#005「休日:一月二十四日」
#005「休日:一月二十四日」
体育会系の人間は、きっと脳味噌まで筋肉で出来ている。間違いない。
着ぐるみのマスコットから風船を貰って喜ぶ少年や、何を見てもキャア可愛いとしか言わない女子校生に交じり、松井くんは、いつになくノリノリで、興奮を抑えきれないでいた。
わたしも、その輪の中に入って盛り上がれば良いのかもしれないが、昔から、こうしたお祭り騒ぎとは距離を置いて傍観してしまうところがあり、これはもう習性に近いものなので、いまさら変えようとは思わない。
『せっかくのフリーパスだから、全アトラクション制覇してやるぞ』と意気込んでる松井くんの姿に、まだまだ学生気分が抜けてないなぁと、しみじみ平和を噛み締めていた。
ジェットコースター、メリーゴーラウンド、コーヒーカップ。言葉の額面通り、目の回る思いをしながら、腕を引っ張られること十五回。
最後は、入り口に程近い観覧車に乗った。定番コースである。そう、恋人同士の。
頭の中が花畑のハッピーボーイとて、そのことを知らない訳ではなかったようだ。
これまたフィクションでもお馴染みの定番シチュエーションだが、ゴンドラが頂上に達したところで、思いの丈を告げられた。
あと四、五歳若ければ、即座に結論を出したことだろう。もちろん、お引き受けする方向で、である。
ヤングエネルギーに気圧されそうなところを何とか持ちこたえ、結論は後日に持ち越させてもらった。アァア。なかなか結論が出ない会議に、文句を言えなくなってしまったぞ。