第一話 ていうか、腹ペコで盗賊。
新章です。
旅立ったときは良かった。若干の寂しさは感じたけど。
「精々したー!」
という開放感の方が強かったから。。
だけど。
ぐぎゅるるる〜……
「……お腹すいた」
しまった。何も準備してなかった。前世でもあちこち飛び回ってはいた。だけど、いまいる世界は前世でいえば中世くらい。コンビニもスーパーも無いのよね……。
それに私は前世では野営の経験があるけど、この世界では皆無だ。当然、食べられる草とかキノコの見分け方なんてわかるはずがない。≪鑑定≫なんて便利なスキルもない。
……ウサギとかイノシシとかクマとかいないかしら。
ぐぎゅるるる〜……
「うぅ……」
一応、旅立ちの際に院長先生が色々とくれた。
1、銅のナイフ。
攻撃用というよりは雑用。草刈ったり食べ物切ったり。
2、革の装備初心者セット。
つまり戦闘用の防具で、鎧と靴と籠手のセット。何故か胸がガバガバ(怒)
3、旅の必需品初心者セット。
薬草だったり毒消し薬だったり。非常食はもう食べた。
4、針金30本。
5、革袋。空。
……以上。
今は何の役にも立たない。
特に針金は「これで練習しなさい」てニッコリしながら院長先生言ってたけど、腹は一切膨らまない!
ていうか、絶対私の魔術、見当ついてる感じよね。だったら教えてくれればいいのに。
ぐぅぅ……
ああ、食べ物……針金より食べ物……。早く町に着ければいいけど、あと三日くらいかかりそう。
……準備不足だったわ、はあ。
それから四時間。太陽を頼りに北に向かってブラブラ歩いてたら。
ゴブゥゥ!
ゴブリン。
ブヨフヨン!
スライム。
ゴブゴブゴブゥゥ!
ゴブリン、ゴブリン、ゴブリン。
「……モンスターがよく出るわねえ」
でも食べられるかわかんない。はあ……。
一匹目、素早く背後に周りこんで針金を鋭く変化して刺殺。
二匹目、針刺してもグニグニするだけだったので銅のナイフを鋭くして細切れ。
三、四、五匹目。
私の存在に気づいてない隙に背後から二匹同時に刺殺。で、残り1匹には銅のナイフを投擲。
ふっ、完勝。
ていうか、こんな戦い方じゃ重装戦士じゃなくてアサシンよね、普通は。
この世界にもアサシンという職業は一応ある。私が「選定の儀」で選んだ職業はある理由で重装戦士なんだけど、アサシンのステータスとは真逆になってる。
(注・重装戦士とは、強力な装備品を装備できる代わりに『素早さ』が全職業中、下から2番目。ドラ○エの戦士みたいな感じ)
……説明、どうも。
まあ、そういう職業なんだけど、強いはずの『力』が最低、遅いはずの『素早さ』が最高という変な重装戦士になってるわけです。
それじゃあ、何故に重装戦士を選んだ理由はなんでしょう?
当てた方には、私のサービスショットを♪
ちっ、ちっ、ちっ。
はーい、時間切れ。
では、答え。
それは、重装戦士が……
ていうか、ちょっと待って。
……。
また何かいる。モンスター……の気配ではない。
「これは……人ね」
それも、結構な人数。
「これは……盗賊か」
うーん……食料持ってるかな。
……じゅる。
木に登って待機。
針金を数本、魔法で鋭くしておき……ここで迎え討つ。
「おい、ほんとにいたのか」
「間違いねえよ。ボーッと間抜け面したガキが歩いてたんだよ」
「こいつの≪千里眼≫のスキルは間違いねえ。もう少し探すぞ」
ふーん。≪千里眼≫か……どうりで私が気が付かなかったわけだ。
さて、殺りますか……まずは針を投げて刺殺。
ビュンッ
「!」
「いてえ!」
「な、何だ!?」
え!? さ、刺さらなかった!?
「ちぃぃ!」
私は銅のナイフを魔法で強化すると、飛び降りた。
「ぐぅふっ!」
ドサッ
「……っ……はあ、はあ」
ふう……どうにか……勝った。『素早さ』の……おかげで……何とか、なったけど。
「は、はあ、はあ」
やっぱ……『体力』が……まだ低い……か。奇襲なら……今のままで、いいけど。普通の、戦闘だと、きつい。
「ふう、ふう……」
あー、暑い。
革の鎧がガバガバだから風通しがいい……って、うるさいわ!
それにしても……何で刺さらなかったんだろう。三人の死体を調べてみる。
「針が当たった場所は傷はあるわね」
だけど……針ではなく針金があたった感じだ。確かに強化したはず……何でだろう。
「……私の魔術にはまだまだ謎が多いみたいね」
とりあえず、投擲には使えないことはわかった。
そういえば、忘れてた。私が重装戦士を選んだ理由。
ビキニアーマーって、装備できるの重装戦士だけなんだよね。
「ビキニがないなら、ビキニアーマーよ」
この世界にビキニアーマーがあるのは確認済み。さあ、目指すは戦闘中に揺れる胸!