第十九話 ていうか、みんなで誓うんですよね!
ついに千話目! 皆さんのおかげです! ありがとうございます!
パーティに復帰したエリザがいれば、戦法も幅が広がって戦いやすくなる。それを実践するため、火星を離れて自動運転に切り替えてから訓練場に集まった。
「んじゃあ何か、私とエイミアとでサーチに触れば勝ちなんだな?」
「ええ。リルの≪身体弓術≫やエイミアの≪蓄電池≫を当てるのも有効でいいわ」
「そ、それって私達にずいぶん有利じゃないですか? 本当にいいんですか?」
「構わへんよ。但しウチらも反撃するさかい、気ぃ付けてや」
「で、私達が十五分間逃げ切ったら、私達の勝ちね」
「……わかった。ただ、負けたら何でも奢るって約束、忘れるなよ?」
「とーぜん。いつでもいいよー」
リルとエイミアが目配せをし、同時に走り出す。タワーシールドを構えたエリザにリルが、私にはエイミアが迫り。
「はあああああああっ!」
「やあああああああっ!」
「ふんっ!」
どげぇん!
「フニャッ!?」
「たあっ!」
ずむっ!
「んぎゃひぃ!」
「お、重いぃぃぃ!」
「この程度の重力の盾で動けんのかい!」
「ぶくぶくぶく……」
「エイミア。エイミアー? ……へんじがない。ただのしかばねのようだ」
結局。
開始十秒でほぼ勝負がつき、そのまま十五分経過して私達の勝ちが確定した。
ワッシャワッシャワッシャ
「んんん……エイミア、もう少し左かな」
「は、はい」
ガシュガシュガシュ
「何や何や、全然力の入り方が為ってないで。もっと力を入れぃや」
「は、はい……」
私が勝った場合は、二時間ほど私達のアカスリをする、というのが条件だったので、リルとエイミアには勤労の汗を流してもらってる。
「そういやエリザ、少し戦いかた変えた?」
「ん、んん……最近はカウンター技をメインにしとる。得意なシールドバッシュを応用してな、シールドカウンターっちゅー技を開発したんや」
要は盾を使ったクロスカウンターでしょうが。開発したも何もないわよ。
「で、タワーシールドに取り込んである重力の盾の力を同時開放して相手を押し潰すんや。今回は動けなくなる程度で抑えたんやけどな……もっと力入れぃや!」
「は、はいぃ!」
「なるほどねぇ……」
「……つーかサーチん、あれは得意戦法なん?」
「あれって……ああ、股間蹴りのこと? 最近蹴りの威力が増しててさ、多用はしてるわ。特にエイミアには≪蓄電池≫があって厄介だから、一発KOを意識してたから」
「あ、あれは反則ですよぅ……」
「あんたの≪蓄電池≫も十分に反則技よ……今度は右側ね」
「は、はい……」
二時間かけてアカスリをしてもらって、心身共にサッパリしました。
「ん〜……アカスリしてからの温泉は格別ね」
「ちょいヒリヒリするんやな」
そう? それはリルがヘタなだけじゃない?
「う、腕が……」
私達の隣には筋肉痛で腕が上がらないリルと。
「ふはぁ〜。疲れが取れます」
電気で早々に筋肉痛を治療したエイミアが気持ち良さげに浸かっている。その前に浮かぶ双丘をジーッと睨むリルの顔が面白い。
「…………」
「……リファリスのこと考えてた?」
「ひゃう!? な、何やいきなり!」
「いやさ、あんたの背中にリファリスの顔が浮かんでるから……ていうか、あんたまだ種族スキル使いこなせないの?」
「ど、どうでもええやん!」
エリザはファイアーカメレオンの獣人で、肌の色を変えられる種族スキルが使える。ただエリザはこれが大の苦手で、いまだに使いこなせていないのだ。
ちなみにだけど、背中にリファリスの顔が浮かんだりしたのは、使いこなせてない種族スキルを無意識に使っているのだ。つまり、考えてることがバレバレだったりする。
「あ、背中に『図星』って出ました」
「わっかりやすいなぁ〜」
「〜〜っ!! み、見んとってや!」
あはは、結構おもろいかも。
「エリザ」
「な、何や」
「思い出してごらん……あの夜のリファリスとの【ぴー】を」
「なっっ!!?」
顔を真っ赤にするエリザ。すると、背中にはありありとリファリスの……。
「うっわー、エリザったらだいたーん」
「きゃ、きゃあきゃあきゃあ」
「な、何を見せるやがんだよ!?」
「な、何や! 何が映ってるんや!」
「リアルにエリザがリファリスに【ぴー】されてるとこ」
「な゛!? い、いやあああああああああああっ!!」
「……そんなに怒んなくでもいいじゃないー」
「びえええっ」
「い、痛いニャ……」
「じゃかあしいわ、ドアホ!!」
三人仲良くエリザの拳骨をもらった。まあ、いいモノ見れたから良かったけど。
「ていうかエリザ、ちょっと立ってくれる?」
「な、何や」
「いいからいいから…………あ、ホントだ」
「な、何やねん、人の尻をジロジロ見て」
「あ、いやね、リファリスから『エリザのお尻にはハート型のホクロがあるんだ』って聞いてたから」
「っ!!!」
エリザはお尻を押さえて座り込む。飛び散った湯が私の髪を濡らした。
「な、な、な、なんちゅう会話しとるやあああああああっ!!」
「え? そうねぇ……エリザは【ぴー】のときに【いやん】されると【ばかん】になるとか、激しい【あはん】のときおごおっ!」
「ええ加減にせいや!」
ま、また拳骨をいただきました……トホホ。
湯上がりにお酒を飲みながら、今までの経緯を話す。
「そっか……サーチはヴィー達から砲撃を食らったんかいな……」
「外れたからよかったけど、当たってたら木っ端微塵だったわね」
「エイミアは?」
「コーミちゃんと必死に逃げ回って……何で皆で私達を攻撃してくるのかわからず……」
「……リルは?」
「………………娘に、ね……」
「……堪忍や。聞いてあかなんだな」
「そういうエリザだって、主君に背くことになったんだろ? みんな似たようなもんだよ」
「……ますます許せへんな、ブラッディー・ロア……そして〝飛剣〟」
「……院長先生は……〝飛剣〟……私が殺す」
「サーチん?」
「お願い、これだけは私に殺らせて。仲間を分裂させるような真似した報い、必ず受けさせる」
「……ええんやな?」
「いい。これは私にとってのケジメでもあるし」
そこで一旦話が途切れる。しばらく静かな時間が流れ……。
「……ねえ」
「ん?」
「みんなは……私を裏切らないでね?」
「当たり前だ」
「絶対にサーチの味方です」
「ウチももう御免や」
「……みんな……絶対に勝つわよ。そして……仲間を取り戻すわよ!」
「「「おー!」」」
まだまだ続きます。これからもよろしくお願いいたします!




