第八章完結 終わりの始まり
太陽の光が、積もった雪に反射し、キラキラと綺麗に反射している道を歩き抜け、俺は例の如く事務所に向かっていた。
あの自殺事件こそは解決したものの、俺たちはまだ何かを忘れている気がする。
例えば、工藤さんは誰かに唆されて犯行をしたと響子さんが言っていたが、その事が妙に心の中に引っかかっている。
一体誰に唆されて自壊人形を使ったんだ?
この事件の顛末も含め、そもそもおかしいことだらけだ。事件の捜査中も誰かに見られているような感覚があったし、大げさだが誰かの手の上で踊らされているようだった。
気が付けば、事務所の扉の前に立っていて、そのまま開ける。
「あら助手くん、今日は早いわね」
いつもの出勤時間は九時。今日はそれよりも一時間早い、八時に来ていた。
その理由を上げるとすればやはり、あの事件のことだった。
「なぁ、響子さん。俺、実は聞きたいことがあるんだ」
「珍しいわね。変な物でも食べた?」
きょとんとしながら彼女は首を傾げながら、俺に不思議そうに尋ねる。
「そう茶化さないでくれよ。真面目な話なんだ」
「そうだったの。ごめんなさいね。じゃあ、そこに立ってないで座ったら?」
「あぁそうするよ。多分長くなるから、コーヒー作るよ」
コーヒーを作り、響子さんの前に差し出して話し始める。
「今回の事件のおかしいところ?」
響子さんに俺の思うこの事件のおかしいところを全て話す。そして、俺も彼女の意見がどうしても聞きたかった。
「誰かに仕組まれてるっていう感じがするんだよ。上手く言えないけど……なんて言うか、見られてるって感じかな」
「それは私も感じてたわ。ねぇ、工藤さんの言葉覚えてる?」
「言葉?」
思い当たるふしが無い。
「分からない? まぁ無理もないわね。たった一言だったもの。よく聞いて」
唾を飲み込み、彼女の話に耳を傾ける。
「あの人は、自壊人形を使って殺人することを仕事って言ったのよ? 普通は、犯行とか色々言い方があるのにわざわざ仕事っていうの言葉を使うのはおかしいわ」
「確かに。じゃあ、俺の考える通りこの事件にはまだ何かがあるってのか?」
「その可能性は高いわ。この事件は何も解決していない。裏で手を引いている何者かを捕まえない限りね」
「裏で手を引いている誰かか……」
人を人殺しに変えてしまう恐ろしい人間に違いない。だとすれば、これからもこういった事件が増えていく可能性がある。
「この話は一旦保留にしましょ。まだ確定的な証拠がない限り、その誰かを追うのは危険過ぎるわ。ここで仕事をこなしていくうちにきっとそいつともきっと対決することになるわ」
俺はため息をつき、頷く。
「朝ごはんにしましょう。助手くん、作ってね」
「そうだな。じゃあ今から作るよ。ちょっとゆっくりしててくれ」
「はーい」
響子さんは返事をして、小説を読み始めた。
そして朝食を作りはじめ、事務所内は香ばしい匂いで包まれる。
この時は思っても見なかった、この事件の終わりは新たな事件の始まりに過ぎなかった――
次章もお楽しみに!




