表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
夜の月に笑われて  作者: 宮城まこと
自壊人形
68/116

第二話 捜査②

「それじゃ、今知っているすべての情報を教えてくれるかしら?」

 響子さんはコーヒーを一口、口に運び南方さんから捜査情報を聞き取る。

「まずは一件目、佐藤という女性の自宅から死体が見つかったところから始まった」

 膝の上に腕を乗せて、手を組み俯きながら話し出す。

「俺と葛木は、その事件の後始末に回った。最初はただの自殺だと思ってた。自殺に使われたという包丁からは佐藤さん以外の指紋は見つからなかった。

 そしてその三日後、俺たちの前に新たに自殺死体が見つかり、その捜査についた。自殺死体ならこの日本ならごまんとある。だが、今回も同じ死に方だった。先ほども話した通り、首を包丁で掻き切って死んでいる」

「たまたまってことは、訊くだけ無駄ね。愚問だったわ」

「最初は俺もそう思った。だがな、今日起きた三件目をこの目で見て、これは偶然じゃないって感じたさ」

「新たな殺人方法ができたと言うの?」

 響子さんが聞き返す。

 彼女が質問した通り、新しい殺し方ができたの言うのだろうか? 今はネット社会、自殺するような脅迫ネタさえ掴んでしまえば、と思ったが、そんなに人を簡単に殺せるものだろうか。

 この仕事を手伝ってきて、人の死体は少なかれ見てきた。だが、その犯行の全てと言っていいほど直接的に手を下していた。

 今回は間接的に犯行を? いや、分からない。もし犯人が自殺者全員の親近者だとしたら脅すのも簡単だろう。

 ダメだ、全然推理できない。

「どうだろうな。写真見るか?」

 南方さんは胸ポケットから、三枚の写真を取り出し、机の上に並べ見せてくれた。

「三人とも本当に、同じ死に方なのね」

 三人とも引き裂いている場所はさすがに違うが、片手に包丁を持って首を引き裂いて周りを血の池地獄のように赤く染めている。

 壁に寄りかかり誰かに縋ることもなく、ただおぼろげな瞳をしたまま絶命した。だが、気になることがある。

 一件目の佐藤さんの左手がおかしい。自分の手を何かで引っ掻いたような痕が辛うじて見える。これは一体?

「なぁ響子さん、佐藤さんの左手おかしくないか? なんて言うか自傷行為をしたみたいだ」

「やっぱり、貴方もそこに目が行ったのね。実は私もそこが気になっていたのよ。だってこの事件は自殺だって言っているのに何故がもがいた跡がある」

 そう――まるで死ぬことを拒否しているかのようで。

 それだと南方さんが言っていることと辻褄が合わない。自殺とは己で命を望んで立つこと。だと俺は認識している。

 世間一般的には俺の解釈は間違っていない。

「やはり、お前たちもそう思ったか。俺もそれを見て事件性を考えてみたが鑑識結果を見て唖然としたよ」

 南方さんはため息を吐きながら、俺たちに訴えていた。

「自殺として断定したんですか?」

「あぁ、上はそう判断しているが俺はそれでは納得いかん。実際に三人の人が同じ死に方をしている。これは偶然なんかじゃない!」

 手を握り、何も出来ない自分に静かに腹を立てていた南方さんはコーヒーを飲んで、苛立つ気分を落ち着かせていた。

「でも、上がそう言っている分自分は動けないから私たち依頼したと。そういうことね」

「そうだ。俺もやれることはする。協力も惜しまない。俺は一度帰ってこの事件の資料を整理する、任せるぞ」

「ええ、任せて頂戴」


 南方さんは、コーヒーを飲み干しパトカーに乗って警察署に戻っていった。

 そして俺たちはこの事件の解決するための糸口を探す。

「さて、どうしたものかしら」

「さすがの響子さんも、お手上げか?」

「そう見える?」

「いや、まだまだこれからだろ。どうする? まずはどこから調べる? やっぱり一人目の佐藤さんの家から調べるか?」

「そうね、まずは現場を見に行きましょ」

 そうと決まれば俺たちの行動は早かった。絶対に外に出たがらない彼女は手早く準備を済まし、佐藤さんの家に向かった。

 外は凍えるような寒さだった。心まで凍ってしまいそうになる。もし、心が凍ってしまったら、朽ちることもなく人の想いまでも永遠に溶けることもなく、残ってしまうのだろうか。

 隣にいる響子さんみたいに。

 彼女はずっと復讐するために生きていた。氷見蓮九郎、その名を聞くたびにどういう凶悪犯なのだろうかゆめゆめ考えてしまう。

 彼女から家族を奪い、今もそうしているのだと想像するだけで怒りが沸々と沸き上がっている。止めどなく、流れている怒りの血はいつか止まるのだろうか。

 ただ俺が願えることは一つ、響子さんを早く楽にしてやること。

「寒いわね。……? どうしたの?」

「え……? いや、どうもしてないよ。ただ寒いなって」

「無理しちゃダメよ。貴方私の料理を作る役目があるんだから」

「それって、俺ただの召使いじゃん!」

「そうよ。貴方は私の助手で、身の世話をしてくれる大事な従順なる召使いよ!」

 フフフと口を手で隠して、いたずらな笑みを浮かべる。

「それとも犬が良いかしら? ほらワンって言ってみなさい」

「ばーか、言うかよワンなんて」

「あっ、今言った」

「揚げ足を取るな。全く、響子さんの犬なんてまっぴらごめんだぜ。世話もろくに出来なそうだしな」

「あら、試してみる? そうね首輪とリードを買って散歩してあげましょうか? ねぇ犬くん」

「あぁうるさいうるさい。俺が悪かったよ。もう好きに呼んでくれ!」

「フフ、やっぱり貴方はからかいがいがあるわ。さぁもう少しで着くわよ助手くん」

 俺たちの後に続く足跡が、風によって舞い散った雪に消された――

響子さんと助手くんはどうやって解決するのでしょうか?

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ