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夜の月に笑われて  作者: 宮城まこと
自壊人形
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第四話 捜査④

 雲行きが怪しくなってきた。これは雨か雪が降りそうだ。

 そんな事件とは関係のないことを考えていると、響子さんに怒られそうだから口には出さないが、今日は傘を持ってきていないから雨なんて降られたら堪ったもんじゃない。

「助手くん、また余計なこと考えてたでしょ」

 どうやらバレていたらしい。

「もう、南方さんに連絡してくれた?」

「ん? あぁもちろん。ちゃんとしたよ。マンションの管理人に話を通してくれたみたいだ」

 目の前にあるのは、峰尾さんが住んでいた曇天に届きそうな高層マンション。見上げているこっちの首が痛くなりそうだ。

 防犯は完璧。マンションの入り口には管理人室。数多の防犯カメラ。住居者カードが無ければ自室には入ることは出来ない。

 二重になっている自動ドア。そこにも防犯カメラがある。宅配便などは必ず管理人を通して、管理人が住居者に電話をして確認するというなんとも手間がかかる。

 その分、防犯は先ほども言ったように完璧なのだが。

「この様子じゃ、殺人犯が入る隙一つありはしないわね」

「じゃあもし、入れるとしたら知人とか、宅配業者に扮した奴に限られるな」

「その通り、それがどうなのかを峰尾さんの家を見て判断するのよ」

 俺たちはマンションに入り、管理人室にノックをする。すると初老の男性が出てきて明らかに面倒くさそうな顔をしていた。

「貴方のここの管理人の野々村さんですね?」

「ええ、そうですが……失礼ですが貴方たちは?」

「申し遅れました。私の名前は織神響子、それにこちらが香澄准兵くんです。先ほどこちらに南方という刑事から連絡があったと思いますが」

 すると彼は思い出したように手を、ポンっと叩きあぁと言いながら何度か頷く。

「となるとお二人は、警察の関係者で?」

「まぁ、とどのつまりそうなります」

「やっぱり、ここで起きた自殺事件を調べに? あぁすいません。捜査のことを訊いてしまって……」

 申し訳なさそうに頭を下げて、俺たちの顔色を窺っている。

「はい。そうです。私たちはそのことについて調べるように、南方さんに言いつけられまして」

「ハハハハ、そうでしたか」

「それと関係していることですが、峰尾さんを訪ねて来た宅配業者か知人はいませんでしたか?」

 不思議そうな顔をして響子さんに尋ねる。

「どうしてそんなことを? この前は自殺で決まりだと言っていましたのに。あ! 勘違いしないでくださいね。捜査情報は全く知りませんよ。たまたまここから出ていく時に警察官の二人組とすれ違って、会話しているのを聞いてしまって」

 慌てて訂正して、手を横に振っている。

「そのことについては、追及しません。あれだけ悲惨な死に方なので、殺人の可能性も否めませんので。一応防犯カメラの映像を見せてもらっても?」

「分かりました。ちょっと待っててください」

 そう言って彼は俺たちを連れて自室に入る。

「繋がりそうだな」

 俺は安堵しながら、独り言のように呟いた。

「これで犯人がどういう人なのか分かるわ」

 彼女が言い終わると、野々村さんがパソコンの画面に防犯カメラの映像を映し出した。

「すいません。探すのに時間がかかってしまいまして。ここです、見てください」

 そう言われ、俺と響子さんはパソコンに顔を近づける。

 そこには女性が、なにやら大きな手荷物を持って来ている。一体その袋の中には何が入っているのだろう?

「この人が、最後ですね。確か、名前は工藤さんだったかな? 二日連続で来ていたからよく覚えています。それとこれは峰尾さんの住居者カードです。返す時はまた寄ってください」

「感謝します。行くわよ、助手くん」

 

 八階。峰尾さんの住居者カードを使い、俺たちは部屋に入る。

 佐藤さんの家と同様、暴れた跡がありあらゆる物がいるべき場所にいない。

「酷いな。ここで死んだんだ」

「傷ついた跡があるわ。必死に抵抗したのね」

 窓には無数の切り傷。そして色は赤い。

「さて、何かないか探しましょ」

 俺たちは部屋の中を探し回るが、怪しい物は発見されなかった。工藤さんが持ってきたという大きな荷物は見当たらなかった。

「一体何を持ってきたんだ?」

「持ってきても怪しまれない物よね……」

 俺の視線はテレビの近くに設置してある家庭用ゲーム機に目が行った。丁度この大きさの袋だったはずだ。

 だとしたら、工藤さんはどうしてこんなものを運んできた? 我ながらふざけた推理に内心苦笑しながら、やり残したであろうゲームのカセットを見つける。

「でも、きっと何かを運んできたはずよね。このままだと埒が明かない。どうしましょうか? やっぱり工藤さんの家に直接行くしか……」

「って言ってもよ。まだ明白な証拠も見つかってないんだし、本当にただの自殺事件になっちまう。そうなると死んだ峰尾さんと佐藤さんは報われないよ」

「それは助手くんに言われなくても分かっているわよ」

 その時、響子さんの携帯電話に着信が来た。

「もしもし、ええ。分かった。私たちもすぐに事務所に戻るわ」

 電話を切り、ポケットにしまう。

「南方さんか?」

「ええ、現場の写真を貸してもらえたって。一旦戻りましょ」

「そうだな」

 俺は、一か所だけ調べていない場所に気が付く。

「そう言えば、寝室調べてなかったな。ちょっと待っててくれるか? すぐに調べてくるから」

 寝室に行き、周りを見渡す。だが、案の定そこには寝る前に何かをする机に棚、ベッド以外には何もなかった。

 その机を不意に見てみると、そこには写真が飾られてある。

「これ……。響子さん、来てくれ!」

「何よ、どうしたって言うのよ?」

「この写真。これって峰尾さんと佐藤さん、それに工藤さんまでいる」

 俺が指差した写真は、何かの集まりで居酒屋らしき場所で酒を飲んでいた時に撮った写真だ。

 三人は楽しそうに肩を寄せ合い、それぞれ違うポーズを決めてニッコリと笑っている。そして違う写真には三人目の自殺者、加賀さんが写っていた。

「みんな繋がっていたのね。工藤さんが犯人もしくは、四人目の被害者になる可能性があるわ。お手柄よ助手くんって褒めたいけどその時間もなさそうね。急いで戻るわよ」

「あぁ!」

 俺と響子さんは急いでマンションを後にし、雪がひらひらと舞い降りる中、一心不乱に事務所に向かって走って行った。

次回をお楽しみに!

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