#008「休日:二月七日」
#008「休日:二月七日」
いますぐ、スーちゃんに落花生をお見舞いしたい。節分は終わったけど。
湯煎で溶かしたチョコレートを型に流し込みながら、わたしは、そんなことを考えていた。
そもそも、コンパスくんが前に居た部署が乙課だと知っていれば、もっと慎重に行動したのに。後から悔やんでも、先に立たないのだけど。
とりあえず『立春を過ぎてユキちゃんにも春が来たか。これがホントの雪解けだ』とはしゃいでいたスーちゃんには、肘で脇腹を突いておいた。苦悶するがいい。
さて。このまま冷やして固めれば、申し訳程度の義理チョコが完成だ。
床に伸びてるスーちゃんに『いつまでもそうしてるようなら、粗熱が取れたチョコレートと一緒にチルドする』と軽く発破を掛けて起き上がらせたところで、本題に戻ろう。
いま作った義理チョコとは別に用意した、デパ地下で買ってきたブツについてである。
スーちゃんの助言と誘導に乗せられて買ってきたのは良いが、来週、渡せる気がしない。
だいたい、どうやって本命さんを呼び出せば良いのか、皆目見当が付かない。
その前に、誰を本命さんとすれば良いのだろうか? 揺れて、迷って、戸惑うばかりの、わたしの心。