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夜の月に笑われて  作者: 宮城まこと
螺旋の恋人
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第四話 捜査④

「もしもし――」

 響子さんが、電話に出ると日が完全に沈んでいて街灯がちらほらと光り出す。

「あぁ、南方さん。ええ、どうしたの? 私たちは今崎野さんの事情聴取を終わった所よ。そう、今から行くべきか迷っていたのだけれども、そうよ。松尾さんの家に……え?」

 彼女の顔色が変わった。

 見ている俺の方も緊張が走る。唾を飲み込み、響子さんの反応を一つも見逃さないように眉間にしわを寄せ、じっと見つめていた。

 嫌な予感がする。じっとりとした、まるで体の中が何かに這いずられているような感覚に襲われる。自身が知らぬ間に冷や汗をかいていた。

「ええ、そう。残念ね……。凍死体が発見されたんでしょ。今度は何処? 桐之座町の金融会社? 今から来れるかって、行くしかないわよ。今から向かうわ。それじゃ」

 電話を切り、ポケットにしまうと質問する暇もなく彼女は俺の手を強く引く。

「歩きながら説明するわ。ついさっき、桐之座町の金融会社で死体が発見されたの。凍死体でこれまでと違うのは胸に刺し傷があること。まずは現場に向かうわよ!!」

「え、てかどうやって?」

「勿論、タクシーでね。急ぐわよ」

 俺は急いで財布の中身を確認した。取り敢えず一万円入っている。だけどこれは響子さんにあげるバレンタインデーのチョコ代と諸々に消えるはずだったのに。

 ええい、背に腹は代えられない。

 そしてタクシーを停め、乗り込み桐之座町に向かう。

 

 二十分して、現場に到着。そこには夕食時だというのにも関わらず野次馬は大勢いた。その中を掻き分けて、現場の中に足を踏み入れる。

 そこには忙しそうな南方さんと、その指揮であたふたとしながら動いているしずくさんがいた。

「来たわよ南方さん」

 多少汗をかきながらこちらの存在に気が付く。

「おお! お前ら来たか。細かい事情を説明をする。こっち来い」

 手で招くと、説明を始める。

「発見されたのは先ほど。仕事仲間が来たことによって発覚したそうだ。胸には刺し傷、今までの凍死事件とは似ているようで違う。一人、生き残りがいた。ひどい凍傷だがな。今は喋れる状態じゃない。ここの金融会社は所謂、闇金ってやつでな。胸の刺し傷は大体そういう系のいざこざって可能性が納得がいくんだが、何故凍らせた? 子分の奴がいたって気が付いてやがったのか?」

「さぁね。今からそれを調べるんでしょ」

 事件現場に足を踏み入れると、寒さこそはあったものの今はそれほど寒くない。

「ここで死んだのね。ハァ、寒い。犯人は心臓を一刺ししてから凍らせた? 憑神の能力はこの凍らせる能力でよさそうね。今回の事件は同一人物だとして、どうして一件目は能力だけで殺したのかしら?」

「さぁな。たまたま来た時に殺されたとか? 一件目は自分で殺して、二件目は死んだ所に犯人が現れた。と俺は考えるぜ?」

「ううん……なんとなく違うような。だって、殺されたんだったらそのままでも良いわけじゃない。そのまま立ち去ったら何か怪しいの? 生憎ここはこんな事件が無い限り人は集まりにくい。見られる心配なんて無かったわ」

 これではますます事件が複雑化してきている。このままじゃ犯人像が全く想像できない。一体どうするべきか。

「可能性の話だけど、犯人は二人以上いるんじゃないのかしら」

「二人以上?」

「ええ、一件目と二件目では犯人が違う。まだ可能性の話だけどね」

「でも、二人以上だったとしてもでもそいつら全員に同じ憑神が憑いてたことになるぜ? それって可能なのかよ」

「ゼロではない。とだけね分かることは。貴方、鳶さんの村を覚えている?」

「あぁ、今でも鮮明に覚えてるよ」

 忘れることはない。あの悲惨な事件のことは。

「あの村はある意味、村全員があの狐に憑かれていたと言っても過言ではないの。同じ目的があればその憑神に感化される。昔、その事について調べたことがあったの。そう書いてあったわ」

 響子さんの語る可能性は決してゼロではない。ならば、今回の事件は憑神の扱いに慣れていないもう一人の犯人が胸を刺し、その後で能力を何かしらのきっかけで使った。

 そう考えるのが正しいだろうな。

「分からないわね。一度、出来事を整理したほうが良いかもしれないわ」

「そうだな。一回戻るか?」

 響子さんが答えようとした時、現場にしずくさんの大声が鳴り響く。

「こ、今回の犯人が自首してきました!!」

 この一言で事件は一転し、制御できないほどに加速してしまった。

 まだ部屋に残っていた冷気が俺と響子さんをを包み込む。それはまるでこの事件を凍結させようとしているように感じた。

急変する事件。どうなってしまうのか!

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