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夜の月に笑われて  作者: 宮城まこと
破滅の旋律
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第一話 捜査①

 息のしづらい空間、頭がまだ痛む。意識がはっきりとしない、ここは一体どこなんだ? 霞む視界に見えたのは見慣れない景色。

 腕は縛られている。身動きはどうしても取れない。

 俺は一体何をされたんだ?

 記憶が繋がらない、俺はどこでどうしていたんだっけか? そうだ、響子さんとあの事件を解決してそれから、あの暗い夜道を歩いていて……。

「起きたかい? 香澄准兵くん」

 男の声が聞こえる。南方さんでもなく、安瀬馬さんでもない聞き慣れない声だ。

「あんたは誰だ……?」

 当然の疑問だ。男はそれに素直に答える。

「僕の名前は氷見蓮九郎。キミの好きな織神響子の仇だ。それ以上質問はあるかい?」

「氷見……蓮九郎?」

 目の前にいるのが氷見蓮九郎。眼鏡をかけ、ぼさぼさな髪の毛をしている。一見優しそうな笑みを浮かべ、殺人をしている人間とは到底思えない。

 ようやく頭がはっきりとしてきた。思い出した、俺はこいつに会って頭を何かに殴られて、ここに連れられて来たのか。

「そう。キミと少しお喋りがしたくてね。手荒い方法だけど来てもらったよ。どうかな気分は? 瞳孔もしっかりしてるし、大丈夫そうだ」

「気分は最悪で全然大丈夫じゃない。どうしてあんたが?」

「言ったろ? お喋りしたいんだ。キミとね。色々お話ししよう。僕が知ってる織神響子の事とキミの知る織神響子の事を」

 氷見の近くにあるテーブルに、淹れたてのコーヒーを手に取り、(すす)った。

「あんたに話すことは何も無い。早くこれを解け!」

「イライラするなよ。それを取ったらキミは斬りかかるだろ? 怖い怖い。キミの緊張を解くために小話を一つ」

 足を組み、テーブルに肘をつき話し始める。

「昔、とても可愛らしい少女がいました。その子はお金にも友達にも苦労せずに毎日愛する家族と過ごしていました。だけどとある日。少女はある男と出会った」

 俺は黙って聞いていた。それしか出来ないから。

「その男は人の不幸を蜜の味と心得る人で苦痛にゆがむ顔が大好物で特に美しい物を壊すのが好きでした。その子の家族を見た男はこれも壊したいと心のどこかで思っていました。だけど男のそれは夢に終わりました」

「……止めろ」

「その父親に男は捕まり。暗い闇の底に連れて行かれるはずでした。だけど男は命からがら逃げ出して捕まえた復讐としてその家族を壊しました」

「止めろってのが聞こえないのか?」

「けれど男は少女を殺す前に手を止めました。それは何故かというとその子の姉が身を挺して彼女を守ろうとしたからです。男は考えました。この二人は美しく成長させ最後に――」

「止めろ!!」

 俺は聞くに耐えず、大声で叫ぶ。だが、氷見は俺のその表情を見てニヤニヤと悪魔のような笑みを浮かべる。

「だいたい察しがついているみたいだね。僕の見立て通り二人は美しい物に成長した。織神悠河は僕のことを殺そうと探してるらしいけど彼女は違う。恋人を作り今も楽しく探偵ごっこをしている」

「探偵ごっごじゃねぇよ。俺たちは――」

「実際に事件を解決してきた。そう言いたいんだろ?」

「あぁそうだ。現にこの前だって、解決してきたところだ」

「黒崎加奈子の事件だろ? 最近だと崎野知代にあの自殺事件。全部知ってるさ。だって僕が全部仕向けたんだよ。あと少しで僕の夢は完遂する。キミを含めた織神響子の全てを壊す」

「お前……!」

「さて、キミとゲームをしよう。これを見たまえ」

 氷見はおもむろにテレビの電源を入れる。するとニュースが速報を流れていた。

「!!」

 それ自体には何も驚きが無かったが、その内容に驚いた。

「殺人犯が逃亡しています。犯人は日本刀のような物で人を切り裂き、そのまま逃亡したと思われます。この桐之座町に潜伏している可能性があります。どうか皆さま、夜中の外出は避けてください」

 テレビを消し、コーヒーを飲む。

「これはキミだ。キミの使っている日本刀に類似した刀を現場に残して指紋が出るように細工した。もう少しでキミは全国指名手配されるだろう。そこでだ。クイズを五問出題する。それが解けたらこの事件を無かったことにしよう。何もかもだ。僕は約束は破らない」

 外道の作戦により、俺はこの条件を飲み込むしかない。俺は黙って頷いた。

「よし。それじゃ今からスタートだ」

 そう言うと、俺の意識は再び遠くなる。何かを嗅がされてるのか? 把握することなく視界はブラックアウトした。


「……くそ」

 目を覚ましたが、そこには氷見蓮九郎の姿はなかった。あるのは俺のではない携帯電話だけ。縛られていた手が自由になっており、俺は立ち上がる。

 それを見計らっていたように携帯電話が鳴る。俺は怪しみながら着信に出る。

「もしもし……」

「やぁ起きたかい。この携帯には僕の携帯番号とメールアドレスが入っている。キミからかけても僕が出ることはない。出題はメールで送る。織神響子に電話をすることを許す。だけどヒントをもらうのはダメだ。恋人同士だ。一日でも連絡をかかして別れでもしたら大変だろ? 特にキミは。それじゃスタート。あっ! 道中に気を付けろよ。警察とそれより厄介な奴がいるから」

 通話が切れる。

 舌打ちをしながら、俺は携帯をポケットにしまい、ドアを開ける。

 これから始まる、氷見と俺の直接対決。あいつがどう出るか分からない。一刻でも早くこの馬鹿げたゲームを終わらせるんだ。

氷見蓮九郎の目的とは?

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