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第四話 ていうか、新たなる仲間は鎧の塊?

「じゃあ我々は盗賊(こいつら)を連行しますので……」


 そう言って隊長さんは、縛って繋がれた盗賊を並べて出発した。

 一応町までは連れていくそうだ……途中で歩けなくなれば容赦なく斬り捨てるそうだが。

 隊商(キャラバン)の皆さんともここでお別れ。アタシーとは別の町に向かうらしい。盗賊から守ってもらったお礼として、結構な量の食料ももらった。これでアタシーまで安心して行ける。逃げる算段でもできているのか、盗賊はなぜか明るい。ま、そこは隊長さんのお仕事だしね。

 ……結構距離が離れたところで盗賊が全員振り返った。



「「「「じゃあな、深爪とお花摘みー!!」」」」



「やめろバカヤローー!」

「もういやあああ!」


 ……リルとエイミアの叫び声が聞こえたらしく、盗賊達の笑い声が聞こえた……なんか憎めない盗賊だったわね。


「「「「トップレスも頑張れよー!!!」」」」


 ……前言撤回。今度はブッ千切る。


「まったく……で?」


 ……なぜか一人残った重装備の戦士に聞いた。


「なんであなたは残ったの?」


『……道』


「は?」


『道……案内……』


 ええっと……町まで案内するってことでいいのかしら?


『そう……だった……』


 そう言って倒れた。

 だった……?


「……とりあえず……この重そうな鎧を脱がす?」


「……ああ……たぶんこいつ、熱中症になったんじゃね?」


 そうでしょうね……この気温でこの装備(あつぎ)は自殺行為よ。


「じゃあ兜から……あづっ!?」


 リルが外そうとした途端に魔力で弾かれた。


「なんだこりゃ!? 呪いがかかってるじゃねえか!」


 確かに今のは呪いの反応よね。


「……ならば!」


 ≪偽物≫(イミテーション)でミスリル製のナイフを作った。うわ、MPごっそり持ってかれたわ……!


「これで……えい!」


 兜に突き立てるように刺すと、何かが割れたような手応えがあった。

 よし、これで呪いは解除できたはず!


「んじゃあ取るぞ……なんだこれ!? 重いな……」


 え? そんなに重いの?


「どれどれ……」


 ずしっ!


「うっそでしょ!? よくこんなの被ってたわね!」


「おーいエイミア! ちょっと頼む!」


 意外や意外、うちのパーティで一番の力持ちはエイミアなのだ。


「は、はい! せーの……ん〜〜〜!」


 …………すぽっ!


「ぬ、抜けました! ……あ、あれ?」


 こ、こいつって!


「「「リ、リディア!?」」」



 覚えてる?

 パンドラーネのときに私達を化かしてきた狐の獣人。結局私が警備隊に突き出して別れる形になったのだが……何でここに?


「……とりあえず全部脱がしてやった方がいいんじゃないか?」


 そうね……しかし何で呪いの兜なんか被ってんの? ていうか、リディアは呪剣士だったわね……。



(注! 呪剣士とは呪いのかかった武器防具しか(・・)装備できない難儀な人達。ゲームでよくでてる魔剣士みたいな感じ)



「てことは鎧も……」


 ばぢっ


「……ダメだな……サーチ頼む……」


 仕方ないわね……もう一回ミスリルのナイフで……。


 ばぢっ! バキン


「あれ?」


 ミスリルが効かない。相当強い呪いみたいね……。


「じゃあ……んんん!」


 もう一回作りだしたミスリルのナイフの純度をあげる。


「ん〜〜……」

「何か便秘の人みたはぐっ!」


 気が散るようなこと言うな!


「エイミア、お前バカだろ」

「い、痛い〜」


「んんん! できた!」


 よし! 今までで最高の出来映え!


「いくわよ! せいやあ!」


 ずんっ

 ビキ……メキメキ……


「あれ? 鎧にひび割れが……?」


 メキメキ……バカンッ!


「あら……」

「鎧……割れちゃいましたね……」


 ……まあ……後で謝ろう。


「あ、あれ?」


 ビリビリビリ


「おい、下に着てた服まで破れたぞ」


 ……へ!?


「この服……触るとピリピリしますね。たぶん服も」


 呪いシリーズすか……念が入ってるわね。


「まさかと思うけど……」


 下着を触ってみても……。


 ばぢっ


「呪いマニアかよ!」


 まあいいわ。意地でも呪いシリーズ全部解呪してやる!



「はー、はー……これで最後!」


 ばぢっ……バキン


 ま、まさかパンツまで呪いシリーズとは……しかも高純度のミスリルが砕けるって……どんだけ呪いが強いパンツなのよ!


 ブブ……バリバリン!


 何かガラスが割れたような音が連鎖したかと思えば。


 ぼんっ!


「わっ!」


 リディアが突然爆発した。そして。


「!? ……はああああああ??」


 リディアは別人になっていた。



「う……ううん……」


「あ、気がついたみたいです」


 介抱していたエイミアが私達を呼んだ。


「……しっかしここまで変わるかね……」


 リルが呆れ半分で呟く。

 うん、私もそう思う。

 栗色の髪が真っ白に。肌の色はさらに黒く。スレンダーとも言い難かった体型は、メリハリがきいた理想的な体型に。面影があるのは顔くらいのものだ。


「大丈夫ですか?」


「うーん……いてて……」


 ……あれ?


「「…………だったは?」」


「は?」


 私とリルは顔を見交わす。


「でもあんた……」

「……リディアだろ?」


 リディア(?)はしばらく悩んでから。


「……ああ。リディア……だな?」


 なんで疑問形なのよ!


「あれ? 別人か?」


「あ? 本人だよ。お前らサーチにリルにエイミアだろ? ……あれ? 変態ロリエルフが居ねえな?」


 間違いないわ、本人だ。


「リディアちょっと聞きたいんだけど。なんで見た目がすっかり(・・・・)変わったの?」


「はあ?見た目って……げ! 呪刻の布地は? 束縛のバンドは? 無い! 無い!」


 見る限りメチャクチャ焦りだしたわね。


「おいサーチ! どこやった! どこへやったんだよ!」


 私の肩を掴んで揺すり始めた。

 痛い、痛い……。


「ちょっと痛いわよ! 離せっての!」


 私はリディアの両手を払い退ける。


「あんたの着てたものは全部解呪したらなくなっちゃったわよ」


「………………へ?」


「だ・か・ら! 解呪したらバッラバラの木っ端微塵になったのよ!」


「………………………………はう」


 ……リディアは倒れた。ちーん。



「……おぅおぅおぅおぅおぅ」


 セイウチかお前は。

 ちなみに泣いてます。


「終わった……オレの望みは全て断たれた……おぅおぅおぅおぅ」


 オシャチといいこいつといい、まともな泣き方するやついないのか!!

 ……あ。


「エイミア」

「何ですか」

 ごんっ

「いた! ……びぇ〜」


 ……これが普通かな……。

 ごめんねエイミア。思わず試してみたくなったのよ。


「で? あんたは何で泣いてんのよ?」


「お前のせいだよ!」


「はあ?」


「あと一年……あと一年で男に戻れたんだ(・・・・・・・)!」


 ……………………はい?



 その後、落ち着いたリディアから事情を聞き出した。

 リディアは元々は狐の獣人の首長を継ぐ立場にあったそうだ。

 それがある日。


「この〝女化の金鎖〟を身に付けちまったばっかりに……」


 これ、身に付けた人を女の子に変える呪いがかかっていたらしい。当然外せなくなって途方に暮れていたとき、旅の呪剣士からアドバイスをもらったそうだ。


「もっと強い呪いの装備品を身に付ければ……〝女化の金鎖〟の呪いの進行を遅らせることができるんじゃないか、と……」


 リディアはすぐに実行し、ありとあらゆる呪いの装備品を集めた。

 その中で〝呪刻の布地〟と〝束縛のバンド〟が他の呪いを阻害する効果があることを発見した。四六時中身に付ければあるいは……と今まで頑張ってきたのだが……。


「サーチ、お前が解呪したばっかりに〝女化の金鎖〟の呪いが一気に進行しちまったんだ! どうしてくれるんだよ!」


 ……?


「ちょっとごめん。おかしくない?」


「何がだよ!」


「なんでさ、〝女化の金鎖〟の呪いだけ(・・)発現してるのよ?」


「……そういえばそうだな」


「呪剣士なら呪いは発現しないんですよね?」


 ……そのはずなんだけど。


「ちょっと見せてもらっていいですか?」


 金鎖を覗きこむエイミア。目の前にでっかいおっぱいが来たもんだから顔を赤くしたリディア。やっぱ中身は男なのね。


「これ……呪いじゃないです。祝福ですよ(・・・・・)


 え? 祝福?


「呪いと違って祝福は身に付けた人に害を与えることはありません。だからこの金鎖はより綺麗になる為の(・・・・・・・・・)装備品です」


 あらら。


「祝福の装備品は呪いに大きく反発する作用があります。だから……」


「つまり……良かれと思って装備してた呪いシリーズが逆に祝福をパワーアップ(・・・・・・・・・)したと?」


「おそらく……だから綺麗にするだけじゃ終わらず……性別まで……」


 …………あらら。


 リディアは……完全に沈黙した。

 そりゃそうか。治ると思ってしてきたことが真逆の効果を発揮してたんだからね……。

 リディアはそれからしばらく魂が抜けてました。



 ちなみに。

 やたらと過去形で語る変な口調と盗癖は〝過去を踏みにじる靴〟と〝盗賊の指輪〟という呪いシリーズが〝女化の金鎖〟の祝福によって変な反作用を起こして顕現してたらしい。



 ……。

 リディア……本名ルーデルはしばらく私達が預かることになった。

 マーシャン……あんたより変なのが仲間になったよ……。

やっと書きたかった真リディアの登場です。

今度はTS!さてどうなるやら。

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