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第五話 ていうか、仲間を勧誘。

 リディアかルーデルかはわからないけど、いま真リディア(私はこう呼んでる)は疲れて眠っている。

 で。


「「「どうしようか……」」」


 ……扱いについて頭を悩ませていた。



 数時間ほど前。

 アタシーの町に到着した私達は、砂漠の砂を洗い流すため、いつもと同じように。


「「「まずは温泉!」」」


 ……となった。

 真リディアとの親睦のため……と理由も一応あったし。何故か躊躇するリディアをひっぺがして、先にお風呂に叩き込む。そのあとで私達はゆっくり準備してお風呂に向かった。

 ガラス戸を開けた瞬間。


 ぶぶーーっ!


「きゃっ!」


「何!?」


 なぜか赤い噴水(・・・・)が上がり、真リディアが顔を真っ赤にして湯船に浮かんだ。


「……いったい……何事?」


「さあ……」


 ……あ!


「よく考えたら私達……すっぽんぽんよね」

「当たり前だろ」

「お風呂に入るんですし……」


 当然、前を隠しているわけがない。


「真リディアって元男(・・)よね……」


「そう言えば……そうだな」


「刺激強かったのかもね……ていうか、何でしゃがみ込んでるの、エイミアは?」


「だ! だって! 見られちゃったんですよ!」


「「何をいまさら……」」


 前のリディアの時だって一緒に入って……。

 ……あれ?


「前のときって……こういう反応してなかったよね?」


 湯船をどんどん赤く染める真リディアを指差して聞く。それにしても、すっげえ血の匂い。前世はもちろん今の世界でもよく嗅ぐ匂いではあるが、流石に自分の裸見られて出された鼻血の匂いは御免被る。


「してません……でしたよね」


 まあ……この辺は本人に聞いてみるしかないか。



 で、入浴後。

 本人が目覚めるのを待って事情を聞いた。


「……呪いの影響が人格にも作用してた……と?」


「ああ……サーチ達の話を聞いてみて、考えたことなんだがな……」


 真リディアによると、例の靴と指輪の影響がいい例だそうだ。他の呪いシリーズによって「自分が男だ」という自覚もなくなってきてたらしい。


「それじゃあ全部の呪いを解呪しちゃったから……」


「ああ……自分が男だって自覚もある」


 だった(・・・)でしょ……とは言わずにおく。


「それにしてもさ、何であんたアタシー(ここ)にいるわけ? 捕まってたはずじゃ……」


「これも贖罪の一環だ。ちょうどこっちの警備隊が流行り病で欠員が出て、人手不足になっててな……オレが言うのも何だが、厄介払いも兼ねて派遣されたんだ」


「厄介払いって……」


「装備品の無い呪剣士なんてそんな扱い(もの)だ」


「え? あんたが装備してた鎧とかは……」


「こっちで出没してたリビングアーマーだよ。こっちの警備隊が捕らえたらしいが、どうしようもなくて持て余してたらしい」


 ん〜……一応WinWinの関係なのね。


「それじゃ……呪われてる間の記憶はあるの?」


「……………………ばっちり」


「じゃあ……マーシャンのふがふが」


 私は口を塞がれる。

「それは絶対言うな!」 と涙目の表情が如実に語っていた。可愛いなあ、やっぱり。


「それにしてもなんでサ○ジ並みの鼻血を……」

「は?」


 あ、何でもありません。


「とにかく! 自分ので見慣れてるでしょ? 今さら私達の裸見て鼻血出す意味がわからないんだけど?」


「オレが聞きたいわ!」


 あんたがわからなきゃ誰がわかるのよ!


「……どっちにしても……男だという自覚はあったのよね?」


「そうだ! オレは男はぎゃっ!?」


「じゃああんた、男の自覚ありで堂々と女湯に入ってたわけ!?」


「ふざけんな! 何も聞かずに人の服剥いて、風呂に放り込んだのはそっちだろうが!」


「ふざけられるか! こんな美少女の中身が男だなんて、見た目だけでわかるわけないでしょ!」


「だーかーらー! 事前に元男だと申告しただろうが!」


「男の自覚あるかないかで全然違うのよ! ある意味最悪の覗きじゃない!」


 はー、はー、はー……。

 反論……ない。


「よっし! 私の勝ちよ!」


「……そういう問題なのか?」


 ……しまった、脱線した。しかし本人がこんな状態だと、部屋も同じってわけにはいかないか……。


「ごめん。私達は私達で話し合いたいことがあるから、ちょっと外すわね」


「わかった……オレは疲れたから寝る」


 ここで話は打ち切りとなった。



 で、冒頭に戻るわけなんだけど……。


「私は経済的に考えても、同部屋でいきたいんだけど」


「ええっ!? 私は反対です! 見た目は女の子でも中身は男じゃ、一日中覗かれてるみたいで嫌です!」


 ちょうど隣で欠伸をしていたリルにも話を振る。


「リルはどうなの?」


「あ、私? どっちでもいいよ」


「えっ? リルは平気なんですか?」


「リディアはこれから女として生きてくしかねえんだろ? だったらリディアも現状を受け入れるしかないし……私達も慣れるしかないだろ」


 すごい。リルが真面目でまともなことを言ってる。


 ぽかっ


「いたっ! あにすんのよ!」


「いや、何か急にサーチがムカついた」


 ……エスパーかよ……。


「でも……そうですよね……一番大変なのはリディア本人ですもんね……」


 リルの一言でエイミア陥落。チョロいわね。


「……ねえサーチ。パーティに加入してもらって、私達でサポートしましょうよ」


 ていうか、すでにその方向で動いてたんだけどね。


「まあ……そのつもりだったし。装備さえ揃えれば強力な前衛になってくれそうだし」


「そうだな。そうなれば私とエイミアで後衛。サーチが遊撃をしてくれれば……」


「あ! すごくバランス良いですね」


 そう。


「装備さえ揃えれば……ね」


「……今ある呪いの装備品は?」


“不殺の黒剣”(アンチキル)“逆撃の刃”(ストークウィング)


 正直微妙なのよね。


「……とりあえず短剣でいいんじゃないですか?」


 そうね……あとは防具か。



「……というわけでさ。うちのパーティにどう?」


「………………」


 ……何で逃げるのよ。


「お前らが絡むと、ろくなことがないんだよ!」


 何かあったっけ?


変態(マーシャン)に襲われるし! ワイバーンに空中で振り回されるし! 仕舞いには警備隊に突き出されるし!」


 ……言い返せない。


「でもさ、このままだと……また捕まるぞ(・・・・・・)


「え? そうなの?」


「ウソ!? サーチ知らなかったの?」


 知らない。私は頭を振った。


「……意外にも一般常識が欠けてるタイプか、サーチは」


 ……一般常識が欠けてるって……。


「確かに。それぐらいじゃないとビキニアーマーなんて着れにゃいい! いひゃい!」


「エ・イ・ミ・ア〜! 非常識さではあんたに負けるんだけど〜?」


「いひゃい! いひゃい! いひゃい!」


 このまま三倍くらいまで口広げてやる!


「ストーップ! とりあえず止めろ!」


 あ、ごめん。


「たく、お前らは……いいか? 一度でも捕まったことがあるヤツは、魔術で≪識別≫(マーキング)されるんだ」


 え!? そ、そうなの?


「数年様子を見て再犯の恐れがない、と認められて初めて解除してもらえるんだ……リディアはまだまだ先だからな、このままだと勤め先からの脱走扱いになる」


 そ、そうなるわね。


「だから私達で手綱を持つ(みはる)ということにすれば、ある程度は自由に行動できるっつー訳だ」


「くっ……!」


 なるほど。このままパシりのままか、私達と来るか。


「……そういえばマーシャンは?」


「……今は別の依頼でハクボーンにいるわ」


「そうか……ならまだ……」


 少し考えてるわね。


「ちなみに……お前らの旅の目的は何だ?」


「「「温泉」」」


 即答したら真リディアがずっこけた。


「…………くく……ははは! お前ららしいな……温泉か……その方が楽しそうだし……」


 そう言うと真リディアは右手を出した。


「わかった! またオレを仲間にしてくれ!」


 よし決まった!


「ようこそ竜の牙折り(ドラゴンブレイカー)へ! 歓迎するわ!」

「よろしくお願いします!」

「ま、楽しくやろうぜ」


 みんなで手を合わせた。すると。


「……ぶふぁ!」


 急に真リディアが吹き出した。


「ドラゴン……ブレイカー!! 何て恥ずかしい名前……! ギャハハハハハハ!」


「…………」

「サーチ、任せた」

「サーチ、任せました」

「二人とも、任された」


「ハハハハハハ! ハハ……いっ! いてててててて! 痛い痛い痛い! わ、悪かった、悪かったから止めて止めろ助けてー! いぎゃあああああ!」


 ……久々に私の腕ひしぎが唸った。

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