」
「いやあああ!」
「わかった。俺以外の誰かな」
「でしたら全然構いませんわよ」
……ギルマスの信用度ゼロね。受付のお姉さんにも白い目で見られてるし。
なんか立場なさそうなギルマスさん。わざとらしく咳払いをしてから立ち上がった。
「さて、いつがいい? 都合がよければ今からでも構わんぞ」
今からかー。まだ町についたばかりだから体力が心許ない。だけど……訓練と思えば今の状況は…最適よね。
「じゃあ今からお願いします」
「……わかった。じゃあ闘技場へ移動する」
ギルドの建物の中央に移動する。その間にギルマスは袋から武器を取り出す。体格に似合わず短剣の二刀流だ。
「……なんだ?」
「え?あー、何となく武器は大剣か大金槌か鉄球か棘付金棒かと」
「いかにも力自慢の巨漢が持ってそうな武器ばかりだな! よく言われるが」
とか言ってる間に闘技場に到着した。外の見た目より案外広いわね。
そしてギルマスは短剣を両方とも逆手に持ち直して構える。
「よし、いつでも来……!」
ギルマスが喋り終える前に銅のナイフを持って肉薄する。ギルマスがナイフの斬撃を防ぐ隙に予め強化しておいた針を左手に持ち、首筋に……!
ギィン!
っ!?
弾かれた! そしてギルマスの反撃! ナイフを逆手に持ち変えて短剣を受ける。
ガギンッ
「あうっ」
力負けして飛ばされる。けど身体を反転させて受け身と同時に最大加速!
再び肉薄す……!?
「うぐっ」
強引に身体を反らして斬撃を躱す! うわ、思いきり体勢が崩れて……!
カチンッ
短剣が私の皮の鎧の金具部分にあたる。
そこで、終わり。
「……く」
「俺の、勝ちだな」
……負けた。
ていうか、それより。
「ねぇ、変態セクハラヒゲクソじじぃ。なんでわざわざ胸の谷間の金具に剣を当てるわけ?」
「あ、いや、つい」
「……つい……じゃねえええわああああああ!!!」
バレてないと思ってるでしょうけど、小声で「小さい」て言ってたしね……!
「ま、待て! 落ち着け、な? な? ……て、ちょっと、なんでお前そんなハンマー持って……ぎゃあああああああ!!」




