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夜の月に笑われて  作者: 宮城まこと
破滅の旋律
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第二話 捜査②

 あれから数時間、氷見からの連絡はない。本当に奴からすれば遊んでいるだけなのか? それとも俺を今もどこかで見張っていて、嘲笑ってるのか。

 取り敢えず、響子さんの安否を確認しよう。自分の電話を取り出し、リダイアルで彼女に電話をかける。

 呼び出し音が一回、二回。回数が重なるごとに不安も重なる。心臓を抉られるような嫌な感覚。頼む出てくれ。

「もしもし助手くん?」

 良かった。まだ大丈夫だ。

 安心しきってしまい、言葉が見当たらない。それを不審に思ったのか響子さんが問い質す。

「一体何があったの? 昨日から見当たらないけど、さっさと私の所に来て朝食を作りなさい。あっ、そう言えばついさっき、南方さんが来てたわよ。用事は貴方にあるみたいだったけど……」

 もう、事務所に警察が。居場所は気付かれていないと思うが、いやはやここの警察の行動の速さは見上げたものだ。

「響子さん、落ち着いてよく聞いてくれ。俺は――」

 次の言葉を発しようとした瞬間に警察車両のサイレンの音が近くで鳴り響く。程なくしていたぞ! と誰かが叫ぶ。

「悪い、またかけ直す!」

 通話を切り、慌ててビル影に身を隠し、様子を伺うがどうやら俺ではないらしい。違う事件の犯人が追われているようだ。

 全く心臓に悪い。状況は最悪だ。周りの人間が敵に見えてしまう。そう考えただけで気がおかしくなりそうだ。

 誰に誰にも相談できない。

 頭を抱え、壁に背をもたれかかると着信音が鳴る。

「もしもし。お前か」

「織神響子に電話したね。全部知ってるよ。大丈夫! 通話内容までは聞かないから。さてこれで分かっただろう。キミは警察とこの市全体が敵だ。さぁ第一問をキミにあげよう。それじゃメールで確認してくれたまえ」

 通話が切れ、それ以上あいつに問うことが出来ずに携帯を握りしめながら、メールが来るのを待つ。

 そしてメールが来る。そのメールにはこう書かれていた。

『錨を上げる場所。四肢を喰らった獅子が眠る場所。悪しき魂を切り裂き絶望を知った姫の御心のままに』

 一体何のことか分からない。

 俺は周りを見ながら、場所を移動する。さずがに一つの場所に留まるのは危険すぎる。足早にこの場を離れ、警察が来る可能性が低いルートを選ぶ。

 クソ、生きてる心地がしない。落ち着け、この暗号はあまり好きではないが解けないはずはない。

 響子さんに連絡が取れないが、出来ないわけじゃない。気を付けてこのメールを見るんだ。


 俺たちに関連がある場所に違いない。よく考えろ、錨ってのは船だよな。錨を上げる場所、四肢を喰らった獅子が眠る場所。

 そうか……港か! 錨を上げる場所であり、あの獅子が眠る場所でもある。そうだ、あそこで俺は獅子を斬ったんだ。

 絶望を知った姫の御心のままにとは野中さんの事か。簡単だが、合点が行く。そうと分ければ行ってみるしかない。

 俺は急いで港に向かう。道中、警察車両が通っていたが、人混みに紛れ到着した。

「ここ……なのか?」

 周りを見渡すが、誰もいない。

 もしかして、間違ったか? 四肢が眠る場所だろ? だとしたらここ以外どこがある。そうこう考えているうちに気が付けば、あの倉庫に立ち寄っていた。

 ここは響子さんが野中さんを犯人だと突き止めた場所。そこにただ一人、立っている人がいた。

 あの小さな背中、見たことがある。誰だかすぐに解った。

「三部?」

 近寄った。様子がおかしい。

「香澄、これを……」

 目が虚ろな彼女はボロボロになった手紙を手渡した。

「誰からこれを!?」

「氷見蓮九郎さんから。それじゃあたしの役目は終わったから行くね」

「おいちょっと待て! なんでお前が」

「動くな香澄准兵!」

 質問しようとした瞬間に、聞き慣れた男の声が聞こえた。何度も聞いている、それが誰なのか必然的に分かった。

「南方さん……」

 そうそこには南方さんとしずくさんがいた。その眼は友人を見る目ではなく、犯人を見る冷酷な眼だった。

「動くな。頼むから大人しく捕まってくれ。誰もお前を犯人だと思っていない、真犯人が捕まるまで大人しくしてくれないか?」

「すみません。それは出来ません。俺にはやることがあるんです」

「自分が殺人犯だと言われてもやりたいことがあるのか? それはなんだ、逃げる事か? 違うだろ。話してくれ。何が起きている?」

「教えられません。必ず、無実を勝ち取ってみせますから。行きます」

「動くな。って言ってんだろ」

 南方さんは銃を向け、こちらを睨めつけている。

「止めてください。俺は何もしてませんよ」

「黙れ」

「え?」

 南方さんは冷たくそう言い放つと、構わず発砲。俺の右足に見事に命中する。一瞬何が起きたか分からなかったが、数秒後に激痛が襲う。

「あぁぁぁっぁああ!?」

 出血を抑えるために手で傷口を押さえるが、血が止まらない。

「どうしたんですか!? どうして撃って――!!」

 見えた。南方さんの後ろに憑神がいることを。しかもそれは一体だけではない。しずくさんにも三部にも憑いている。どうなっている。

 全て同じ憑神だ。しかも、霧にかかって姿が見えない。

「死ね」

 三部がそう言いながら、すかさず蹴りを脇腹に入れる。

「ガハッ!? お前もか」

 何故みんなが俺を攻撃する? 一体何があった。あの憑神を殺せば解けるのか? ものは試しだ。じゃないと俺が死ぬ。

「クソッ!!」

 傷を堪え、影から刀を取り出し、三体同時に切り裂く。さすがに響子さんより下手くそだが居合切りでこの場を制した。

「畜生。なんだってんだ……」

 全員が気絶し、その場に倒れ込む。

「なんだんだよあいつ。いって……。取り敢えずこの場を離れよう」

 足を引きずり、倉庫を後にし、日が沈み始めた。

謎の憑神の正体はいかに?

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