旅立ちとゴブリン
「レック様には申し訳ありませんが我々の命に関わる事かもしれませんので…」
老人がレックに袋を渡す。
「これが我々に出来る精一杯で申し訳ありません」
袋の中身は金の硬貨が3枚銀の硬貨が9枚銅の硬貨がジャラリと入っていた。
最初は口封じだなんだかんだ言っていたがユウトが「同郷のよしみで命だけは助けてやるよ」との一言で放逐が決まった。
レックには願ったり叶ったりだ。
神の依頼?そんなのかんけーねーし!
だって神のおっさんも別に受けなくても良いみたいな事言ってた様な気がしたし!
そんなこんなでレックは今城の裏手側の出口で何処かに行けと言われて旅立つ所である。
「ご迷惑おかけしました」
一応挨拶の出来る日本生まれとしては何か一言言ってからこれが日本の心よ。
さて余計なしがらみも無くなりとりあえず城の裏手の森に放り出されたは良いがいかんせんここの立地がわからねーんだよね。
とりあえずプラプラするか。
何せ神の所からチョッパねた鞄には食べ物も入っていたからね。
食べ物は1週間分はあるし飲み物もある。
とりあえずデスラから靴出してもらって履いておこう。
そう何を隠そうこのレックという男はサバゲー大好きで行く前に死んだのだ。
だから安全靴(サバゲー用)のが鞄には入っていた。
しかもそのくつはSWATさんも愛用の本格的なもので防水性などにも特化してる上に山などの移動にも適した物なのだ。
「デスラー」
レックがデスラを呼ぶとスッと消えていたデスラが現れた。
とりあえずデスラをモミモミするとレックは靴を出して貰い履いた。
料理に関しては長い飲食経験とサバゲーのお陰か結構出来る上に肉や魚もずっと触ってきたので捌く事が出来る。
18の頃にサバゲー中に迷子になり1週間程野うさぎや蛇で生活した事もある。
困る事は特には無いな。
所でデスラ喋れるのか?
バオウが喋れるらしいしその上位のデスラなら喋れてもおかしくは無い。
「キュイ?」
デスラが可愛く鳴いた。
とりあえずデスラが可愛かったので思わずモミモミしてしまったのは言うまでも無い。
そして城を出て既に10時間が経とうとしている頃とりあえず何にも出ない、居ない。
コレは食料危機になるかも知れないと耳を澄まして水源を探すと何やら争っている音が聞こえた。
「ギャガ」
「ギギギャギャギャ」
コレはもしやテンプレ?
しかもこんな鳴き声もしやゴブだろ?
テンションが上がったレックが音を立てない様に風下から音のする方へ移動して行く。
サバゲーで音を立てての移動は狙ってくれと言っている様な物だし、相手によっては訓練犬を連れてくる事もあったので風下に回った言わば癖である。
「こいつら強いぞ」
「ゴブリンの癖に生意気だね」
「ヤバイぞゼラがやられた」
どうやら1人やられたらしい。
しかも1人やられた事で陣形が崩れもう1人やられた。
2人で20近いゴブリンに囲まれている。しかもゴブリンの癖に棍棒でなく剣を持つのが半分1匹は俺の2倍ぐらいの大きさで立派な剣を持っている。
もしやゴブキンさんですか?
それともいわゆるジェネラル?
しかもこのデカイゴブリンの真後ろから戦況を見ている俺。
これ見つかったらヤバくね?
デスラにとりあえずサバイバルナイフを出して貰う。
大きなゴブリンが吼えた。
「ギャベベッチャラ」
その声に反応して男の方に剣を持つゴブリンが集まり、女の方は棍棒と無手のゴブリンが囲いを作った。
とりあえずゴブリンには男しか居ないから女はさらって犯す。
キング>ジェネラル>ウィザード>ソード>雑魚の序列が存在し動物ならなんでも交配出来るのがゴブリンの特徴である。
ただしキングやジェネラルは人間の女を好み雑魚を増やしてはさらいに行かせるなどと結構頭も良い。
あの女はゴブキンに目をつけられたのか。
レックは助けられるなら助けるが無理はしない。
実際は瞬殺なのだが、まだこちらに来て戦闘もしてなければ狩りもしていない。
そして男がやられそうになった時が最もゴブリン達の気が緩む時。
そうあの男さえいなければ後は女を嬲るだけなのだから。
レックはすぐにでも助けられるなら助けたいがその衝動を抑え気配を消した。
それは5分?いや10分ぐらいでやって来た。
男が腕を切られたのだ。
「ラーズ」
女が叫んだ。
ゴブリンキングが嫌らしい顔で女を見た。
その瞬間レックはスッと草陰から飛び出しゴブリンキングの首を切り裂いた。
「ぐぎゃ?」
ゴブリンキングは何が起こったのかも分からずに息を引き取った。
キングの首が落ちた事により統率の無くなったゴブリン達を蹴り飛ばしナイフで刺しデスラが溶解液で溶かし、ものの数分でゴブリンを殲滅した。