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夜の月に笑われて  作者: 宮城まこと
螺旋の恋人
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第五話 捜査⑤

「犯人が自首した!? 一体どこどいつだ!!」

 南方さんの大声に、驚きながらもあわあわしながら携帯電話を落としそうになりながらも深呼吸をし、今聞いた内容を事細かに話す。

「えっとですね、犯人だと名乗っているのは松尾陽太郎、二十歳。大学生で今は木葉大学に在学していました。俺があいつを刺した殺したの一点張りで。今詰問していますが、あまり多くを語りたがりません。確かに、鑑識の調査で包丁には彼の指紋がありました。ほぼ確定だと思います」

 まさか……どうして?

 松尾陽太郎。俺たちが今日、訪れる予定だった人だ。もっと早く行動してさえいれば、もしかしたらこの事件は防げた可能性がある。

 嫌な予感が当たってしまった。

「おい、葛木。俺たちも今すぐ戻るぞ。パトカーに乗れ!」

「え!? あっ、はい! それではみなさん。後はよろしくお願いします!」

 敬礼をして南方さんに引っ張られるようにして、彼女たちはこの場を後にした。

「なぁ、響子さん。この事件……なんだが変な感じだ」

 頬を伝う奇妙な感覚。誰かに触れられているみたいだ。

「そうね、一枚岩って訳じゃなさそうだわ。ただ、一つだけ言えることは今はここを探すことに専念すること。それが真実に辿り着く一番の近道よ」

「その通りだ。響子さんって時々かっこいい事言うよな。そういうとこ好きだぜ」

「馬鹿。そういう事を言うときは場所を選びなさい。ちょっと恥ずかしいじゃない。でも……」

「でも……?」

「何でもない。さっさと殺された理由を探るわよ!」

 顔を赤くして、響子さんは可愛らしく俺に命令する。それに付き従うのは悪い気がしない。そろそろ毒されてきたかな。

 自嘲し、その理由を探す。

 闇金が殺される理由? まぁ九割は予想はついている。恐らく金関係だろう。この部分については坂牧さんと同じだ。

 どちらも金が関係しているのは間違いないはず。

 響子さんの協力なしに憶測で決めてしまうのはいかんせん不安だが、いい加減捜査の方向を決めない限り進展は望めないな。

 だとしたら犯人は誰だ? どういう関係で社長を刺殺した? そうだ。名簿だ。それがあれば殺した理由が分かるかも知れない。

「なぁ響子さん。名簿を――」

「これでしょ? 今見てるところよ。助手くんもこっちに来て」

 流石です響子さん。

 まぁ俺が気が付くくらいだし、響子さんが気が付いてもおかしくないよな。

「にしても、この人数から金を……」

「そうなるわね。これを見て頂戴。なんて書いてある?」

「小町……さん?」

 そこには小町洋子さんの両親と思われる名前が男女で二つ書かれてある。

「偶然じゃないのか?」

「偶然だと思う? 詳細に二人とも自殺って書いてあるわ。これは間違いなく小町洋子さんの両親よ。哀しい事ね、両親も自分も自殺で死ぬなんて」

 彼女は哀しい目のままで、ページを捲り、同じようにまたある場所で視線が止まる。

「なるほど、彼女の両親も泥沼にはまってしまっていたのね。見て、崎野知代さんの両親の名前も乗ってるわ。ここ二、三日前だけど。幸い、お金は取られなかったようね。保証人になってたみたいだから」

「不幸中の幸いってやつか。人が死んで誰かが救われるか……皮肉な話だぜ」

「笑えない話だわ。私も似たようなものだから」

「似てない。全然な。俺が必ず響子さんを助けるよ。約束する」

 クスクスと彼女は微笑みながら名簿を閉じ、俺にこう言った。

「私もね、助手くんのそういうところ好きよ」

 自分でも分かるぐらい顔を赤くし、俺は彼女の姿をずっと見ていたかったが、恥ずかしさから視線を逸らす。

「今日のところはここまでにしましょう。分かることはこのぐらいだと思うし、お腹も減ったし。夜風も寒いわ」

「そうするか」

 

 俺たちは事件現場を後にし、事務所に戻るため暗い夜道を二人でどこか、寄り添うようにして歩いていた。

「今日、何食べる?」

「そうねー。ねぇ今日久し振りにどこか食べに行きたいわ」

「どこって、あんまり金が無いんだぞ。良心的な場所にしてくれよ」

 俺は気になっていた。なんでだろう、どうしてか響子さんが俺を台所から離れさせようとしているような気がする。

 あくまで予想だが。

「ここにしましょ!」

「んん?」

 ここって……。

「お帰りさないませ、ご主人様!!」

 懐かしの場所、桐之座町唯一のメイド喫茶シャノン。俺が八色さんとの修行で探偵家業を休止していた響子さんが、かつてバイトしていた場所だ。

 あの事件が終わって人気を取り戻しつつあると、小耳に挟んでいたが店の中を見る限り、確かに人気は戻ってきている。

「おー! お二人さんはデートかな?」

 この何事もオブラートに包まない物言い、三部だ。

「そんなところよ。私たちにオムライス二つ頂戴。夕食はここで済ませるの」

「りょーかい」

 そんなことよりと三部が言って――

「なぁ香澄ぃ、デートなのにメイド喫茶に立ち寄るってのはいかがなもんかな? さすがのあたしでもセンスを疑うよ」

「馬鹿言うな。これは響子さんがここに来たいって言ったから」

「あーあ、二人そろって何かと言えば響子さん、助手くんって。本当にお似合いだよお二人さん」

「冗談は良いからさっさと注文を厨房に言いなさい」 

 彼女は三部の狭い額をでこピンすると、三部は大人しく厨房に向かった。それを確認して俺たちは近くの席に座る。 

 が、何やら視線がすごい。この店の全ての視線が俺たちに向けられているようだ。

 そしてメイドさんたちからひそひそと話し声が聞こえる。

「ねぇ、あれっておりにゃんさんだよね」「あの伝説のおりにゃんさんだよ。あの人は彼氏さんかな?」

「あー、私も混ぜてよー」「知ってた? ここで働いてたった三日で売り上げトップになったんだよ」

 徐々に増えていき、会話をする声が大きくなっていく。

「なぁ、響子さんって伝説の人物なのか?」

「なんだが話がすごい膨らんでるわね。売り上げトップに並んだのは本当は五日だけどね」

「それもすげぇよ」

 俺たちは視線感じながらも、オムライスを平らげ、何故かメイドさん全員に見送られながら短い愛だったが、楽しんだシャノンを後にした。

 俺たちを街灯は照らす。それはこの事件の謎を明らかにするように煌々と光り輝いていた。

さて、謎が呼ぶ謎。

これをどうやって解決するのか!

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