〜生贄に呼ばれる悪い人の奮闘記〜
生贄に呼ばれた男は異世界ではチートアイテムとなる『極魔の輝石』となる素質がある男だった。彼は現世では影で「ゴミカス悪党」と呼ばれるくらいの悪人であった。
現世の報いが異世界に!
しかし、男は諦めない。『生きて生きて生きぬいてやる!』
そんな男に集う仲間はまっこと正真正銘の「人間の屑」。『極魔の輝石』が呼び寄せる人間の屑に引きずられ、彼は無情な世界に身を投じる。
そんな彼に立ち向かうのはチート能力 持ちの勇者「ああああ」。ふざけた名前とは裏腹に眉目秀麗、才色兼備、文武両道の完全無欠の勇者だった。
さあ、その男は以下にして勇者に勝つか。いや、以下にして負けないか。
『…ここは、どこだ?』…彼が目覚めたとき、何故か台に縛り付けられていた!
なぜか?どうしてか?…彼は記憶を反芻したが、思い当たりがない。
困惑した彼をよそに黒ずくめのローブの男が短刀を持って佇んでいた。
『おい、冗談はよせ!』
彼は悲壮な声で叫んだ。
彼の声を無視して、その男は短刀をかかげ、彼の喉に突き刺さんと身構えた。
「貴様は壮大なる我が魔術の生贄となるのだ。私がカミをも凌駕する力を得るためにな!」
そう!彼こそは暗黒の生贄!生贄になるために捕らえられた可哀想な人だ。
…だが、人はそれを自業自得と呼ぶ。何故自業自得なのか?
俗に言うブラック企業勤務の彼。しかし、彼はブラック企業に虐げられている側ではなかった。むしろ悪事に手を貸す打算的なクズ人間だった。
社長の機嫌を取り、自分は安全な位置から相手を締め付ける…真に正真正銘の人間の屑。それが彼だ。
………
「もういやだ!こんな会社辞めてやる!」
ここは現代の日本であろう。舞台は俗に言うと『ブラック企業』。騒いでいる者は、その圧制に耐えられず怒りを放つ者だ。
『辞めてどうするの?』
この一言で激昂したものは一瞬ためらう。なぜためらう。そう理由があるのだ。今の日本は無職には…働かざる者には非情だ。
それを知るからこそ、この怒れる者はためらう。辞めた後の保証は幾ばくかの保護のみ。次の仕事は約束されていない。
だが、能力がある者はためらわない。そう、ためらわない。彼が逡巡している理由は「無能」だから。いや、無能と思わされている。
彼はそのような人の心理を見抜き、足元を見て脅しをかける。
基本勇者が最強です。一対千人に勝つくらいの最強です。しかし、その勇者を手玉に取ろうと毎回罠にはめる彼が以下にして勝つか。
はめてもはめても、チート能力で罠を打ち抜く勇者に、彼は勝てるのか。そんな感じです。