#007「休日:一月三十一日」
#007「休日:一月三十一日」
パッと見、地味で目立たないキャラクターに限って、後半から重要なポジションに躍り出てくるから、侮れない。
『映画は、総合芸術なのです』という山本くんが、いつもと違って朗々と語った内容をまとめると、以上のような結論になりそう。
ただ、いわゆるヲタク系の人にありがちな、一方的に捲くし立てる口調では無く、こちらの理解に合わせて話を進めるところは、山本くんらしいと思った。
それにしても、今日は山本くんの意外な一面を、何点か発見してしまった。
一点目。珈琲党であるということ。年齢の割に童顔で、カフェオレしか飲めませんってイメージなのに、平然とブラックをいただいちゃうんだもの。
二点目。愛煙家であるということ。帰宅後や休日にしか吸わないので、職場でも、知ってる人は、ほとんど居ないのだとか。
禁断症状が起きて辛くないのかと訊いたら『ニコチンが切れなくても、イライラする人はいますよ』と言われた。はさみさんのことだろうか?
三点目。芸術肌であるということ。私服にしても、作品のチョイスにしても、店選びにしても、どこか洗練されたセンスが感じられた。日頃の草臥れたスーツ姿からは、想像できないオシャレさんである。
この五年ほど、わたしは山本くんの何を見てきたのだろうか?
そんなことを考えざるを得ないくらい、良い意味で予想を裏切られた一日になった。